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遥かなる翼  作者: j
battle of britain
6/15

白雪の日

年表が飛び、展開が早くなります。ご了承ください。

 その日、爆撃終了後と共にJG22基地に帰還しハンガー前に立つと先に戻っていたアリーセ大尉が「何て姿だ!」と顔を変えて驚愕したので、私は思わず「どうしたのですか?」と言い返した。

「お前、血まみれだぞ!」

 え?っと思い私は体中触るとヌルりと手に液体が付着していた。真っ赤な鮮血が左肩、横腹から流れていて私は逆に驚いてしまった。敵弾に撃たれてもまったく気づかない自身に。

 そう言えば肩は撃たれてたんだ・・。

 お腹が何かが刺すように痛いのでジャケット上から触れると、小さなナイフの様に細長い金属品がめり込んでいたので恐る恐るそれを抜き棄て、駆けつけた衛生兵と一緒に私は病院に運ばれた。


 命に別状は無かったので簡単な治療と包帯で済ませると、女性の軍医は私の顔を見ながら、

「無理はしないように」と微笑んだ顔で言った。


 バトルオブブリテンは総統大本営により中止され、東部戦線に戦力が回るようになった。

 でも月日は流れるように我々が行ってきた爆撃は日に日に増していくようになってきた。

 

 私は成長した部分があった。人との会話が出来るようになったこと。今度は自分から話しかけていこう・・。


――1941年12月25日

 朝から白雪の降る日で手は冷たく痛く、非番の私達は兵舎の中ストーブを囲み体を暖めながら同年代の戦友達でトランプで遊ぶと「今日クリスマスだね」と小さな声で誰かが呟いた。その単語に何も無かったかのように静まり返る。

 そういえば今日クリスマスだ・・。

 せめてバームクーヘン、食べたいな・・。

 

 そう心の中で言うと頭の隅から家族の顔が蘇ってくる。あの頃静かな夜、美味しいもの食べたっけ・・。でも軍隊に入って24日当日の朝食はライ麦パンとシチューだけ、私の家なら少し追加されてたけど贅沢は言えないし、まだいいほうだと思った。何故なら凍えるように白い悪魔の襲い掛かる東部戦線は補給は途絶え、スープ一口さえ飲めないのだ。

「アンネ少尉はいるか!」

 エレーナ中尉の声に、冷たい風が入り込む扉に顔を向けると厚い防寒着に身を包んで「防寒着を着てすぐ外に来い」といわれたので急いでコートとふかふかの手袋を着用し外に飛び出しすと、兵舎前にジャーマングレイの色をしたKDFワーゲンがマフラーから煙を立たせながら私を待っていたので、扉を開けて後部座席に乗り込んだ。後に中尉も座ると自動車は緩やかに動き、寒さに凍えながらゲート前を警備する陸軍の兵士に見送られながら白い森林に囲まれながら走っていった。

 恐る恐る尋ねてみると「補給が遅れて食糧が少ししかないんだ。支給された軍資金で1ヶ月分の衣食住を買う」と言われて私は少し納得した。気候的な遅れなのでしょうがないなと私は思ったけど、今心配しているのは少し雪が強くなっていて帰れるのだろうかと片隅思ってしまった。

 空軍基地から少し離れたところまで行くと、軍用トラックが数台後から付いてくるので何かと思うと食糧の運搬に使うと付き添いの将官に教えられながら、お買い物を楽しむ子供心を抑え白い雪景色をじっと窓から眺めた。


 曇り空の下、クリスマスムードに包まれた市街地に降りると昼間の様に明るいイルミネーションが輝いていて陸軍兵士は勿論、ヒトラーユーゲント、空軍兵士達の皆がケーキを買い、プレゼントを買いにこの地に足を踏み入れていた。

「や、ずいぶん賑わってるなあ。街中軍人だらけだ」

 中尉の後を追うようにこの日初めての市街地を探索。

 特日に食べるバームクーヘン、ケーキにパイロット達に送る慰問品さまざま購入し、気休めながら露店で売っていた甘い菓子を食べ再び作業を再開した。

 街中から買い占めた野菜肉はすべてトラックに詰まれそろそろ帰るとき、午前中の雪が激しく降り始め急いで基地に戻ると、突如街中が空襲警報の音で包まれ、民間人、軍人らが一斉にその場から退避する。


「こんな吹雪の中で空襲だと!」

「いや誤報だ」

 誤報だといいんだけど・・。

 と思ったうちにすぐ何も無かったかのように警報がとまり『今のは誤報でした』と後の放送が入った。これに退避した人が呆れた顔でまた街の中に戻ってきた。

 そして当日の夜は敵の空襲もなく、美味しいケーキや料理を堪能しながらこの一日は終わった。


 26日の事、日が窓から差し込む早朝の頃、突然の警報に私は驚きベッドから飛び起きると他の隊員達も同じ様に飛行服やバンドを装着しながら一斉に兵舎から出ていき、滑走路の掩蔽豪に隠された戦闘機向かって走っていく。

 朝食もとらないこの日、何だかとても嫌な気分であり私はポケットに忍ばせたビスケットを食べながら彼ら達の後に続いていく。 

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