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Vol.1 第一章 2話 辛いよ お母さん

藁とツタの葉で出来た布団という名の敷物。

床はまるで巨大な影が場を覆っていると錯覚する程のの樹木。

巨大な発光する美しい岩石を、その木の根が侵食することで出来た天然の城。

エルフ王の住居、アルフヘイムの樹洞。


この神秘的な天然の城の小さな一室。

それが、少年に与えられた世界だった。

モソモソと、黒い大きな葉っぱに乗せられた質素な食べ物を口に運ぶ少年。

その朝食に並ぶ者は、蒸したジャガイモと豆の盛り合わせ。

調味料は一切なく、ただ野菜の味を引き立たせた

徹底的に栄養のみを追求した緑一色のもの。

エルフとて、調味料や味付けを考えない訳ではない。

寧ろ、果実を元に作ったジャムや調味料。

それを元にした菓子などは、隣国でも非常に人気だ。

とりわけ、この国の特産品である果実酒は皇族が直々に買い求める程に人気が高い。


彼がこのような食事しか与えられないのには理由があった。


一つは彼の持つ、右腕麻痺という障害。

エルフは常に、”強い者こそ美しい”という価値観がある。

外見が美しいのは、もはや当たり前であり狩猟民族である彼らにとってもっとも異性へのアピールになるのは強さだった。

身体的なハンデは、それだけで彼に対する評価を決定付けるに十分すぎる理由だった。

人間が、清潔感のない人物を嫌うように。


もう一つが母親だ。

彼の母は、このアルフヘイムの出身ではない。

ここに住まう民族はエルフ種最強の雪妖精という民族だ。

エルフは余所者を嫌う。その、左右異なる不格好な瞳が彼が部外者の息子だという証明だ。


この二つの理由が、少年がこの国のエルフ達に疎まれる理由だ。


だが、表立って少年を迫害することは出来なかった。

何故なら彼は、血縁上

雪妖精の長

アルファリア・ラスグリム=アルフヘイム

かのエルフ王の直系の息子だったからだ。

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