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ともだちの魔法使い  作者: 楠羽毛
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まるポン

 翌日──


 菜月は、午前中まるまるを、部屋からでずに過ごした。ダースは喋らなかった。まるで、あたりまえのぬいぐるみのように、動かずにいた。

 午後になって、菜月は家族に聞いてまわった。『ダース』がいつから家にいたのか、自分ではどうしても思いだせない。

 昼食を食べながら、母にきく。

「知らない。ゲームセンターかなんかで取ってきたんじゃない?」

 大学へゆく電車のなかで、メッセンジャーアプリを使って、妹に。

『あれ、プライズでしょ』

『気がついたら家にあったような。自分でとったんじゃないの?』

『それか、美羽ちゃんかハル姉か』

 もうずっと会ってない叔母の名前がでるに至って、出どころの追求はいったん諦めた。そのかわり、大学のコンピュータ室で、タグの文字から検索をかけてみる。

 あった。

 メーカーのウェブサイトに、写真入りで。


”まるポン。ちょっとお茶目な、たぬきの女の子です。”


「……あらいぐまじゃないんだ」

 菜月は、おもわず声をあげて呟いた。

(ていうか、女の子だったんだ。)

 そっちのほうが、幾分かショックかもしれない。



 スマートフォンの通知音。

 このあいだ登録しておいたSNSだ。

 写真をアップしてすぐ、何件もくだらないメッセージが来ていたが、放置していた。なんとなくメッセージボックスを開いてみてすぐ、いま来たばかりの通知が目にとまる。


 ──○○市の大学生です。友達になりませんか?


 それから、長文の自己紹介。さらさらっと目を通して、プロフィール欄に飛んでみる。アイコンはアニメの美少女キャラクター。SNSの投稿欄は、日ごろの愚痴や、バイト先のお店のこと、読んだ漫画のことなんかで埋まっている。

『あ~彼女ほしい。卒業したい!』

 三日前の投稿に、そうあった。

 菜月はため息をついて、コンピュータ室をでた。今日はもう授業はない。ぐるぐると悩みながら歩いて、電車にのり、自宅の最寄り駅につくところで、ようやく、

 菜月は決心して、返信した。


 ──いいですよ。一度会いませんか?



 その日の夜は、ずっとSNSのメッセージをやりとりして過ごした。

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