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第41社 主役もとい先生は遅れてやってくる

 私が後ろを振り向くと、そこには織部先生がいた。どうやら無事にあの2人を神社まで送り届けてくれたようだ。


「遅いでしのぶちゃん!」

「誰がしのぶちゃんや! 教師を呼び捨てで呼ぶ奴があるかいな」

「え、でもしのぶちゃん可愛いですね」

「確かにそうだね」


 私を含めた4人は先生の元へ駆け寄る。全員が集まるのを確認すると、全員の周りに紅葉を展開させた。

 

 多分、この実習が終わったら、しのぶちゃん呼びがクラス内で広まるんだろうな~。いや~、楽しみ楽しみ。


 先生は私たちの発言に溜息をもらすと、続けてこう言った。


「ほんで、今どういう状況なんか説明してみぃ」

「いや、説明と言われても、先生ずっとアタシらを見てたよな?」

「ほーん、なんで分かったんや?」

「じゃないと、『方法を教えたる』なんて言えねぇだろーが」

「あ、確かに。というか、なんでもっと早く来てくれなかったんですか?」


 薫は私の説明に納得しつつ、先生に対して質問を投げかける。

 

 確かに、もう少し早く現れてくれたら、私が溺れそうな展開にはならなかったと思うんだけど。


 そう思いながら、先生の答えを待つ。すると、観念したように話し始めた。

 

「いや~、君らが俺抜きでどれだけやれるか、茂みに隠れとった奴らの掃除しながら見とったんよ。まぁ、祈李にはバレてたけどな」

「ふふっ、結界内に先生が入ったときから気づいてましたよ~」

「それにしてもや。見てるぐらいやったら、手伝うてくれても良かったんとちゃう? 俺ら、結構えらい目に遭いそうやってんけど」


 そうだそうだ! 私なんか溺れ死ぬところだったんだよ⁉ んで、今もこうして攻撃を紅葉で弾きまくってる最中だし。


 内心で抗議の声を上げながら、先生の返答を待つ。

 

「そしたら君らの任務にならんやろうが」

「ア、ソウデスカ」


 うぐっ。これは正論ですな。そもそもこの実習は私たちのためにあるんだし。先生はあくまで引率とサポートだからね。

 

「それで、憑りついてるやつらを祓うにはどうすれば良いんだよ?」

「そうやな。ひとまず、あいつの動きを封じんことには話すに話せへんから――」

 

 先生はそう言いながら、印を組み始める。見たこともない印だと思いながら手の動きを見ていると、烈級祟魔の動きを封じるように正方形の結界が出現した。烈級祟魔は出ようと髪束で攻撃していくが、結界には1つもヒビが入っていない。


「え、凄い!」

「あいつを封じよった」

「これで邪魔は入らんな。秋葉、もうええで」

「おう」


 先生にそう言われると、指パッチンで周囲を囲っていた紅葉を消す。それを確認してから、先生は烈級祟魔の方を見ながら話し始めた。


「まず、訂正しなあかんことから先に言うで」

「訂正……ですか?」

「あぁ。あいつの階級、資料には烈って書いてあったやろ? あれはハッタリで、ホンマは(さん)……いや、もう(きょう)になりかけてるかもしれんな」

「……マジよ」

「どおりで強いわけだ……」


 先生の言葉に私と薫が呟く。確か、惨は烈の1つ上。凶に至っては烈よりもう2つ上の階級で、2年生の人たちがやっと倒せるレベルだ。到底、1年生の初任務で対峙していい相手じゃない。


「このことは後で上の方に報告しとくさかい、そこは安心してもらってええ。んで、次に憑りついてる奴らを祓う方法やな。ここからは惨級(さんきゅう)祟魔に名称を変えるで」

「……それで、どうすれば良いんです?」

「ほら、惨級祟魔の方よう視たら青白く光ってるやつがあるやろ? 授業でも習ったと思うけど、あれが祟魔の核となる祟核(すいかく)や」


 私たちは先生の指差す方向に目を向ける。


 確かあれって、さっき祈李が言ってくれてたやつだよね。あれが祟核か。実際に視るのは初めてだけど、なんか黒い靄みたいなものがかかってない? そういや、どっかで似たようなの見たことある気が……。


「あそこに黒い靄がかかってるん分かるか? あれが瘴気や。主にその土地の邪気とか祟魔から発生するもんなんやけど、あれが元の祟魔を凶暴化させとる。ここまでは概ね祈李が言うてたとおりやな」


 あれがよくアニメとか漫画で出てくる瘴気ってやつか。実在したんだね……。


「んで、瘴気を祓う方法は色々あるんやけど、まぁあのぐらいやったら簡易的な方法で何とかなるわ。君らまだ祓力は残っとるか?」


 そう訊かれた私たちは、「まだ十分残っている」と答える。先生は少し考えてから、こう言った。


「よし、ほんなら、その祓力をありったけ祟核に向かって注ぎ込んだらええだけや」

「だけ……?」

「いや、それが難しいんやろがい」

「まぁ、ものは試しや。誰かやってみぃ」

 

 だけって何。だけって! そもそも近づくのすら難しいんだよ⁉ 先生、それ分かってる⁉ しかも、注ぎ込むったってどうしたらいいの。

 

 文句を垂れながらも、誰が良いか決めるために口を開く。


「どうする?」

「んー、そうだね。ここはやっぱり、リーダーである秋葉じゃない?」

「せやな」「ですね」

「いや、なんでだよ⁉」

 

 こいつら……後でどうなっても知らないからね? 私、この中じゃ1番不器用だよ⁉ 確認とってないから知らないけどさ。


 少し不満そうな表情を浮かべていると、先生が肩に手を置いてきた。私は先生の方を見上げる。


「ま、失敗したらしたで、俺が対処したるさかい大丈夫やって」

「何が大丈夫だよ……」

「ほんなら、どう秋葉を祟魔の本体までたどり着かせるか考えよか」


 先生がそう言うと、私たちは今後の戦略について話し始めるのだった。

 

 

 

 

 


 

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