プロローグ
評価が悪くても完結させる気でいます。
ちなみに処女作です。
「――くそっ!」
全身から悲鳴が上がる。
怒りから地面に叩きつけた拳からは力強い音ではなく、弱い音が鳴る。
体力は、もう限界だった。
どうして俺はこんなにも弱いのか……。
約束一つすら守れない弱さ。必ず守る、なんて言わなければよかったのか。
何がいけなかった。
約束をしなければ良かったのか。あそこで目を離してしまったのがいけなかったのか。あの場所で彼女に会わなければ良かったのか。もっと前から、生まれた時から死ぬほど努力すれば良かったのか。
自分の不甲斐なさが、とても情けない。
カシャリ――。
立ち上がることもできない俺の前で、空虚な鎧の騎士は足を止めた。
顔をあげる力すら残っていない。だが、風を切る音から剣を振り上げられているのはわかった。
「……はっ」
なぜだが笑みがこぼれた。
――あぁ、そうか。
諦めたくないという思いはある。しかし、同時に今ここで死ぬということは、自分が今認めた弱さが真実だったということにもなる。
空虚な鎧の騎士はなにも語らない。語るわけがない。
ぽろり、と何かが頬を伝った。
ごめん。
そう思うと同時に剣を振り落とされた。
……
……
……?
いつまで経っても死の痛みというものがやってこない。
もしや、これが死後の世界か、なんて思って見たが、それにしては全身の痛みがまだ生を実感させる。
いったいなにが、と思って顔を上げると、目を見開いた。
「……ぃ、テメェ。今諦めやがったな?」
俺の前にいつの間にか立っていた大柄な男は、空虚な鎧の騎士に背を向け、肩から血を流していた。
這いつくばる俺の代わりに剣を受けた男は、俺に苦悶の表情よりも憤怒の表情を向けていた。
「ソルド……さん?」
名を呼ばれたソルドは、怒りのままに俺の胸ぐらを掴み上げると、無理矢理でもと俺を立ち上がらせた。
「なに勝手に諦めてんだ、テメェ?」
「……っ!」
ソルドの後ろでまた空虚な鎧の騎士が振りかぶった。
しかし、その剣がソルドに届く前に小さな爆発が空虚な鎧の騎士を吹き飛ばした。
「ヒール!!」
その声と同時にソルドの傷が、そして自分の傷が癒えていく。
後ろをゆっくりと振り返ると、そこには武装した人が優に50を越えていた。
「ありがとう……ございます?」
「っ!」
誰に言えばいいかわからずとも、とりあえず感謝を述べた俺をソルドは殴り飛ばした。
「ソルドさん!?」
彼らの誰かが驚いた声を発する中、ソルドは倒れた俺の胸ぐらを掴み治すと、今度は頭突きを浴びせてきた。
「言ったはずだぞ。冒険者っつうのは、自由の象徴だってよ」
ソルドは今にも俺を殺しそうな目をしていた。
「そんな俺達が諦めて、他に誰が自由に生きられる? 誰が誰に希望を与えるってんだ!?」
その言葉にハッとする。
しかし、俺は否定するように首を横に振った。
「だったら、俺じゃなくてソルドさんが行ってくださいよ。弱い俺なんかより、強いソルドさん達が行ってくれた方が彼女だって――」
「攫われたのはお前の仲間だろうがっ! お前が助けようとしねぇでどうすんだ!?」
「俺じゃ助けられないんですよ!」
俺は弱い。仮にここを突破したとして、その奥で待つ者に俺は果たして勝てるだろうか。
であれば、ここはソルド達にすべて任した方がいいに決まっている。
「バカ野郎が。俺達じゃあの娘を助けらんねぇよ」
「……え?」
ソルドは俺を地面に下ろすと、ゆっくりと大剣を構えて空虚な鎧の騎士へと向けた。
それに呼応するように、後ろの彼らも俺を追い越して、武器を構えた。
「そういうことだ。さっさと行け」
「ここにいても邪魔なのよねぇ」
「俺、この戦いが終わったらあの人に告白するんだ……」
「バカ野郎! それは死亡フラグだ!」
「テメェら! 少しくらいビシッとしねぇか!」
今が大事なときだというのに、冒険者達は笑いあう。
どうして彼らは笑っていられるのだろうか。そう思ったとき、彼女の笑顔が頭をよぎった。
彼女が笑みを浮かべたとき。彼女が初めて笑ったときの顔が蘇る。
「あぁ、そうだった」
思い出した。俺は彼女を助けたいんじゃない。俺は彼女の笑った顔をもう一度見たいんだ。
だから、助けるんだ。他の誰でもない。俺が。彼女を。
「希望を胸に。自由を振りかざせ」
かつて、言われた魔法の言葉。
弱くてもいい。強くなくても、誰かを笑顔にすることはできる。
それが――
「冒険者、ですよね?」
もう一度立ち上がる。今度こそ、負けてたまるか。
「ソルドさん」
「あん?」
ソルドは振り返ると、静かに笑みを浮かべた。
「ここをお願いします」
返答を待たずに走り出す。今度こそ、誰にも追い抜かされまい、と。
疾る言葉に、冒険者達はたった一言。
「「「任せとけ!」」」
今度こそ、激闘が始まる。
2023/09/16 改稿




