第46社 女は怒らせたら怖い part2
そして、2時間後。法輪寺の前で再び集合した私たちが境内へ続く階段を上ると、織部先生から事前に話を聞いていた和尚さんが出迎えてくれた。
「ようこそ法輪寺へ」
「お手数をおかけして申し訳ないです」
一礼して謝ると、和尚さんは本堂の方へ小春を案内する。私たちは小春を待つ間、境内の中にある見晴台へ向かった。そこは京都市内の景色が一望でき、快晴の今日は京都タワーも遠くに見ることができる絶景スポットだった。
「綺麗だね~」
「こんな場所あったんですね」
「ねー。私も何回か来たことあるんだけど、ここは知らなかったな~」
私はボーッと景色を見ながら欠伸をかます。
昨日は結局色々あって、2時間しか寝てないから流石に眠いな……。確かこの後、お昼から学校あるんだっけ。いやそこは休みにしてほしいんだけど……。
すると、横にいた熾蓮が口を開いた。
「それにしても、課外実践ってめっちゃ大変やな」
「分かる。これからこれをほぼ毎回のようにやるんだよね……」
「そうやな。ま、ここまでの難易度は早々やってこうへんはずやから、もうちょい楽にはなるとは思うけどな」
先生言ったな? 信じるよ? 言質とったからね? 嘘ついたら針千本飲ませるよ?
先生の方をジト目で見ていると、これからの予定を確認しようということになったので、渋々先生の話に耳を傾ける。
そうこうして過ごしているうちに、小春がお堂の中から戻ってきたようだ。
『お待たせしました』
「その様子だともう大丈夫かな」
『えぇ。おかげさまで』
「ほな、千光寺の方に向かおか」
私たちは法輪寺の和尚さんにお礼を言って、千光寺の方へと向かった。またしても200段の階段を上がって境内の方に入ると、和尚さんのいる墓地の方へと進んでいく。
「いらっしゃいましたか」
「わざわざ準備までありがとうございます」
「いえいえ。簡易的なものでしたらすぐにできますので」
今日は簡易的なお墓で済ませて、後日しっかりしたものを建ててくれるらしい。先生によると、成仏するためであれば簡易的なものでも十分なようだ。小春は最後に私たちの方を向くと、深々と頭を下げた。
『本当に何から何までありがとうございました』
「これも代報者としての務めだからね。満足してくれたようで良かったよ」
『えぇ。これ以上ないくらい幸せです。改めて、皆さん本当にありがとうございました』
小春は私たちに向かってお礼を述べると、光に包まれて消えていった。
「よし、それじゃあ戻ろっか」
「だね」
私たちは再度和尚さんにお礼を言い、千光寺を後にして北桜神社に戻ってくる。
「皆さん、お疲れでした~」
「いや~、長かった……」
「これでもまだ1日も経ってないか……」
「んで、これから学校に戻るんよな?」
うげぇ……戻りたくないな。もう今日は休みで良いと思うんだけど。本来、昨日は祝日のはずなのにうちらよく頑張ったよ? ちょっとぐらい休ませてくれても良いじゃん。
しかし、先生は勿論、そんなことを許してくれるはずもなく、私たちは荷物を纏め上げると境内の鳥居へと向かった。
「それじゃあ、エル。今度こそちゃんと留守番しててね?」
「分かってるよ」
「人払いの結界とか貼らないでよ? 後、依頼が来たら一旦、こっちに報告してね?」
「はいはい。分かってる分かってる。って、君はボクの母親か! どっちかと言えば保護者はボクの方――」
「その減らず口、塞いでやろうか? こっちはいつでもあんたの設定、変更できるんだからね?」
私はエルのほっぺを掴みながら、圧をかける。
本当に、今度なんかやらかしたらガチで設定変更してやる。
「ふ、ふひはへんへひは……」
「秋葉さんも怒ったらなかなかに怖いですね」
「俺らも気をつけなあかんな……」
「はぁ……。それじゃあ頼んだよ~」
私たちはエルに別れを告げると、そのまま鳥居を潜って嵐山駅の方へと向かうのだった。
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