Vol.1 第一章 5話 泣き止まない
「ほら、我慢しなさい!痛くないでしょう!」
「ーーッあぁッッ…!」
痛い、腕から全身に伝わる電撃による振動。
治療が始まって1時間近く経つが、一向に回復の兆しは見えない。涙が滲んでくる。だが、その手が止まることはない。股間に熱いものが込み上げ、股の間を生温かいモノに覆われる。
痛みと羞恥心に心の中がグチャグチャになる。
痛い。痛い。痛い。痛い。
歯を食い縛り、その時が終わるのを待つ。
(やめてよ、もう良いよ…もう、もうやだよ)
腕がピクピクと痙攣し、筋が動く感覚が伝わる。
だが、一向に腕が動くことは無い。動かない癖に痛覚はある。必死に逃れようと肩をズラそうとする。
その瞬間に、勢いよく肩を掴まれ椅子に戻される。
「動かないでください。早く終わらせたいでしょ?」
治療役の女官が冷ややかに呟く。
終わらせたい。帰りたい。もう、ここにいるだけで全身が痛い。
「お願い!もうやだよ!お母さんに会わせて!」
「ダメです」
「なんで!何でな──」
突如右頬に衝撃が走る。
バチンッという音と同時に、顔が弾けたと錯覚する程の痛みがトレスを襲う。
勢いのまま、少年は椅子から転げ落ち地べたに這いつくばる。
「…チッ、うるさいガキね…」
視界が揺れる。物理的に受けた衝撃と、どうしようもないグチャグチャの感情が少年の心に追いつく。
目に熱いものが込み上げる。
「…お母さぁぁぁん!!!」
声を上げる。ただ、必死に声を上げる。
痛いとか、辛いとか、悲しいとか
もう何だかわからない。
何故泣いているのか、それすらも分からない。
「いたいよぉ….いたいよぉぉ…..」
少年は頭を抱えうずくまる。
その1日が終わるまで、少年はついぞ泣き止まなかった。
そして、女官から声を掛けられる事も全く無くなった。