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麗龍学園生徒会  作者: 穂兎ここあ
プロローグ
1/410

00 麗龍の五雄と平凡少女

 私立麗龍学園――初等部から高等部まで存在する一貫校で生徒数は三千を超えるマンモス校。その頂点に君臨する組織、生徒会は役員の力量は言うまでもなく、その経歴さえあれば、たとえどんな不況時であっても職が有り余るといわれている。

 そんな麗龍学園生徒会の歴史の中で最も優秀とされていた生徒会は『麗龍の五雄』と呼ばれ、後の代まで語り継がれることとなった。


 

 これはその『麗龍の五雄』の時代。

 才能溢れる五人の少年とその歴史に埋れた一人の少女の物語。






「300人中100位」

 

 高等部2学年の棟の一階廊下、壁一面に張り出された広幅用紙には300人の名前とその力量の順位が示されている。春休み明けの課題テスト、すなわち2年生になって一番最初のテストの結果だ。可もなく不可もない順位を口にする彼女の名は楠原くすはら芽榴める。芽榴はその順位に喜ぶでも悲しむでもなく、ただその顔に安堵の色を浮かべていた。


「相変わらずふっつーの順位だね。ミス平均」


 友達の植村うえむら舞子まいこは芽榴の順位を見ながら言う。舞子と芽榴は互いに高等部から入学したという共通の境遇から友達になり、性格があったのか、入学して二年目の今となっては常に一緒にいる。


「毎回100番前後を外さないよね、あんた。狙ってとってるならすごいわよ?」

「そんなすごいことできませーん。これが実力ってやつだね」


 芽榴は両手をあげてペロッと舌を出した。


「はいはい。ほら、その実力が神の領域の方々がお越しになったわよ?」


 そう言って舞子が芽榴を指差す。その意図をくみ、芽榴は顔だけ後ろに向けた。

 人集りができている廊下の最端――首位の人物の名前が張り出されている場所。

 そこまで分かればすべてに納得してしまう。


「生徒会様様ですか」


 芽榴が呟くと同時、人集りが左右に分かれて列を作り、五人の集団が目に入る。



「五位以内を外したヤツは次のテストまで仕事五倍ね。風雅は免除してあげる」


 清々しいほどの笑顔でそういう真ん中の男は神代かみしろはやて。高等部入学と同時に生徒会長に抜擢された異例の人物。容姿端麗、頭脳明晰の天才。ゆえについた二つ名は『麗龍の皇帝』。


「よかったー。さすが颯クン。オレに五位以内とか無理だもんね、うん」


 芸能人顔負けのイケメンは蓮月れんげつ風雅ふうが。頭はよくない。どちらかといえば悪いほうだが、颯によって選び抜かれた生徒会役員。


「開き直るんじゃない、蓮月。貴様はどうしてこうも楽観的なんだ? だいたい生徒会役員なのだから少しは勉強を……」


 延々と説教を始める眼鏡男子は葛城かつらぎ翔太郎しょうたろう。颯の次席で生徒副会長。とにかくいつも風雅に説教をしている。


「葛城くん、落ち着いてください。蓮月くんから楽観思考を奪ったら何も残りません」

「ちょっ……。有利クン、それヒドくない?」


 風雅が泣きつく小柄な少年は藍堂あいどう有利ゆうり。家柄なのか、とても礼儀正しい。


「でも颯の命令通りにするなら私たちほぼ全員がトップ占めなきゃならないわよね」


 金色の長い髪をサイドツインテールにして女子の制服を着ているスラッとした人物はひいらぎ来羅らいら。その綺麗さゆえに男ということは芽榴も最近知ったほどだ。


「何話してるんだろうねー……って芽榴?」

「んー? どうしたの?」


 教室に帰ろうとする芽榴を舞子が引き止める。


「あんたって本当に興味ないわよね。生徒会役員に」

「私がミーハーになってるところ想像してみてよ、笑えるから」

「確かに。私もそんなに騒ぐほどでもないし、似たようなもんか」

「そういう思考だから舞子ちゃん好きー」


 芽榴が抱きつくと、舞子は面倒そうに顔をグイッと自分から剥がす。


「まぁ、天才なんて別世界の人間だし。分かり合えないわよね、私たち凡人とは」


 舞子は生徒会役員の姿を拝みながら呟く。全国的に有名な麗龍学園の生徒会。その生徒会に高等部一年から選ばれ、高等部三年まで彼らが引き継ぐのだろうから彼らはいわゆる《天才》に当たるのだろう。そしてそれは芽榴が最も嫌う言葉。


「うん。そうだね、舞子ちゃん」


 芽榴は舞子に背を向けたままそう言った。


 


 この時の芽榴はまだ知らない。後に『麗龍の五雄』といわれる彼らとの運命の時が刻一刻とせまっていることを――。

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