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第二十六話 転生陰陽師は入学する①


 十二年間は本当に色んなことがあった。

 春は花見、夏は海水浴や山でバーベキュー、秋は収穫体験やキャンプ、冬はスキーや海外旅行などと言った体験を通じて許嫁たちと交友を深めた。


 三家は約束通り国内からの干渉を防いでくれているものの、親族や同格の賀茂かも鳥羽とば幸徳井かでいなど、『陰陽三大宗家』を争う十二家といった数多くの家からの干渉を防いでくれている。


 最近は国外からのアプローチもあるものの、『降魔十三家』からのアプローチは少なくとも俺の耳には届いていない。


歌……現代では言う和歌が点で駄目だった俺がまさかこんなにモテるなんて……夢にも思わなかった。


愛のない結婚は好ましいいとは思わないが程度は諦めている。前世の両親のように互いを尊敬しあうそんな関係を目指そうと思う。


 三人ともインドア派な俺に合わせてくれる良い許嫁で、芸事もたしなんでいるようだ。

 俺はというと小・中はサッカー、剣道、柔道、空手、弓道と言ったスポーツだけではなく、バンド活動にも興じ友と交友を深め中々の成績修めた。

 ほとんど全て前世で積み上げた経験を元に無双してしまったが……中々楽しかった。


 『魔術師免許』を取得した中学生からは公式に禍津日マガツヒと戦った。


 そして今日俺は、国立魔道科高校に入学する。

 通称『魔道高』は高校というよりも郊外型の大学に近い趣がある。


 高校は義務教育では無いものの日本のる高校進学率はほぼ100%と高校に通うのは常識だ。

 魔術師なんて潰しが効かない専門職だが、通わなければ仕事漬けにされるのは判っている。

 モラトリアム期間を得るために進学したといっていい。


 そのなことを考えていると春風が吹き抜ける。

 気持ちのいいというよりはやや肌寒い風が舞い上げたのは、桜の花弁だけではなかった。

 刹那の時間だが、重い冬服のスカートを巻き上げた強風は爽やかに吹き抜けていく。


 金髪の長いストレートヘアーは、さらさらとして日光を反射しながら風でなびき乱れ、女子生徒は鞄を持った手でお尻側を抑えた。

 だが一瞬だけ見えたパンツは、しっかりと目に焼き付いた。


 少女は周囲を見回すと、肌荒れの一つもない透けるような乳白色の肌を耳まで赤く染める。

カツカツとローファーをアスファルトに叩き付ける様に怒りを露わにしこちらに近づいて来る。


「――ねぇ君!」


 鈴を転がしたような声音で僕を呼ぶ。


 スッと通った鼻筋に長いまつ毛。

 大きくクリクリとしたアーモンド形の空色の瞳。美しさと愛くるしさを併せ持った顔が近づいた。


(綺麗だ……)


「わたくしのパンツ見たでしょ? 忘れてくれると嬉しいんだけど……」


(外国人? しかし日本語が上手いな……『千の言霊』か? この年齢で言霊の奥義を習得してるのならば才媛と言っていい。末恐ろしい娘だ……)


 どこか非実在的な雰囲気は、透明感のある妖精や天使のような少女はニッコリとしかし、どこかばつが悪そうなアンニュイな笑みを浮かべる。


「……」


 今世になってから美人に随分と耐性が付いたと思ったものの、日本字と違う異国の美人に見とれていると……少女は矢継ぎ早に言い訳をした。


「今日のパンツ可愛くないし……今日は寝坊しちゃったから上下別々で可愛くないのだし! ね? お願い!」


 一体全体どの辺が「ね? お願い!」なのか分からないけど……この場から解放してもらうには、「はい」と答えるしかなさそうだ。


「分かったいまのは忘れるから……」


「ありがとう! わたくしは――『PIPIPIPIPI』あ、電話だ! ごめんね」


 そう言うと彼女はどこかへ走り去っていく。


「なんだったんだあの人……」


「何してるのかな?」


 背後から聴き慣れた声が聞こえた。

 油を差していないブリキのようにぎこちなく後ろを振り返ると能面のような貼り付けた笑顔の土御門伊吹(つちみかどいぶき)がそこに居た。


「可愛い子ね知り合い?」


「初めて会ったよ……名前も知らない」


 疑いの目を向けないで欲しい。


「名前を名乗らないなんて失礼な異人ね……もし留学生なら二年生よね? 入学式の手伝いからしら? ……はっ!? もしかして直毘人狙いの女狐?」


「女狐って……それは狐付きの二人でしょ。二人ともお色直しは間に合った?」


「もちろんよ。瀬織せおりもなんとか間に合いそうね……」


「おまたせー」


 白金プラチナブロンドの長髪を靡かせる現れたのは陰陽三大宗家の一つ倉橋瀬織くらはしせおりがそこにいいた。


「もう遅い!」


「だって髪型が決まらなかったんだもん」


「可愛く言ってもダメなものはダメ。それに髪型が決まらないって、いつの時代のラブソングだよ。あい〇ょんでも今時そんな歌詞書かないよ……多分」


 ヘアスプレーとヘアアイロンで何分も格闘していただけあって、二人とも「元々芸能人かよ」と言いたくなる容姿が数割増しに見える。


「そんなことないと思うけどなぁ~」


「伊吹が新入生代表の挨拶するんでしょ? きっと先生方も困ってるって……」


 初めて登校もあって、入学式から遅刻の危機であった。温暖な春の陽気の中 “ブレザー” を着てしかも走ってたせいかかなり暑い。

 周囲には僕達と同じ新一年生が歩いているものの、少しだけ場違いな気持ちなる。

 

 美男美女が多く、胸元と腰回りをやたら強調したハイセンスな制服を皆着こなして見えるからだ。

 真新しいブレザーに、首元は鮮やなネクタイやリボン、スカーフとさまざまでさすがは、女子人気の高い学校だけはある。

 周囲をキョロキョロと観察する不審者ムーブをしてしまうのは仕方がないといえる。


 それに……


「なあ、あの子達可愛くないか?」

「うっわ! 金髪美少女と銀髪美少女しかも二人も巨乳とかエッロ!」

「スタイルもいいし、超美人……」


 美人で巨乳おまけに美人な二人は良く目立つ。



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