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ともだちの魔法使い  作者: 楠羽毛
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 気がつくと、菜月は斜面の下に、あおむけに倒れていた。心配げな美羽の顔が、すぐ目の前に。全身が草まみれで、痛い。頭がずきずきと痛む。

 半身をおこして、体の感覚をたしかめる。けがはなさそうだ。ずれてしまった眼鏡を外して、かけなおす。フレームが歪んでいなければいいが。

 いや、それよりも。

「……美羽、あなた、」

 夢であってくれ。

 何度も、口のなかでそうつぶやきながら、菜月は尋ねた。

「知ってる? 魔女がどうとか……、」

 美羽は、ぱちぱちと目をしばたかせてから、こともなげに頷いた。

「ああ、」

 あっけらかんとして、にこっと笑いさえしながら。

「莉子、魔女になったみたい。ナツちゃんも聞いたの?」



 帰宅すると、なぜか、ダースが庭に落ちていた。

 2階にある菜月の部屋、その窓のちょうど真下あたり。そばにある軽自動車のボンネットから転げ落ちたような姿勢で、門のきわに転がって。

 土まみれ。

 落ちていたところは、セメント敷きの駐車スペースだ。落下しただけで、そんなに土が付くはずがない。

 見上げる。窓が少し開いている。もちろん、開けた覚えはない。それに、窓の逆側の壁ぎわに、ベッドはあったはず。風が吹こうが地震があろうが、あそこから庭に落ちることはない。

 誰かが、落としたのだ。


 吹き上げるような怒りが、脳天をつきぬけていった。

 ダースを抱き上げて、足音も高らかに玄関へと駆けてゆく。


 結局、犯人はわからなかった。

 ダースは、次の日に母親が洗濯してくれた。



 一限目の終わり──


「……え、」

 すっと、その男が差し出してきたチラシを見て、菜月は小さく瞬きをした。

 男の名前は覚えていない。必修の授業に、いつもいるような気もする。何回か、教科書を忘れて見せてもらったこともある。

 チラシには、『みちあるき同好会』と表題がふってあった。その下に、『街のいろんな「変なもの」を、一緒に探してみませんか?』と。

 ここらあたりの地図と、数枚の写真が掲載されている。どうやら、サークルの勧誘らしい。

「……正式なサークルではないんだけど。毎週、学生会館の談話室で例会だから、よかったら、一度、見に来て。」

 少し、緊張したような早口で。

「……ありがとう。」

 菜月はそれだけ言って、チラシを受け取った。

 心臓が、やけに速く鳴っていた。

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