表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/62

第一章 思惑

ーこれまでのあらすじー


9歳で祖国を追われた皇太子:劉煌は、潜伏先で女子として育ち、自らの意思でくノ一教育を受け、父の遺志に従い蒼石観音の秘密を解いて、見事に22歳で国(西乃国)を取り戻した。


しかし、祖国は以前のような秩序だった国ではもはやなく、今度は国の立て直しという使命が彼を待っていた。


彼の初恋の人である隣国(中ノ国)の皇后:小春が暇を持て余しているのとは裏腹に、彼は祖国復興のため脇目もふらず日々皇帝として邁進していた。さらに、祖国の政治だけでなく医療もお粗末になっていると気づいた医師としても一流な劉煌は、ひょんなことから自ら御典医長も兼務することになり、仮面をつけている時は皇帝、素顔の時は御典医長の小高蓮と、二重生活を送ることに。そんな余裕のない彼の前に皮肉にもそういう時に限って運命の女性が現れる。


ところが、その運命の女性の正体とは、西乃国の隣国である中ノ国の、そのまた隣国である東之国の皇女であり、中ノ国皇帝の初恋の人でもあったことから、東之国、中ノ国と西乃国3か国間に思わぬ緊張が走ることに、、、さらに千年前の因果応報、輪廻転生も加わって3か国の関係は混とんを増す。


果たして、劉煌は祖国を復興できるのか、国際問題を解決して運命の女性と人生を共にできるのか。

彼の運命やいかに、、、


シリーズ「劉煌と蒼石観音の秘密」トリロジー最終章


登場人物の残忍さを表現するため、残酷な描写があるのでR15としていますが、それ以外は笑いネタありのラブコメ


登場人物は下記をご参照ください。

https://ncode.syosetu.com/n6113jy/1/

https://ncode.syosetu.com/n6113jy/2

 簫翠蘭が死んだ。


 数時間後にはこの地で結納式をあげ、幸せいっぱいな時を過ごしていたはずの二人に降りかかった突然の不幸に、白凛は、どんどんいたたまれなくなり、ただただそこに放心状態でたたずみ、涙をぬぐうことも忘れて、それが目から溢れては流れ、溢れては流れるに任せていた。


 なにしろ、今日結納を交わす予定だった女性の方である張麗こと簫翠蘭は、彼女のたった一人の女友達であり、初めて酒を酌み交わした時から義姉妹となったほど気の合う大親友だし、男性の方である劉煌は、彼女の人生初の友達であり、理解者であり、夢を後押ししてくれた恩人でもある。


 そう、今日結納を交わす予定だった二人は、白凛にとって、誰よりも親しく大事な大切な友達なのである。


 それなのに、、、


 次第に白凛の心は正常に動き始め、怒涛のような怒りに変化してくると、どす黒いものが腹の底から噴出し、彼女の手は自動的に脇差に向かった。当然側にいた彼女の夫である李亮がそれを見逃すはずはなく、彼は大きな手で白凛の動きを制した。


「手をどけて!れいちゃんを殺した奴を絶対許さない!私が中ノ国皇帝(アイツ)を殺す!それで死刑になってもかまわない!」


 とうとう自分の感情にどうにも抑えが効かなくなりそう泣き叫んだ白凛を、李亮よりも先に東之国の皇帝が諫めた。

「白将軍、お気持ちに感謝します。でも中ノ国皇帝(あんなヤツ)のためにあなたの人生を犠牲にすべきではない。蘭姉ちゃんの分まで生きてください。」


 その彼の言霊で、白凛のすでにひびが蜘蛛の巣のごとく張り巡っていた心は、完全に砕け散り、彼女はその場で「あああああああ!」と叫びながらとうとう泣き崩れてしまった。


 李亮も涙を流しながら白凛を抱きかかえると、二人はそこでお互いに抱き合って号泣した。


 何を思ったのか、突然東之国の皇帝は、他者の制止を振り切って、茫然としている中ノ国皇帝である成多照挙の前に躍り出た。

「あなたは我が国の皇女を殺害した。その意味がお判りか。自分から平和不可侵条約を持ちかけておきながら、なんと卑怯極まりない!あなたも皇后も生きて東之国から出られると思うなよ!」


 身体も年齢も自分の1.5倍はあろうかいう照挙に全く気後れなく、彼は始終照挙を睨みつけながらそう言い放った。


 すると、どこからか真っ赤な朱雀がヒラリヒラリと飛んでくると、簫翠蘭の亡骸の前に降りてきた。


 ”””私の女神、ようやく見つけた。”””


 朱雀は、人の耳ではなく、心に直接聞こえるテレパシーのようなもので、その場にいる全員に朱雀自身の思いを伝えてきた。


 空想上の存在と皆が思っていた龍だけではなく、朱雀まで目の当たりにし、その場にいた者達は、ただただ固唾をのんでその存在に見入っていた。


 その朱雀の炎のごとく眩いばかりに輝く神々しさと成人男子の数倍はあろうかという大きさ、意思をテレパシーで伝えてくることに、その場にいた全員が呆気に取られている中、翠蘭の亡骸の前で朱雀はその大きな羽を優雅な動作で綺麗に小さく畳んだ。


 朱雀は翠蘭に向かって言った。

 ”””千年ずっとあなたを探し続けていたんだよ。女神よ、何で人間になんてなっていたんだ。道理で探しても探しても、見つけられなかったはずだよ。”””


 ところが、翠蘭がそれに何も反応しないことに気づいた朱雀は、首を傾げた。

 ”””女神、女神、どうしたの?まさか、、、”””


 何かに気づいたのか朱雀はハッとすると、突然その場にいた全員の心に朱雀の怒号がこだました。

 ”””何で愚かな人間のために自分を犠牲にしたんだ!!!”””

 ”””捕まった私を助けてくれた女神なのに。。。()()()()()()()()()()()()()()()()()”””


 怒気に満ちた声がみんなの心に響いた瞬間、その場にいた全員が一斉に臆することなく、中ノ国皇帝:成多照挙を指さした。


 朱雀は、中ノ国皇帝:成多照挙の方に顔の向きを変えて彼をチラッと見ると、目を細めて怒鳴った。

 ””()()()()()()()!!!”””


 そしてアッという間に長い尾羽を照挙目掛けてはためかせた。するとバシっという騒音と共に、照挙はバーンと遠くまで吹っ飛ばされ、10メートル先にいた東之国の兵士達の前にボトっと落ちた。それを目撃した人々は、朱雀の威力に恐れをなしてその場で完全に委縮してしまった。


 ”””()()()()()()()()()()()鹿()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()”””

 そう肩を怒らせて吐き捨てると、朱雀は、今度は見るからに肩を落として残念そうに翠蘭を見下ろした。


 初めて見る巨大で強力な朱雀なのに、何故か皆のように臆することもなく劉煌は懇願した。

「朱雀よ。西域のある国では、あなたのことを死んでも蘇る不死鳥(フェニックス)と呼んでいると聞いている。あなたの力で簫翠蘭を蘇らせてくれないか?この通りだ。」

 そして彼は朱雀を拝んだ。


 ”””中ノ国の皇帝よ、、、あ、今は西乃国の皇帝になっているのだったな。君もよくわかっているように死人を蘇らせることはできない。”””


 それでも劉煌は諦めずに、翠蘭の遺体を胸に抱いたまま、

「代償として命が必要なら、私の命と引き換えでも構わない!頼む!この通りだ。あなたの知っている蘇りの方法を彼女に試してもらえないだろうか。」

 と熱願して、朱雀の前にひれ伏した。


 それには白凛や李亮のみならず東之国の面々も仰天して、「陛下!命の引き換えはなりません!」と叫んだ。


 朱雀は、目の前の面々をまるで珍しい物を見ているかのような顔つきをして見ると、首をかしげながら呟いた。

 ”””そうだな。人間は無理だけど、彼女は元々は女神だ。女神の魂だから蘇るかもしれない。やってみよう。”””


 すぐに朱雀は、尾から自分の羽を1本咥えて抜き、その羽を翠蘭の亡骸の百会にやさしく置いた。すると、その羽はクルクル反時計回りに3回回ると百会のツボの上に羽軸根を下にして垂直に立ち、羽軸根から翠蘭の頭の中にグルグルと左回転をしながら入っていった。


 皆が固唾を飲んでそれを見守っていると、翠蘭の胸の傷がみるみるうちに塞がり、ふわあという大きな息と共に翠蘭の止まっていた心臓がドクンドクンと動き出した。


 皆が喜びに溢れてその奇跡を見守っていると、翠蘭のその大きな目に光が戻り、彼女は数回パチパチと瞬きをしてから目を大きく見開いた。


 劉煌は歓喜のあまり、翠蘭を抱いたまま朱雀に「ありがとうございます。ありがとうございます。」と言って頭を深々と下げると、今度は翠蘭の顔を覗き込んで、彼女の頬を優しく撫でながら「大丈夫か?傷は痛むか?気分はどうか?」と矢継ぎ早に聞いた。


 簫翠蘭は怪訝そうな顔をしてボソッと「大丈夫です。」と言ってから、劉煌の腕を払いのけて彼から逃れると、自分の腕を胸の前で組み目の前にいる劉煌に訝しげに聞いた。


「あなたは誰ですか?」

お読みいただきありがとうございました!

またのお越しを心よりお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ