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ともだちの魔法使い  作者: 楠羽毛
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動かないぬいぐるみ

「なあんだろ、ねえ」

 菜月は、喋らないぬいぐるみを両手で抱きあげて、かすれる声で。

「何やってんだろねー、わたし。」

 ダースの、うごかない手を、ぎゅっと握りしめて。

「待ち合わせすっぽかしてサ。あやまりもしないで……もう、連絡もつかないんだけどさ。消しちゃったもん、ぜーんぶ」

 よそいきの、少し派手なワンピース。勢いでベッドに倒れ込んだので、皺でぐちゃぐちゃになっている。構うもんか。

「会ってみればさ、たぶんいい人でさ。うまくいくんだよね、きっと。でもさァ…….。やっぱ、だめだよ、わたし」

 ぱち、ぱち、とまばたき。涙がこぼれる。何度目をとじても、ダースの表情は変わらない。

「……ねえ、やっぱり、喋らないんだ。あんた……、」

 

 前は、ちゃんと頷いてくれたのに。


 そう、思いかけて、ふと気づく。 前っていつだ?

 前、ずっと前……、ダースがここにくる前?

 だれと?



 次の日から、菜月は大学へ行けなくなった。

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