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絶対、叶う、愛  作者: 夜羽


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先輩のことが、好きだから

 ああ、体中が、痛い。

 痒くて、むずむずして、嫌な気分だ。

 そういう感覚が、最初にあって、それから、あまりにも暑かったから目覚めたんだと思う。

 確かに、ギラギラと輝く太陽が、頭上から沙里を焼き殺さんと照らしているかのようだった。

 ああ、暑い。

 そういえば、先輩はどこへ行ったのだろう?

 暑さで記憶が溶けてしまったかと思うくらい、記憶の道筋は穴だらけで、断片的だった。先輩と一緒に、山を登っていたことだけは、はっきりと覚えている。

 あたしたち、山ガール! そう言って、二人で写真を撮ったんだ。

 大好きな先輩と。

 好きで、好きで、それは、沙里の純粋で無垢な愛情だった。沙里は、幼いころから男性は好きになれなかった。いつもいつも、可愛い女の子に目がいってしまう。それに、男性は、決して、沙里に言い寄ってきたりしなかった。こんな自分って変だなって思っても、その気持ちは変えることができなかった。

 自分は、女の子が好きなんだ。

 高校に入ってから、初めて女の人に優しくされた。それが、テニス部の先輩の小百合さんだった。小百合さんは、目がぱっちりしていて、少し茶色がかった髪と、すっと伸びた鼻筋と、ちょっとだけぷっくりと膨らんだピンク色の唇が特徴の、とっても綺麗な女の人だ。贅肉一つ、ついていないような身体は、すらっとしていて、他の子より頭一つ分は抜けている。まるで、アクション映画の女優さんのような、女の人だった。その小百合さんが、テニス部での練習のとき、沙里が転んで膝を擦りむいた時、一番最初に駆けつけてくれたんだ。心配してくれたのは、小百合さんだけだった。

 ね、大丈夫? 痛くない?

 ただの擦り傷だったのに、小百合さん、とても心配してくれて、沙里は涙がでるくらい嬉しかった。

 心臓がどきどき、した。小百合さんのことをまともに、見れなかった。

 その日から、小百合さんのことを、来る日も来る日も考えている。

 小百合さんと、いつか……触れ合えたら、いいな。

 あの、ぷっくりした薄い唇と。あたしの、それと。

 でも、小百合さんには、もう恋人がいて、沙里のそんな妄想は、叶いっこないんだと思っていたけれど。

 あんな、痛ましい事故が起きちゃったんだ。

 可哀そうな小百合さん。

 でも、あたしがいるからね。大丈夫よ、元気を出して。

 そういう気持ちで、小百合さんの側に、いつだっていたんだ。先輩のことが好きだから。


 小百合先輩は、実を言うと、沙里だけではなくテニス部全員の憧れの的だった。唯一、インターハイで、決勝まで行ったほどのテニスの実力の持ち主だったんだから。

 小百合さんが、ラケットを振るときの、あのしなやかな筋肉の動きは、艶めかしくて、それでいて野性的だった。野生の動物みたいなんだもの。体がクルっと回って、重心を低くして、弾を打ち返すときの綺麗なフォームは、もう見ていて芸術的だった。飛び散る汗が、太陽に光って、なんだか漫画の中の主人公のようだった。

 だから、小百合先輩を好きなのは、沙里だけではなかったと思う。だって、小百合先輩の周りには、いつだって人がいたから。みんな、彼女と一緒にいたいと思うんだ。だって、エネルギーに満ちた人だから。

 だけれど、小百合先輩のことを一番深く知っているのは沙里だ。

 沙里は、そう自負していた。小百合さんの好きな食べ物、嫌いな虫、好きな映画、嫌いな音楽、全部全部知ってたんだから。でも、それくらいなら、知ってる子もたくさんいた。だけれど、沙里だけが知ってることがあった。

 小百合さんの秘密。

 それは、沙里だけが知っている。まさか、小百合さんが、そんなことするなんて、絶対、みんなは思わないだろう。

 だけど、大丈夫、絶対に、みんなには言わないからね。

 携帯で、写真も撮っちゃったけど、これは、あたしの胸の中にだけ、しまっておくね。

 はじめて見た時は、衝撃的だったけれど、もうこれで、二人は共犯者だと、沙里は思ったのだ。二人の距離は、これから、どんどん縮まっていくだろうって、沙里は思っていた。

 そして、そんな沙里の想いは、実現していったのだ。

 小百合さんと、二人で、映画に行ったり。ショッピングしたり。

 夢みたいだったなあ。

 だけれど、そんなある日、あの事故が起こったんだ。

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