第三章 因果
架空の国、架空の時代
9歳で叔父の裏切りにより国を追われた西乃国皇太子:劉煌は、亡き父の遺言である蒼石観音の秘密を解き、幼馴染たちの協力のもと22歳で敵を討ち祖国で即位した。
だが、12年想い続けてきた初恋の人:小春は、中ノ国の皇后となり、失恋の痛手から劉煌は祖国復興に邁進する。そんな中巡り合った女医に、劉煌は知らず知らずのうちに心ひかれてしまうが、彼女の正体は東乃国の皇女で、彼と同様国内の乱から逃れてきたことを知る。彼女の姿に過去の自分を見た劉煌は、彼女を安全に祖国に帰すことに成功するが、正式に彼女を西乃国の皇后と迎えるにあたり、思わぬ妨害が入ってしまった。
劉煌に向けられた刃を身を持ってかばった彼女は一度絶命し、フェニックスの叡智で蘇ったものの、何故か劉煌と劉煌にかかわる人たちに関する記憶を無くしてしまい、、、
登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるのでR15としていますが、それ以外は笑いネタありのラブコメ
その日の東之国の朝廷は前日にも増して大荒れに荒れた。
中ノ国の皇子が誕生したことが事を複雑にしていた。
ただ元気な赤子が生まれただけならまだしも、通常ならすぐに死んでしまう位の早産なのだ。
もしここで中ノ国の皇子が死んでしまったら、たとえそれが理論上は当たり前のことであっても、中ノ国はなんとでも東之国に因縁をつけられる。それゆえ、まずこの皇子誕生の話を中ノ国に知らせるかどうかで朝廷は真っ二つに分かれてしまった。
たかだが知らせるか知らせないかだけの問題で2刻(4時間)も平行線が続いた時には、さすがに麒麟の堪忍袋の緒も切れてしまい、摂政が止めるのを無視して言い放った。
「古今東西、隠し事を隠しおおせたことなどない。必ずどこかでほころびが出てくるものだ。たった一人が隠していたってそうなのに、ましてやここには100人も知っている者がいる。さらにここに来ている中ノ国関係者だって皇族を除いても数10人はいるのだから、いくら我々が黙っていても中ノ国は近日中にこのことを知るだろう。だからこのことを知らせようが知らせまいが、相手はそれを知っているという前提で考える必要がある。そうなった時、こちらが公に相手に知らせていなければどうなるか、相手の心理も踏まえてよく考えてから発言するように。」
この一言で知らせない派は一発で口をつぐんだが、知らせる派もどう知らせたらいいのか思いあぐね黙り込んでしまった。
先ほどまでとは打って変わって摂政まで黙り込んでしまった内裏殿を高い位置から見下ろしていた麒麟は、やたら人数だけは多いこの朝廷の運営を今後どうしたらよいのかと思いあぐね、思わず天を見上げてしまった。
”袁袁、袁袁だったらどうする?”
いつものように、心の中の彼の従弟はただ彼に向かって微笑むだけだった。
誰も一言も発しないまま、時だけが無常に過ぎていった。
目をつむり腕を組んで座っていた麒麟は、突然カッと目を開いた。
「明日の夜には中ノ国に公使を遣わさねばならぬ。午後の再開までに全員交渉案を提出するように。できぬ奴は明日からここに来る必要はない。役職をすべて解く。貴族であれば爵位もはく奪だ!」
シーンと静まり返った東之国の朝廷で、麒麟はこう宣言してすぐに席を立ったが、その途端内裏殿は官僚たちの悲鳴で満たされた。それでも麒麟は彼らの抗議を無視して足早に朝廷から姿を消した。
内裏殿から出た麒麟は、いつもとは違って自室に戻らず冕冠をつけたまま生前先帝一家が暮らしていた天寓御所の焼け跡へと一人向かった。焼け跡はいくつもの白い布の天幕で覆われており、入口に24時間体制で近衛兵が長やりを抱えて立っていた。
麒麟がその入口の前に立つと、近衛兵はすぐに片膝をついて首を垂れた。
「中に入りたい。」
さらに麒麟は天幕の布扉を開けるよう手で指示を出したが、近衛兵はまだ跪きながら彼と目を合わさずお茶を濁した。
「恐れながら、ただいま内親王殿下が入幕中で、、、」
「翠蘭は誰も入れるなと言ったのであろう?でも朕ならお前が咎めを受けることは無いから安心しなさい。」
「ははあ。」
近衛兵は一度お辞儀をしてからすぐに立ち上がり天幕の布扉をそっと開け皇帝が中に入れるようにした。
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