表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/63

第一章 思惑

9歳で叔父の裏切りにより国を追われた西乃国皇太子:劉煌は、亡き父の遺言である蒼石観音の秘密を解き、幼馴染たちの協力のもと22歳で敵を討ち祖国で即位した。

だが、12年想い続けてきた初恋の人:小春は、中ノ国の皇后となり、失恋の痛手から劉煌は祖国復興に邁進する。そんな中巡り合った女医に、劉煌は知らず知らずのうちに心ひかれてしまうが、彼女の正体は東乃国の皇女で、彼と同様国内の乱から逃れてきたことを知る。彼女の姿に過去の自分を見た劉煌は、彼女を安全に祖国に帰すことに成功するが、正式に彼女を西乃国の皇后と迎えるにあたり、思わぬ妨害が入ってしまった。


劉煌に向けられた刃を身を持ってかばった彼女は一度絶命し、フェニックスの叡智で蘇ったものの、何故か劉煌と劉煌にかかわる人たちに関する記憶を無くしてしまい、、、


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるのでR15としていますが、それ以外は笑いネタありのラブコメ

 翠蘭はこれに呆気に取られていると、劉煌は手鏡で訓練し続けた自分が最高にカッコイイ顔にしてから、


「馬に乗って東之国しか取れない薬草を取りにいきたい。案内してくれないか?」


と、わざと翠蘭が好きでたまらない物満載のデートプランを提案した。


 案の定、薬草マニアの血が疼きはじめた翠蘭は、劉煌の目をジッと見ながら、心の中でもがいていた。


 ”どうしよう。デートはしたくないけど、薬草狩りはしたい。とってもしたい。そういえばしばらく薬草狩りに行っていないし、この調子だと巫女になるまでの間にそうそう薬草狩りもいけないだろうし。ええい、ままよ。”


 気が付くと翠蘭は「いいわ。」と返事をしていた。


 劉煌は凄く嬉しそうにニッコリと笑って「決まりだ。じゃあ、明日の夜明けに出立しよう。」と言うと、今度は席を立って他の人達に向かって、「翠蘭殿は明日の夜、私が責任をもって、都の皇宮にお送りします。」と宣言した。


 劉煌は席に座ると「あー、お腹すいた。」と呟いて、今度は黙々とあれこれ箸を進めた。しばらく食べ続けていた劉煌は自分の隣に座っている李亮を通り越して、その先に座っている白凛に、「お凛ちゃん、東之国には馬蹄糕がないみたいだけど、大丈夫?」と聞いた。

 白凛はぶっきらぼうに「ダメ。あれがあれば少しは(気持ちが)上がったのに。」とぶーたれた。


 それを見ていた李亮が小声で「おい、公の席なんだから少しは繕えよ。」と囁くと、「そんなことができる人だと思っていたの?」と、白凛がふてくされて李亮を白い目で見て言った。


 そんな西乃国のアットホームな様子を見ていた翠蘭は、自分がどうしてこんなにもこの人達に親しみを感じているのか不思議でたまらなかった。


 ”もしかして、この人達のことも、私は知っていたのかしら。”


 そう思った翠蘭は、馬蹄糕が甘いお菓子であることを思い出し、急に立ち上がってスタスタと末席まで行くと、小声で給仕に話をしてまた席に戻ってきた。


 ほどなくして給仕が戻ってくると、翠蘭に皿を渡した。


 翠蘭は、白凛の前にその皿を置くと、「馬蹄糕ではないけれど、東之国にあるお菓子、華素手羅よ。食べてみて。」と恥ずかしそうに言った。


 白凛はふくれっ面のまま翠蘭を横目で見上げると、ボソッと「手で食べていいの?」と聞いた。


 翠蘭はニッコリと笑うと、自ら手づかみでそのお菓子を食べてみせた。


 その様子をみた白凛は左の口角だけ上げ、翠蘭を見ながらそのお菓子を一個手に取ると、ガブっとそのお菓子に噛みついた。すると白凛は眉毛を上げて「うん、うん」と言って、嬉しそうにそのお菓子を1個平らげると、またその皿に手を伸ばしてお菓子をつまんだ。


 李亮は「どうだ気分は少しは晴れたか?」と白凛に聞くと、白凛はまたそのお菓子をつまんで「うん、馬蹄糕より好きかも。」と呟いたので、李亮は血相を変えてすぐに給仕を捕まえると、その大きい身体を小さくして両手を揉みながら「頼む、人助けだと思って、この菓子の作り方を紙に書いてくれないか。この通りだ。」と何回も給仕に頭を下げて懇願し、それを見ていた劉煌はやれやれという顔をして顔を横に振っていた。


 その様子を見ていた翠蘭は、なぜかとても懐かしい気分になり、おかしくなって思わずコロコロと笑った。


 すると、西乃国の三人衆はハッとして動きを止め、翠蘭をまじろぎもせず見つめた。


 急に3人に真面目な顔で見つめられた翠蘭は、恥ずかしくなって、袖で顔を隠すと「失礼をいたしました。申し訳ございません。」と謝って、丁寧にお辞儀をした。


 白凛は、突然ガバっと席から立ち上がると、今度は目に涙をいっぱい浮かべて翠蘭に話しかけた。

「全然失礼じゃないのよ。あなたは私たちと一緒にいると、いつもそうやって笑っていたの。」


 翠蘭は愕然とした。


 ”やっぱりこの人達のことも知っていたんだわ。”


お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ