表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/11

称賛の残滓(ざんし)

パソコンのモニターに、新着メールの通知が浮かぶ。


[件名]:内定(採用)のご連絡(株式会社PCフレンド)藤田紀之様株式会社PCフレンド採用担当の鈴木と申します。先日はオンライン面接のお時間をいただきありがとうございます。厳正な選考をさせていただきました結果、あなたをアルバイト従業員として採用することを内定いたしましたのでお知らせいたします——


メールを表示したままのモニターを、藤田紀之はぼんやりと見つめていた。

虚ろな目に、ほんの少し光が灯る。表情にわずかな揺らぎが生まれた。


「まあ、こんなもんだよな」


ぽつりとつぶやくと、右端のモニターに視線を移す。

SNSのビューワーには条件抽出された複数のタイムラインが、縦に整列している。


「noRhythm」「HeartBeater」「終末予言少女アリス」「404の楽園」…


紀之はその一つひとつを目で追い、何かを掘り当てるように、無言でキーボードを叩く。範囲を広げ、除外し、また絞り込む。ヒントのような断片を見つけ出すための反復。もう何千回、何万回と繰り返してきた作業だ。

画面の中の文字列が流れていく。感情、評価、熱狂、そして沈黙。彼の意識は、ツイートの洪水のなかに沈んでいく。かつてそこに確かにあった“称賛”の残滓を、今も探し続けるかのように。


そして再び、目は虚ろに戻る。


魔法は、解けなかった。いや、解けないように必死で守り続けた。

それは現実をねじ伏せる唯一の手段だったからだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ