泣き虫の大戦果
時間はすでに正午を過ぎ夕日になり太陽は沈み、紅色の空だけが広がっていた。
大きな白いコンクリート製の1本だけの滑走路が見えて、タイヤが擦れた黒い線が無数にも伸びていた。
すでに他の隊は着陸を済ませており私だけが残されていた。これは自身、苦手の分野でもあり、またトラウマの元凶もこれが原因の一つでもある。
速度は180km/h・・。よし、大丈夫だろうと思ったが身体は嘘を付かない。額から汗が流れ、胸は鞭で締め付けられるように抑えられ痛み、おまけに緊張もあってなので心臓はジャンプで飛びそうなくらいに激しく動いていた。
操縦桿をゆっくり引く。タイヤがキュッと高く鳴った。着陸フラップもしっかり下ろしていたので、計器から見える速度は徐々に低下していったけど、機体は風に乗るかのようにまた上向いてしまい、とっさに操縦桿を前へ少しだけ押し倒してしまった時、「あぶない!」と叫んだ時は遅い。物凄い音を散らし金属片は風防にぶつかり、ヒビができる。たっぷり黒いオイルは水を被ったかのようにキャノピーにかかり、地面に擦れグシャと言う音にBf109は滑走路を滑った。プロペラは地面の衝突もあったので綺麗に折れ曲がっている。
幸いにも速度がなかったので大事には至らなかった。でも何度やっても成功しない着陸に私はまた泣きべそをかいてしまい、駆けつけた整備士、戦友達に晒すことなりそれも重なってから私の気分は酷く落ち込んでしまった。
「あーあ、こりゃあ当分の間修理だわ」
アリーセ大尉の言葉も聞きながら、黒いオイルに塗れ傷だらけの109を回収される作業を見ながら心に受け止めた。こんな事で泣いても駄目なんだ・・。もっとがんばらなきゃ。そう自分に言い聞かせ私はとにかく涙を流すことを押さえ、とにかく人身的成長を伸ばそうとしていた。
次の日の朝である。修理は遅くて1ヶ月かかるとの事であり私はしばらくの間非番と言うことになったので誰もいない宿舎の中一人静かに本を読んでいて、自分が想像するような世界を浮かばせながらお話を進めることが私の唯一の楽しみでありまた気休めになるような感じにもなった。主人公は私と同じパイロット、一次対戦のお話だけど人の友情を結び、共に立ち上がる勇気、そしてリーダーシップ。私が憧れるモノを持っている。なので自分もこうなればなと日に日に思うこともあった。
しかし読書だけでもやっぱり退屈してしまうので宿舎から出て、そこらへんぶらぶらしようと明るい日光が私を歓迎するように待っていて、ほんのり温かい太陽は私の気分をますます向上させてくれた。
すると突然陸軍の兵士が私に「君、空軍の人だよね、これ指揮所に持っていってくれ」と白い書類の束を私に無理やり渡され、丁度手前に止まったサイドカーつきのバイクに乗ってそのままどこかへ行ってしまった。口をぽかーんと開けて数秒後、我に戻った私はとり合えずそれをもって指揮所に向かうことに。
城が高射砲塔の変わりになってるだけあって陸軍の兵士達の出入りが多いと少し思った。小銃を背負ったドイツ兵がじっと視線をこちらに向けてくるので、私はその場から逃げるように走っていくと、どうして私は走っているのだろう?と疑問の闇が私の心内を包んでいく。そして自問自答するように「私は人が多いところが苦手」と誰もいない通路の上つぶやいた。
滑走路の内側にならぶ航空機掩蔽豪にBf109とFw190と言う空冷戦闘機が並んでいたので、遠くみながら私は指揮所の中へ入り指揮官の人に小さな声早口で書類をその場に置いて出て行った時だ。突如甲高くなる空襲警報が基地中に鳴り響き、待機所から出てきたパイロットが一斉に戦闘機に向かって走り出し、和やかな雰囲気は一転し緊張な空気に包まれ非番の搭乗員は防空壕に逃げ込んだ。
地下の指揮所内に避難すると、無線の雑音が防空室に鳴り渡り、無電員、そして将官達の顔は険しくなっていた。
敵の大編隊が向かっているのかな・・。
『敵爆撃機14機、敵戦闘機20機向かう』
『第三小隊が独断で突っ込んでいったぞ』
「あの連中め!」
私は編入して僅か二日目なのでJG22の事情はよく分からなかったけど指揮官の顔は酷く不機嫌そうである。
『敵と交戦中、軽爆撃機隊、低空で進入する恐れあり。高度2000、到達まで15分』
どうしようあと15分でこの基地が・・!
「予備隊はおらんか!?」
「げ、現在許可を取らずに市街地に出て行ったと・・」
「何だって!?頭が痛くなる・・!」
私がいくしかない!
誰かの変わりに私が!
胸に抱いた決断をもって私は指揮所から飛び出すと「待て、どこにいく」と指揮官に止められそうになった。でも私は唇を千切れるほどに噛み締めて滑走路上に、あまってる飛行機はないかと周りを見渡した。丁度すぐ傍の掩蔽豪にエンジンを唸らせ回転するプロペラ、BF109E-4型が無人のまま放置されてある!多分整備中のテストにやっていたんだろうか。
航空ジャケットに飛行帽。必要な落下傘も着用せず私はBF109E-4に乗り込み、エルロン、ラダー、エレベーターそしてフラップ点検を終え機体はゆっくり前進。速度計が回っていく。
天使に後押しされるようにスピードが出たので冷たい操縦桿をいっぱい引いて機体を上向けさせ一気に上昇。
箱のように小さくなる基地と、視界いっぱい広がるドーバー海峡に小さな黒点がゆっくり動いていた。無線から入った軽爆撃機だった。
随伴機もなく、私1機だけと言う今までにない経験が今始まろうとすると思うと、手足は振るえ恐怖だけが襲ってくるけど「やるんだ」と言う気持ちだけは負けなかった。
高度2500m。計10機、単縦陣に並ぶ敵の単発爆撃機が悠々と空を飛んでいて、遠くから見える細長いゴマの爆撃隊と相当距離があった。スクランブルを受けた隊は囮の餌に嵌っていて、実際攻撃する隊ではないところを未だに襲撃をしていた。
気温の事もあって、まるで機内は冷蔵庫のようにとっても寒い。装着する酸素マスクの中だけが私の口元を暖めてくれる。
操縦桿を倒し、敵機の真上から私は襲い掛かる。
断末魔の叫びの様に響く急降下の音に顔から汗が流れ、見えない人間が私の身体を後ろへ押すかのようにやってくるGにも耐え、一番端っこに飛ぶ一番狙いやすい敵機に照準を入れ操縦桿につけられた機銃発射機を倒した。
主翼に供えられた20mm機関砲の黄色い大きな曳光弾が敵機のデファイアントの片翼を真っ二つに、折り抜き機体諸共海上へ落ちていく。
ボール状の旋回4連装機銃からパッと黒煙が吹き出て、36本の銃身が私のほうに向けられ、思わずビックリしながら敵編隊の中降下した。
このままだと基地に入れてしまう。と言う焦りに私はすぐに操縦桿を下に振り下ろし機首を天のほうへ向け、敵の死角となる下部からまた機銃を浴びせかけると、狙った敵機は機首を急に落としそのまま海へ突っ込んでいく。パイロットキルしたんだと私は思い、また敵の頭上まで機体を操り運んだ。
デファイアントはもろいなあ。
どうして敵はこういう機体を作ったんだろう?
また同じ様に直下しながら機銃を撃ちこむと狙ったデファイアントは大きな火を引きながら空中で爆砕し、同じ様に下部から数発の機関砲を発射。左尾翼に命中したのか綺麗に粉砕し、上昇向の操作に不具合を持った敵機はぐるぐると横回転しながら落下していくのを見守ると、二つの白い華が綺麗に咲いた。
この動きを繰り返し、速度に乗った機体を一気に急上昇させて高度を稼ぐ。そして小休止して敵を補足し急降下の一撃をする、と言う思いつきの戦法であっという間に全部撃墜。
「やったあ!全部落とした!」
本当に運が良かったのだろうか。私は今までにない撃墜に思わず大喜び。
するとエンジンから叩くような音がしたので何かと思い様子を見ると、速く回っていたプロペラが急に緩く回り、そして何も無かったかのように停止した。
「えっ?」
嘘、どうしよう!
あっ不調機だったのか!
「ど、どうしよう・・」
落下傘持ってきてないし・・、基地まで距離あるし・・。
それに無線使えない・・。
事故の対処に手のつけようがなく仕舞いの果てには涙が込み上げてしまう。でも私は泣かない。
今は浮いている。ゆっくり高度を落として速度を保てばなんとかなる!
そう思い操縦桿を倒し、0をさしていた計器は1、2、と回り始め、高度維持にも少しだけ高度を上げたり下げたり繰り返していくと、戦闘を終えた友軍機たちが駆け寄ってくる。
基地の敷地内まで何とかたどり着いた。
ゆっくり、ゆっくり。脚を出した機体は滑走路を踏みゆっくりと進んでいくと風の流れがあるのでラダーペダルで直線を維持しながら着陸する。
そして停止したBF109E-4型に、無意識にあった緊張は一気にほぐれ魂が抜けたかのように身体は軽くなる。
ぐっしゃりと脇が冷たかった。やっぱり身体は正直者である。
「ふー・・」
いつか身体も慣れてくるのかな・・。