第2社 ぼっちにとって友達は神様的存在
過去へ遡り2年前の春。中学1年生の私は、祖母の十日祭――仏教で言うところの初七日のせいで、しばらく学校に行けていなかった。小学校のときと同様、1人出遅れた私は、今日初めて学校に足を運んだ。小学校のときはずっとぼっちだったので、今回は絶対にぼっちを避けなければいけない。
そう意気込んで教室に入ったのだが、それは杞憂に終わった。席についた途端、クラスメイトの1人が話しかけてくれたからだ。
自分から話しかけに行くのが絶望的に下手な私は、そのとき天を仰ぎそうになった。ギリギリで踏みとどまった自分は偉いと思う。その後、クラスメイトの子と話すうちに気が合い、無事に友達となることに成功した。
授業が終わり、あ~、友達って良いな~! と、テンション爆上がりの状態で家までの道を歩いていたら、私はあることを思い出した。
そういや私、おばあちゃんが亡くなったからもう独りなんだった。
先ほどまでのテンションはどこに行ったんだというぐらい、テンションが一気に下がり始める。母と父は私が幼いころに亡くなり、ずっと祖母に育てられてきた。けど、今はその祖母もいない。まだ、中学生1年生という身で一体どう生きれば良いのか。つい先日まで小学生だった私には、当然見当もつかなかった。
施設に行けと言われればそれまでだし、葬儀の際に何人かの大人たちからそう言われたが、私は今の家が好きなので離れたくない。
となると、残るは1つ。祖母の昔からの知り合いで、自分も何度か会ったことのある獅子神というおじさんに頼るしかない。
葬儀の際に「何かあったらいつでも頼ってくれてかまわない」と言ってくれたし、さっそく帰ったら電話かけてみようかな。頼っても良い人には存分に頼らないともったいないしね!
そう思いながら歩いていると、渡月橋が見えてきた。この時期の嵐山は観光客でいっぱいなため、当然この辺りも人が多い。うんざりとした表情を浮かべながら、観光名所の1つである渡月橋を渡り始める。混雑していてなかなか前に進めない。仕方のないことだとは分かっているけど、一刻も早く家に帰りたいので、周りに聞こえない程度で舌打ちをする。
なんで嵐山ってこんなに人が多いんだろ。いや、観光地だからってのは分かってるんだけどさ。にしても多すぎでしょ。
内心、文句を垂れながら前に進むこと3分。やっと橋を渡り終えたので、一目散に家へと直行する。取り敢えず、帰ったら今後のことをおじさんに相談しよう。
歩くこと15分。山の麓に位置している家についた。私の家は神社なので、鳥居を潜って境内に入り、社家の方へと足を進める。
「やっとついた……。にしても、流石にキツイな。山道の坂登るの」
そういえば、渡月橋から学校までバスが通ってたはずだ。それに乗れば少しは楽になるだろうから、明日からはバスに乗っていこう。
そう決めると、通学鞄の中から鍵を探して玄関の鍵を開けた。
「ただいまー」
中に入るが、当然誰もいない。逆に誰かいる方がおかしいんだけど。靴を脱ぐと、真っ先に洗面台へと向かい、手洗いうがいを済ませる。こういうところは、しっかりするタイプだ。
授業中はサボってるけど。あれは仕方ない。つまらないのが悪いんだよ。
廊下を歩いた先に自室があるので、そこに向かう。が、ここである違和感を感じた。
「ん? なんだろ……。なんかいる……?」
まさか強盗とかじゃないよね? 私1人じゃ絶対対処できないけど、一応武器になるもの持っといた方がいっか……。
急いで掃除用具のある洗面所へ戻ると、箒を取り出し自室へ向かった。恐る恐る自室に近づき、扉を開けようとドアノブに手をかける。
落ち着け……。大丈夫。戦闘はアニメで何回も見てきたじゃん。流石にアニメのキャラまではいかないけど、それなりに戦えはする……と思う。
自分を落ち着かせてから、一気に扉を開ける。けど、中には誰もいない。どこかに隠れた可能性もあるので、一応警戒しながら中へと入っていく。だが、人の気配は感じない。
あれ? 気のせいか……? え、でもなんか感じたんだけど。
私は首を傾げる。周りを見回しても、特に変わった様子はない。けど、何かの気配はまだ微かに感じる。
『やぁやぁ、お邪魔してるよ』
「だ、誰⁉」
突然、頭の中に声が響いたので、箒を構える。相手の姿は見えないし、どこから話しかけているのかも分からないので、いっそう警戒を強める。
『そんなに警戒しなくても良いじゃん』
「いや、するわ! てか、こういうときは……っと」
私は、急いで制服のポケットに仕舞ってあったスマホを取り出した。そして、おじさんの番号に電話をかけるために、電話帳アプリのマークをタップする。
『ちょーっと待った!』
「見るからに不審者……。てか、姿も見えないやつに止められる筋合いないんですけど⁉」
『まぁまぁ、危害を加えるつもりはないからさ。ちょーっとだけ話聞いてよ。ね?』
頭に響いている声を聴いた私は、観念して相手の話を聞くことにするのだった。
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