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Vol.1 第一章 6話 私も大嫌いです!

午後15時を過ぎた。

エルフの国に時計はない。かなり旧式ではあるが、日の位置でおおよその時間を把握する。

休日であれば、母とお菓子を食べている時間だ。

だが、今日は治療の日。

今日の担当者は昨日の女官とは違う。

内容も、電気治療とは違い腕のマッサージを始めとした優しいものだった。


一通りの治療が終わり、差し出された薬を飲む。

いつも通りの葉に乗せられた苦い粉だ。

口に運び、飲み干す。

目の前の女官は治療に使った器材などを片付けている。

テーブルの上には、赤黒い血が入った容器。

他にも、黒い薬草や白い木の実だ。

鼻にツンとした薬品の臭いが突き刺さる。


「ねぇ、お姉さん。その木の実は何っていうの?珍しいね!」


反応はない。心がキュッと締め付けられる。

氷水につけた針を胸に突き刺された様な痛みが走る。

だが少年はめげない。

だって、寂しいから。


「お姉さん綺麗だね!お父さんと知り合いなの?」


「………」


何も返事がない。

そこに誰も居ないような反応だ。少年の瞳が僅かに潤む。

震える口調で、そっと尋ねる。


「お姉さんは、僕の事…きらい?」


「はい」


即答だった。悲しい。

とても、とても悲しい。

それと同時に、フツフツと怒りが湧いてくる。


少年は迷う。

コレは言って良い事なのだろうか?

言ったら嫌われるのでは無いだろうか?

いや、気にする必要はない。

だって、嫌われているのだから。


「そっか!僕もね、お姉さんのこと大嫌い!」


「そうですか!それはよかったです!」


「…え…あッ……」


満面の笑みだった。

怒られるか殴られると思った。だが、帰ってきた言葉は少年の想像とは違った。

皮肉とも、蔑視とも違う何とも言えない気持ちの悪い答え。

その言葉を告げた女は、また何事も無かったように治療器具を片付け、これ見よがしにルンルンと笑いながら部屋を後にした。


悲しみとも怒りとも言えない感情だけがその場に残った。

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