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麗龍学園生徒会  作者: 穂兎ここあ
トランプ大会編
12/410

06 注目と悩み

 最近、芽榴の悩みが一つ増えた。


「あれよ、『楠原芽榴』……」

「えー、普通じゃん。別に……」

「あれが噂の女子かよ」

「柊さんのほうが遥かにカワイイじゃん」


 廊下を歩いている芽榴の耳に入ってくるのは評価の嵐だ。

 といってもミス平均の芽榴に対していい評価などあるはずがない。


「芽榴も一気に有名人ね」


 隣を歩く舞子が言うと、芽榴はガクッとうなだれた。


「望んでないよー」


 芽榴が注目を浴びている理由――それを言及するためには数時間前のF組に時を遡る必要がある。




――数時間前・F組――




「芽榴」


 授業が終わり、次の授業の準備をしていると、名前を呼ばれた。

 この学園で芽榴のことを名前で呼び捨てにする人は2人しかいない。しかし、その1人である舞子の声はここまで低くはない。とすれば、背後で芽榴の名前を呼ぶ人物が誰かなど考える必要もない。

 芽榴は聞こえなかったフリをしようと机に突っ伏そうとするのだが、それよりも先に肩を掴まれてしまう。


「……芽榴」


 もう一度、先ほどより少し低くなった声で呼ばれれば、芽榴に逃げ道などない。

 ゆっくりと振り返る芽榴の目には満面の笑みを浮かべる颯が映った。


「神代くん。こんにちは、おやすみさなさい、それでは」


 一通り挨拶を告げて再び机に突っ伏そうと試みるが、颯を相手にやはりそんなことできるはずもなく。


「日々、対応が酷くなっているのは僕の気のせいかな?」


 颯の言葉の通り、彼はあの傘を借りた日以降、よく芽榴の教室にやってくる。颯のおかげで風雅はやってきても芽榴に抱きつきはしないが、注目の眼差しが増えたためにプラマイゼロ、いやプラマイマイナスだと芽榴は思っている。


「今日は何のご用で?」

「うん。ちょっと書類を仕上げるのを手伝ってほしいんだ」


 颯がそう言うと、芽榴は目を細めた。


「それ、役員にしてもらえばいいじゃん」


 芽榴が唇を尖らせて言うと颯は困ったような顔で肩をすくめた。


「だから君に役員になってくれと頼んでいるだろう?」

「だから、嫌だって」


 颯のセリフのせいか、それとも芽榴の応答のせいか、F組には生徒たちのとてつもない絶叫が木霊した。








 そして、その噂はいつのまにか高等部2学年全域に伝わっており、この分ではきっと他学年にも知れ渡っていることだろう。


「皇帝自ら勧誘しているのにもビックリだし、天下の生徒会役員の座を即答で断るあんたもビックリだし。そりゃあ、パイプラインも光速並に通過するわよ」


 舞子がそう告げると、芽榴は大きなため息をつく。


「だいたいいつの間に皇帝様とも仲良くなったわけ?」

「うーん。あー、オセロで手加減できなかった……」

「は?」

「神代くんがすごいって話ー」


 芽榴がニコリと笑うと、舞子は「意味不明」と両手をあげるのだった。






 芽榴の悩み――それは生徒会役員によって芽榴の穏やかで平凡な日常が壊されつつあるということだ。


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