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第二十話 転生陰陽師は神に参る


 乗って来た車で寺社に向かう。

 行きとはこなり禍津日マガツヒにも怨霊にも合うことはなかった。

 駐車場からトコトコと歩いていくと目的地の寺社が目に入った。

 今日11月15日ということもあって沢山の人影があった。

 晴れ着の子もいれば、私服で境内を走り回る子供もいる。

 みんな俺達と同じ目的で参拝しに来たのだろう。


 鳥居を潜る前に一礼し、参道の中央を避けて拝殿はいでんに向けて歩みを進める。

 手水舎ちょうずやの水で身を清め穢れを祓い、さっそく拝殿はいでんで参拝する鈴を鳴らして賽銭を投げ入れ、二礼二拍手一礼をする。


 神仏に無闇に願うことをしてはいけない。

 日頃の感謝とこれからも見守ってほしいという願いや、目標を宣言するにとどめるべきと言うのが陰陽師の常識だ。


下手に神仏との契約――【神契しんけい】を結ぶ訳けには行かないからな……


大山咋神(オオヤマクイノカミ)様へご挨拶できたか」


「うん、しっかり伝えてきたよ」


 この神社が祀っているのは、農耕と治水(工事)や醸造を司る山神である『大山咋神(オオヤマクイノカミ)』という。

 比叡山と京都市一帯の山の地主神でもあり、比叡山延暦寺ひえいざんえんりゃくじの結界の守る守護神であり、陰陽道との因縁も深いという。


 吉田家では信仰の対象ではないものの陰陽道では、インディーズバンドのトップぐらい有名な神仏だ。例えが悪いかもしれないな……


「みんな神様に挨拶できて偉いぞ……次は幣殿へいでんで挨拶だ」


「「「えー」」」


 三人は不満なようだが現代で言えばインターフォンで、訪問販売の営業をしただけ買ってもらうために説明をしなければいけいない状況だ。


 そんなわけで俺達は拝殿の奥、幣殿へいでんへと足を踏み入れた。


「お待ちしておりました」


「こちら少ないですが……」


 父達が懐から取り出した封筒は分厚かった。

 適合者アデプタともなれば、神仏の影響をうけているためこういう時に感謝を示す必要があるのだろう。

 父母が受付を済ませ俺達は拝殿の中へ入る。


 七十代と思われる神主は、普段着である斎服さいふくではなく平安時代と同じ正装である装束を着ている。

 また袴も今までの巫女や神職とことなり、紫色をしている。

 禁色の一つという印象があるためきっと位が高いのだろう。 


「お待ちしておりました」


 七十代と思われる神主は、普段着である斎服さいふくではなく平安時代と同じ正装である装束を着ている。

 また袴も今までの巫女や神職とことなり、紫色をしている。

 禁色の一つという印象があるためきっと位が高いのだろう。


「こちら少ないですが……」


 父達が懐から取り出した封筒は分厚かった。

 適合者アデプタともなれば、神仏の影響をうけているためこういう時に感謝を示す必要があるのだろう。

 父母が受付を済ませ俺達は拝殿の中へ入る。


「とんでもございません。さあ儀式を執り行いますので中でお待ちください」


 通された部屋は拝殿の奥の幣殿へいでんと呼ばれる供え物をする空間だった。

 構造的には本殿と拝殿の間の部分になる。

 他にも御饌殿みけでんという神仏の台所や神楽殿・舞殿という神楽や舞を奉納する部屋、祓殿や直会殿など多種多様な部屋がある。


 これらの部屋の多くは玉串料で入れる部屋が変わるいわばVIPシステムを採用している。

 古い時代の日本の様式を再現しているため神社には畳が敷かれた部屋は少なく板間が多い。


 御幣を中心に、鯛や昆布、酒、麦酒(ビール)、米俵などの供物が捧げられている。

 俺達は椅子に腰かけた。

 平安時代は正座なんて文化なかったから正直ありがたい。


 ………。 


 視線を感じる。

 大人だけではない。子供からもだ。


「『佩刀護身会(はいとうごしんかい)』の連中だな……」


「『佩刀護身会』?」


「『適合者アデプタ』が大きく二つに別けられることは説明したな?」


「『武家』と『公家』だよね」


「そうだ。『武家』の中でも『親公家派』『反公家派』『日和見』に別けられる。『佩刀護身会』は『反公家派』が多く所属している集団で吉田家も会の役員なのだ……」


「……」


「理解したか? 吉田の老人を含む『佩刀護身会』からすれば900年以上政治を動かしてきた『武家』の立場を奪った『公家』が憎いんだろうな」


どう考えても裏切り者だ!! 父の話を聞く限り悪いのは『佩刀護身会』の立場も考えずに、公家系の陰陽三大宗家と婚約関係を結んだ俺達と、どう付き合っていいか計り兼ねているんだろう。


 宮司が祝詞のりとを奏上しスピーカーから和楽器の演奏が聞こえそれに合わせ巫女が舞を踊る。その後祓詞を奏上すると続けてボソボソ祝詞を唱える。

 神様へご挨拶する前に、お祓いをして現世の罪穢つみけがれを祓い清めなければならない。


 魔術師の家系は男子でも三歳で『七五三』を行う。

 魔力が目覚めれば禍津日マガツヒに狙われるから、魔除けの御札を貰ったり魔力を自覚する必要があるからだという。


 儀式は進んでいき順々に名前が呼ばれる。


「次、吉田直毘人」


「はい」


 返事をした俺は神饌を神前に供える。

 神饌と一緒に魔力を持つとされる髪も一緒に献上する。

 神仏に祈りを捧げる。

 その間も神主は祝詞を上げ続ける。


「――皇居並びに西東京の土地神である。大山咋神(オオヤマクイノカミ)さまこの稚児たちに加護をお与えください」


 と祝詞を締めくくった。


「お帰りの際は、こちらで禍津日マガツヒ除けの御守りと千歳飴をお配りします」


「これで外にも出られるわよ」


「やったー」


 七五三の目的はお守りのようだ。


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