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ともだちの魔法使い  作者: 楠羽毛
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知らない女

 結局、2限目も出席する気になれず、図書館のソファで昼まで過ごしてしまった。なにをするでもなく、気分が落ち込むにまかせて。必修の授業をさぼったのは初めてだ。午後は授業がないから、もう帰ってもいいのだが、動く気になれない。

 そういえば今日は、みちあるき同好会とやらの例会がある日だ。

 手持ちかばんの奥にくしゃくしゃに突っ込んであったちらしを確認する。例会は、昼休み。お弁当持ち込みで談話室。それから、午後ひまな人だけで延長戦。

 談話室ならば、人の出入りが多いから、まずはちょっと離れたところから様子をうかがってみても良い。気晴らしにちょうどいいかもしれない。

 ぐっと勢いをつけて、立ち上がる。

 なんとかして浮上しなければ。そう思った。



 生協でサンドイッチとサラダを買って、学生会館へ。談話室はオープンスペースで、菜月も何回か昼食をとりに来たことがある。

 会館の玄関が見えてきたあたりで、菜月はふと立ち止まった。

 チラシをくれた男がいる。

 あのあと、頑張って思いだしたのだが、たしかスギウラという名前。きれいにアイロンのかかったチェックのシャツ、ジーンズ、度の強そうな眼鏡に黒髪の短髪。背が高く、まじめそうな物腰の痩せた若者。

 そのとなりに、女。

 セルリアンブルーのブラウスに膝丈のスカート、薄手の上着をはおった、くちびるの赤い女。きれいにウェーブのかかった茶髪は肩の下まで。

 きゃらきゃらと、輝くように笑っていた。


 菜月はくるりときびすを返して、駅に向かって歩きだした。



「……あーぁ、」

 じんわりと涙がにじむ。

 自室、いつものベッドのうえ。ダースと目をあわせるのがこわくて、横に寝かせてある。泣くのを見られたくない。

 なぜ泣いているのか、自分でもわからない。何があったわけでもないのに。


 なにか、気晴らしをしよう。


 ふと思いついて、菜月は通学用の鞄からスマートフォンをとりだした。いつ入れたかも思いだせない、ほったらかしのSNSアプリを開く。

 つらつらつらっと投稿をながめてから、アプリを勧めてくれた友人にメッセージを送りかけて、手が止まる。なんだか、今は連絡をとりたくない。

 ため息。

 惰性で、そのままアプリの画面をスクロールさせる。ランダムに表示されたいくつかの投稿、それから、アカウント名をたどって、さらに何人かの投稿、画像、それからまた、別のアカウントの。気がつくと、一時間ばかり。

 やがて、考えが固まる。

「ねええ、ダース」

 ぱしゃっと自撮り。まずは、顔の下半分だけ。

「わたしもさ、こうして見ると、けっこうカワイイと思わない?」

 いいながら、ふたたびホーム画面に戻って、アプリを再起動する。

 なんだか、慣れない手つきで。

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