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第一章 思惑

9歳で叔父の裏切りにより国を追われた西乃国皇太子:劉煌は、亡き父の遺言である蒼石観音の秘密を解き、幼馴染たちの協力のもと22歳で敵を討ち祖国で即位した。

だが、12年想い続けてきた初恋の人:小春は、中ノ国の皇后となり、失恋の痛手から劉煌は祖国復興に邁進する。そんな中巡り合った女医に、劉煌は知らず知らずのうちに心ひかれてしまうが、彼女の正体は東乃国の皇女で、彼と同様国内の乱から逃れてきたことを知る。彼女の姿に過去の自分を見た劉煌は、彼女を安全に祖国に帰すことに成功するが、正式に彼女を西乃国の皇后と迎えるにあたり、思わぬ妨害が入ってしまった。


劉煌に向けられた刃を身を持ってかばった彼女は一度絶命し、フェニックスの叡智で蘇ったものの、何故か劉煌と劉煌にかかわる人たちに関する記憶を無くしてしまい、、、


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるのでR15としていますが、それ以外は笑いネタありのラブコメ

 翠蘭は部屋から出てフーと大きく息を吐いている時に、ちょうど李亮と白凛がそこに戻ってきた。


 李亮と白凛が、翠蘭に向かって恭しくお辞儀をすると、翠蘭はお辞儀を返しながら「疲れが出てしまったので、お先に失礼することになりました。」と告げた。李亮と白凛はお互いに目配せすると、白凛が翠蘭に向かって手を差し出した。


「内親王殿下、お部屋までお送りします。」


 女子二人が離れて行くのを目で見送ってから李亮が式場内に戻ると、劉煌と張浩がさしで何やら真剣に話し込み、東之国の皇帝はその様子をジッとうかがい、摂政の翠陵はそれに全く興味がないようでひたすら料理に舌鼓を打っていた。


 李亮は、東之国面々にお辞儀をすると、再度、先ほどの非礼を詫びた。


 麒麟は李亮に、劉煌との関係を尋ねると、李亮は劉煌と示し合わせていた通り、包み隠さず劉煌との出会いのことを話した。


 麒麟はその話に目を輝かせながら聞き入ると「そうなんですね。劉煌殿は幼少のみぎりから武術も一流だったのですね。」と感嘆していたが、李亮は笑いながら自らの皇帝の皇太子時代の弱点を暴露した。  

 

「御意。でも菓子一つ買い方がわからない男でした。」


 それに聞き耳を立てていた劉煌は、「そうなのだ。浮世離れしたことはいろいろ知っていたり、できたりしたが、肝心の生きていく上での基本的なことはさっぱり知らなかったのだ。」と自虐して恥ずかしそうに頭をかいた。


 やおら翠陵は張浩の方を振り向くと、「どうすることにしたのだ?」と聞いた。

 張浩は翠陵にまずお辞儀をしてから彼の意見を述べた。

「西乃国は国立の病院を作ったばかりだそうで、御典医達が交替で国民を診ているそうです。それは聞けば聞くほど、私がやりたかった医療を西乃国は実践されているご様子で、陛下、殿下のお許しがあれば、西乃国に行かせていただきたいと存じます。」


 医学に造詣の深くない簫陵は、ただ「そうか。いいんじゃないか。」と軽くいい、東之国が張浩という稀有な医師を失うことの重大さを全く認識していなかった。


 麒麟も医学については無知で、劉煌と張浩の会話の内容は全然わからなかったが、二人の会話の雰囲気から、直観的に張浩は神医なのだと確信していた。


 翠陵とは異なり、麒麟は張浩を正当に評価した。

「張先生ほどの人材を東之国が失うのはとても遺憾ですが、蘭姉ちゃんを見つけてきて下さった御礼に、張先生の意思を尊重したいと思います。でも張先生、西乃国が嫌だったら、いつでも東之国に遠慮なく戻ってきてください。東之国はいつでもあなたを大歓迎することを忘れないでくださいね。」

 そして今度は劉煌に向かって、「劉煌殿、恥ずかしながら東之国には、医師の公的教育機関が無いのです。どうでしょう、もし東之国から医学の分野で、西乃国に留学生を送るとしたら、それを西乃国では受け入れていただけるものなのでしょうか。」と聞いた。


 酒がたっぷり入っている翠陵は、つい麒麟を皇帝扱いするのを忘れ、渋い顔をして「朝廷で話も出ていないものを勝手に決めるな。」と釘をさした。

 麒麟は落ち着いて「摂政殿、西乃国で受け入れてもくれないものを、朝廷で議題にするわけにいかないでしょう。」と応えると、張浩も「僭越ながら、小職も医学留学生について、陛下のお考えに賛同いたします。」と言ってお辞儀をした。


 劉煌は、想定外のことに「あいにく私は東之国の医療事情は存じておりませんが、張先生や翠蘭殿のような名医がいらっしゃる国で、現時点でそれほど高いレベルではない我が国の医療教育が、お役に立てるとは思えませんが…」と遜ると、翠陵がご満悦そうにうんうんと頷いていた。


 それを見た張浩は翠陵の態度にひどく気分を害し、劉煌に向かって「劉煌陛下、何を仰られますことか。とんでもないことでございます。」と言って摂政の非礼を詫び、続けて東之国の二人に向かって「簫翠袁陛下、摂政殿下、こちらにいらっしゃる劉煌陛下は、若き神医として諸国でご高名だった中ノ国の御典医長小高蓮殿だったのですぞ。」と知らしめた。


 それを聞いた麒麟は、翠蘭が言っていた「劉煌殿は医師としても超一流」を思い出し、”蘭姉ちゃんは劉煌殿を持ち上げて言っていた訳ではなかったのだ” と思うと、益々劉煌との関係を深めたいと思い、「劉煌殿、いかがでしょうか?」と良い返事の期待を込めて膝を一歩前に進めて聞いた。


 劉煌は顔を曇らせると「今日の事件が無く、翠蘭殿と無事結納をかわせていたらその話も問題はなかったのだが...」とお茶を濁すと、李亮も「失礼ながら、東之国から破談されたのに、東之国からの留学生の受け入れは、我が国の重鎮達も承服しかねるかと。」と残念そうに言い添えた。


 すると翠陵が酒も入っている勢いで、麒麟の真意も汲み取れないどころか、先ほど張浩から窘められたことはもすっかり忘れ、その場を仕切った。

「だいたい、東之国は西乃国でわざわざ医療教育を受けなくても問題ないのだ。劉煌殿、今の話は忘れてくれ。陛下も酒を飲み過ぎて突っ走ったようだ。もういい時間だし、これでお開きにしてはいかがかな。」

お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

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