-記憶の狭間で-
生まれた瞬間、莫大な情報が僕の頭をよぎった。
自分のこと、世界のこと、神のこと、それらは当たり前のこととして頭に刻まれる。
「半神か…」
漠然とわかってしまった、自分が人ならざるものになったことに。
自嘲を孕んだ声が自然と口から漏れる。だが耳に聞こえたのは幼い、少女でも少年でも通じるような声だ。
少しびっくりする。自分は少なくとも地球という世界で生まれて、普通の生活をして普通の人生を送って、普通に老衰で死んだ記憶がある。そう、老人だった。
だがしかし自分の声は幼く可愛い声で、自分の手はつるつるな幼い手だ。
何が、自分を半神に至らしめたのか。
自分は何者だったのだろう、この世界は――。
「疑問にお答えしますN」
少し大人びた少女の声が耳に届いた。
背後には天使と呼ぶに差し支えない純白の羽を宿した少女が立っていた。
「君はいつの間に?」
「疑問にお答えしますN」
Nというのは僕の名前なのだろうか。少女は壊れたかのように同じ言葉を繰り返す。
「わかった、疑問を言おう、僕は何者だ?」
問いかけても意味はないように思える質問、しかし僕には彼女がその質問に答えてくれる確信があった。
「前提としての話から始めます。まず、Nの名前はありません。Nという名前でもありませんし、強いて言うならNoNameのNです。これは不幸の神があなたを呪った結果であります。
そして次にこの世界はお気づきになっているかもしれませんが地球ではありません。第68宇宙7惑星のトゥレットです。この世界には魔法が存在しますがNは魔法を使うことはできません。
そしてNという存在についてですがNはイレギュラーです。Luckは幸運の神を凌ぐほどです。その他に関しても伸び代は全能神と呼ばれる神よりも高く、全能神を始め数多の神々はNの存在を消そうと必死です。Nは