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遥かなる翼  作者: j
battle of britain
4/15

エレーナ

 10機の異様な撃墜に夢なのか、現実なのか分からなかった日であった。アリーセ大尉は祝福してくれたけど他の隊員達からは「それくらいできるさ」と余裕あった言葉を貰ったけど、実際はそうでもなかった。

 私のこの隊に溶け込むことが出来たけどやっぱり対人関係は避けてしまう。アリーセ大尉だけに打ち明けたような感じがして自分でも「なんだかなぁ」と思ってしまう日々。本当は皆と一緒にお話したいなあって。もしかしたら私と友達になる人が居るかもしれない。

 この隊の大抵の撃墜数は自分勝手な行動から出来ているものが多くて1ヶ月の間数十機以上叩いたなんて夢の様な現実の逸話があり、チームワークも無い感じになってしまって私が知らない間で3人が戦死したそうだ。

 

 それとここは比較的に最前線ではなく、防衛的な勤めとなっていて他の基地や隊からでも比較的にイージーな所でもあるけど、RAF(イギリス空軍)は日に日に強くなっているのでむしろ易しい難易度から上がっているような気はする・・。でも戦わなくちゃね・・。

 BF109F型の航続距離は570kmと飛べるのでロンドン爆撃は勿論、短距離護衛だってできる。でも日本の戦闘機は1000km超えるものがある・・・、海軍だとジーク、陸軍だとオスカーと言う機体は一目みたいものである。


 4月中旬に入り私の機体は完全に修理されたと通知書できたので滑走路に三つほどある青黒いハンガーに立ち寄ると、油の匂いはそれほどしないが鼻腔を突っつくシンナーの臭いし、さすがにここから早く出たいという気持ちが込み上げた。

「あ、あの通知で機体が完全修理されて・・その寄ったのですけど」

「アンネ・H・ヘルミーネ少尉ですね。完了されています。現在、キルマークを入れているところですが、何か入れて欲しいトレードマークとかありますか」


「え、あの・・はい」

 本当はいらなかったけど何でOKって言っちゃったんだろう・・。

 新品同様に美しく、まるで女性の様に綺麗な感じのBF109F-4はどこか嬉しそうな感じの雰囲気が伝わった。

「ここに、デザインを」と言われて白紙と色鉛筆だけが渡される。私は元々絵が好きだったのでその場で思い浮かんだハートとハーケンクロイツを描き込むと、思い通りにしっかり形になってきた。

 笑みを溢しながら完成すると紙を渡し「お願いします」と小さな声を発しながら私は格納庫を後にした。


 数日後、再び英国本土爆撃と言う事で指揮所前まで集まったパイロット達だけどどこかと雰囲気が違う・・、違う。死と言うことを恐れずに余裕でいる感じで危機感が無い感じがする。

「今回参加するはずの連中は無断外出で営倉行きとなった。なのでアンネ少尉はエレーナ・ドミニク中尉の列機につけ」


 エレーナ中尉?どんな人なのだろう。

「了解です・・」

「各員出撃準備」

 列が崩れ始め、各自が飛行機に向かって歩いたり、走ったりする。前列の一番端に居たの茶色の短髪女性でどこかと大人しそうな感じが伝わってくる。すると突然青い目を私のほうに向けて、何か嫌そうな顔で私のほうに振り向いたので「よ、よろしくお願いします」と挨拶をした。だが彼女は「フン」と言ってその場から離れてしまった。

 私何かしちゃったのかな・・?


 見に覚えが無いのでたまたまだろうと思い、私はハーケンクロイツの入った二つの二重ハートマーク、愛機BF109F-4に乗り込んでエレーナ中尉の後を追うかのように離陸を開始した。

 轟音鳴る戦闘機隊が空を埋めるように編隊を組み、敵と目の鼻の先、英国本土目指して全速力で飛行していた。視界に入る残骸となった敵地のレーダーは放棄されているような感じで、黒く焦げた建物が無残な姿になって晒されていた。

 そしていつもの様に黒い点が正面から突っ込んでくる。敵の迎撃機が接近しているので、中隊長のアリーセ大尉が敵機発見報告と共に戦闘機隊は各自の立場に動き始る。しかし我隊の無線に「護衛を頼む」と大尉の声が入ったにも関わらず、そのまま高度を上げ敵中に飛び込み銃撃を加えた。

 

 中尉に狙われた機体が爆砕。私は脱出したかな?と思い粉々になった残骸を眺めていたけど花は咲くことはなかった。

 ハエの様に早く動き回る中尉の機体は追いつくので精一杯で腕が痛んで疲れてくる。でも私はどこかあせっている様な気はした。気のせいかもしれないけど、なんとなくだ。


「あっ!」っと思い私は操縦桿を引っ張り、機首を上げた!

 中尉を狙うスピットファイアが凄まじいダイブの音を轟かせながら直下し、主翼から機銃の火が吐いた。

 遅かった!


 スピットファイアはそのまま海面の中に飛び込むかのように我隊から過ぎ去ると、中尉の機体から黒い尾が伸びていて胴体は風穴であいてる。

「中尉殿・・!」

 私は声をかける。

『何をしている、奴を追うんだ!』

「で、でも・・中尉が!」

 駄目・・。私の前で戦死はやめて・・!

『私なんて良い・・!』

「嫌です!私は中尉を死なせません!」


『私はお前の様な奴を守れなかった最低な人間なのに・・どうして・・。敵がやってくる、お前達は離脱しろ・・!』

「退きません、守れないことだってあります・・。でも私は貴方をつれて帰ります、諦めないでください!」

 

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