RAF ロイヤルチーム
会話・・、もう慣れていた。
あの面影は一切ない私は立派な軍人にはなったんだろうか、と少しだけ思っていたがまだまだ半人前である・・。
階級は中尉に上がり、そろそろ小隊長になっても良い頃なんだけどまだロッテの列機員として飛ぶことになっていた。
1942年11月のことである。
基地内を一変させ、慌しくさせる空襲警報が鳴り渡り待機していた予備隊を含む私が一斉に掩蔽豪に格納されていたいつでも発進できる状態の戦闘機に乗り込み、バンドや座席ベルトを着用し冷たい酸素マスクを口に付けキャノピーを閉じた。BF109-F4が滑走路を走り地上から浮き上がり、操縦桿を倒しながら上空2旋回ほどしたところで敵大編隊の方角へ機首を向けた。
太い白線を引っ張りながら飛行するB-17が翼下に確認できると、エレーナ中尉の列機が機体を落として急降下を開始。それに続き私も敵大編隊の中に突っ込んでいく。
もうあの時の恐怖は無くなり、もはや慣れたと言うだけあって赤い弾丸が線を描いて伸びる敵の弾幕にも私は何も感じなかった。
胴体が大きいB-17に収まり入った照準機に7.92mm機銃、20mm機関砲を一斉射。私と繋がった黄色い曳光弾が見え、敵の胴体に灰色の煙が一瞬ばかり吹き出したので、降下中、首を上げ視認するとエンジンが穴だらけなっていた。
「これなら落とせるぞ!」
『アンネ、後ろだ!』
エレーナ中尉の声に私は後ろを振り向き、操縦桿を切り替えし機体を急旋回し、外れた敵の赤い弾丸が雲の奥まで伸びていった。
間一髪!後方確認してないなんて私もまだまだだ!
私を狙う敵機はドッグファイトを挑むかのように後ろに食らい付いてくる。
ならばと思い、BF109F-4の機首を倒した。広がる青い海が視界にはいりジワジワと視界が黒くなり始めて、エンジンが今にもオーバーヒートするのではないかと言うくらいにフル回転。奴からの距離が離れる追撃をやめたところを見計らい私は操縦桿を思いっきり引っ張り、機体を上向けさせUターンする形で上昇する。
尻を向けた敵のスピットファイアにこの一撃とばかりに、炸裂する機関銃から撃たれる弾丸が発射された。だが引っ張る白い硝煙は機体から逸れて命中はない。
『アンネ、その敵機を頼むぞ。ロイヤルチームの最高のベテランだ』
『我々は爆撃機を落とすのに精一杯だ頼む』
「りょ、了解!」
どうしよう・・!ロイヤルチームのベテラン・・!
最高の腕前を持つというベテランの単語に私は冷や汗が出て、固唾を飲みベテラン機を睨む。
一人前のパイロットになるんだ・・!
1年経って未だにロッテ機なんて・・見っとも無いじゃないか!
操縦桿を振り、敵スピットファイアのベテラン機を追いかけ、スロットルを絞り唸るエンジンが異音を出しスピードが増し弾丸の様に真っ直ぐ飛行する敵機と自機はお互いにリレーをするかのように争う。
敵との距離は400mほどまで接近し20mm機関砲を発射すると機体が揺れるくらいに凄まじい火炎を機首から吐き、捩れた黄色い紐がスピットファイアの後部に吸い込まれていきうっすらと黒線を延ばし始めた。
あ!オイル漏れだな!
多分エンジンに被弾したかな?
と、ここであれほど空を走っていた敵機が宙に浮き、私はスロットルレバーを引っ張り減速し様子を見てみると、黒緑のプロペラが休憩するかのようにゆっくり回って機首が黒い液体に塗れて、綺麗な茶緑の迷彩が散ったオイルのせいで台無しになっている。パイロットの顔が良く見えるのでもう少し近づいてみると濃茶色の飛行服を着ていた女性が座席に座っていて、飛行服から薄茶の髪がはみ出ている。
なんて美しいんだろう・・。
とても可憐な姿に私は見とれる。
そのパイロットは私の顔をじっと眺めた後、黒く汚れたキャノピーを開く。一面青広いドーバー海峡に身を放り投げたのを目で追うと純白の花がぱっと開きゆっくりと風に流されていく。
胸を撫で下ろしほっとした後、私はB-17の追撃を再び開始しエンジンとスロットルを全開にし空を走った。
護衛機の少ないB-17が次々と編隊から崩れ真っ逆さまに落ちる機体やツバサの根っこが折れて錐揉みのように落ちていくのも見え、あっという間に戦闘機隊の餌食となると黒い粒が腹の下から落ちるとそのまま基地手前で旋回し始め逃げ腰になったのでもう一撃食らわせようと操縦桿を倒し機体を持ち上げた。
敵の下部後方からじわじわ近づき、図体の大きいB-17の自衛機銃から小さな黒雲が吹かれて太い赤線の曳光弾がすぐ真横を通る時、とっさに機体を傾けて避けヒヤヒヤした気持ちを持ちながら備え付けの発射機を握り、照準いっぱいに定め引き金を倒した。
爆竹の様に炸裂する7.92mm弾が撃ち続けにB-17の胴体から火花の様なのを散らした。命中弾である。そのままもっと近づくが操縦を誤ったせいで、B-17の真後ろに機体を持っていってしまい、敵のガンナーの顔がはっきり見えるくらいに近づいてしまい、危ない!と思ったとき20mm機関砲発射機を倒し炸裂する砲弾が敵銃座を砕かした。
ガンナーは跡形もない。そんな事は見てられず頑丈なB-17からようやく煙が吹き始め、数発の特殊な炸薬徹甲弾が吸い込まれるとエンジンが爆発、直径1mほどある穴を作り敵もこれに参ったのか機内から小さな人形が飛び降りた。
『B-17は引き返した。各機基地に帰還せよ』
エレーナ中尉の声に私は機体を斜めに、模型の様に小さくみえるJG22の基地へ戻ろうとした。
この時、残弾が7.92mmが312発、20mmが23発と無駄使いをしていたことに私はまだまだと実感した。