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第二十三話 転生陰陽師は『天呪』に目覚める

 父親に負けた。

 身体能力差を考えれば当然の結果だが、呪符を使う前に倒されたのは想定外だった。

 あの日から魔力のコントロールと体作りに精をだした。


 当家の道場には門弟である他家の子弟が通い術を学んでいる。

 祖父を含む親族は出稽古や出張と称して、各地に出向いているようだ。


 俺はと言うと年上の門弟にシバかれている。

 剣を振るう時も「正しい姿勢で正しい力で剣を振るう」ことを教え込まれ、間違える度に厳しい指導が入った。


 門弟の話によると剣の適合者アデプタと呼ばれる名家は数多い。鎌倉以来、朝廷から独立しおよそ千年近くもの長きにわたり政治をしてきたのが武士だからとうぜん呪殺などを警戒する。


 その過程で生れたのが忍術や武家の魔術だ。


 魔術の形体で分けるならば、日本の魔術は『朝廷』と『武家』に分かれることになる。


 日本の魔術は日本で育まれた思想と大陸の思想を融合した独自のものだが、それを扱う者の身分や目的によって、改良が繰り返されてきた。

 だからこそ伝統や威力を重んじ、強力な血統を多数擁する『朝廷』と、即戦闘に特化の術を好む『武家』では当然、その呪術の扱いに違いが生じるのである。 


 そんなことを考えながら兄弟子に袈裟斬りを放つ。


「はぁッ!」


 しかし大人と子供の体格差があれば魔力を用いない限り軽くいなされる。

 その時だった。

 兄弟子の竹刀を破壊し籠手を打った。


バシン。


「直毘人さま魔術使いました?」


「いや……」


 しかし俺はその現象を知っている……。


「天呪だ! 師範と同じく天呪持ちだ!」


 『天呪』とは、天上に住まう神仏が世を呪うすべであり、本来は神仏の起こす奇跡全般を指す。

 俺の時代でも専ら人間に与えられた『異能』のことを指す。それはこの時代でも変わっていないようだ。


「親子二代で天呪持ちなんて凄ぇ!」


「子供の膂力で竹刀を壊すなんて攻撃力が高いんだな……」


 と皆が誉めそやす。


「しかしどうして天呪が発動したんだ?」


「『闘気とうき』や『合気あいき』などの言葉が示すように魔力は、極めたアスリートなども発することがある現象だ」


「なるほどなあ……」


 俺は天呪の考察を進める。 


「恐らく接触することで対象を攻撃する天呪……弱くないか?」


 俺はその日から基礎訓練を繰り返した。

 魔術は前世で仕上げた。だから今世は体作りに励むことにした。

 木刀や真剣を振り体に動きを沁み込ませる。

 走ったり泳ぐことで持久力と肺、心臓を鍛える。


 それ以外の時間は兄弟子たちに可愛がられ、入れ替わり立ち代わり稽古を付けてくれる。

 集中力の保ち方と戦場での戦い方を実戦形式で学ぶことができる。

 『武家』の適合者アデプタは魔力量を武器や体で補う。

 幾ら名門である吉田でも基礎は変わらない。

 

 特に門弟に多い一般家庭出身者や、魔力量の少ない適合者アデプタは魔力や体力、集中力、気力と言った複合的な戦闘体力の管理が特に重要になる。


 魔力を絡めた攻防――何より魔術の扱いを実戦形式で学ぶのが目的だ。

 さすがに未就学児歳を禍津日マガツヒと戦わせることはしないが、日に日に訓練の時間は増え、生傷や青あざなどが増えてきた。


 そして俺の『天呪』は予想通り「触れたモノに斬撃を与える」シンプルな能力だった。

 俺は『天呪』を『皓刃銀シロハガネ』と名付けた。

 当面の目標は「触れたモノに斬撃を与える」この能力を強化することを目標に訓練にひたすら『天呪』を発動し、余暇は訓練に励んだ。


 幸い魔力量は、伸びしろがある今でも前世よりもの多い。

 魔力コントロールは前世の経験分で問題なく、出力の調節にももう慣れた。魔力効率も問題ない。

 あとは『天呪』が馴染み発展・派生させた技を思いつくまで鍛えるのみだ。


 陰陽師の同僚にも、敵にも『天呪』の使い手は居た。

 強力な能力はそれさえ崩せば戦闘が楽になるものの、シンプルな能力は崩すことが難しく戦い辛かった。


俺もそんな戦い方を身に着けたい。いずれ来る戦いに備えて……


 俺が転生したのは、『いずれ来る現世に巣くう幾柱もの魔が復活し、活動を活発化させ現世を地獄に変える』その魔――禍津日マガツヒを打ち滅ぼし、この国を……いや世界を守るためだ。


 許嫁の子達に魔術を教えながら俺の幼年期は過ぎて行った。




 かくして、転生した陰陽師は適合者アデプタとなりプロローグは終わる。そして世界では今まで身を潜め暗躍してた者達が動きだし世界ものがたりが動き始める。


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