99 クリスは潜入した場所で話を盗み聞く
私が指定された道を通ってゲードと呼ばれるクリスタルから秘密の場所につくと、嫌な臭いが充満していた。
どこかの牢屋らしく目の前には鉄格子が見えた。
鉄格子の扉は開いており周りの壁は綺麗に積まれた石なのがわかる。
身を隠す場所が無いので直ぐに牢から出てあたりを見回した。
牢がいくつもならんでおり、ゆっくりと眺めながら出口をさがす。
繋がれた魔物や骨などが散らばっている。
生きている魔物は私に興味はないのか、目があっても何もほえなく素通りできた。
「胸くそ悪いわね」
階段があり、その上から話声が聞こえてくる。
物影に隠れてみると、声からすると若い男性が二人。
「しかし先輩。暇っすね」
「ぼやくな、上は大変らしいぞ。この日のために敵に偽アジトを掴ませて、こっちは聖女様を捕まえたってな」
「ああ。さっきの寝ていた小さい子っすよね。それと顔の見えないアイツら闇夜のロープ……でしたっけ着ていた服。アイツら怖いっすけど」
「怖いってお前、闇夜のロープだったらお前も着るだろ」
マリーの事よね。
どこに捕まっているか話を聞きたい。
「ですけど顔が見えないっすよね、あいつら喋ったの聞いた事ないっすし。実行部隊じゃないっすから俺は着た事ないっすよ先輩はあるんっすか?」
「まぁな。にしても聖女様ねぇ……薬漬けらしいけどな……」
「薬といえば地下の魔物なんなんっすかアレ襲って来ないか怖いっすけど。それにダンジョン内だから魔物も沸くんすよね」
「任務の時に説明きいてたか? ここは大丈夫だろ、魔物よけの結界も張ってある。ほれ、そこのランプあるだろ。それが壊れない限り牢も壊れないし沸きもしない」
私は男達から隠れるように壁のランプを見る。
青白い光をともしてあのランプなのかわかった。
「へえ、先輩すごいっ物知りっすね。ってか聖女様で儲けるより、コレ売ったらいいんじゃねえっすか?」
私もそうおもう。
魔物が嫌いな匂い袋と、煙などは聞いた事あるけど、ランプは私も初めて見た。
「そう思うだろ? 元は迷宮産ではあるらしいけどな、それを真似て作ったのがアレよ。中身の液体なんだとおもう? 失敗作の元聖女の血よ」
「あー……それじゃ売れないっすよね。元って事はっすよね」
「そうだな、さっきの聖女様も失敗作だったらああなるだろうな」
なんとまぁ…………。
「さて、もう一戦するぞ」
「いいっすか? 給料なくなりますよ先輩」
「無くならねえよっ」
カードを切る音が聞こえてくる。
トランプかなにかだろう。
もう聞く事はない。私は階段を駆け上がり男二人の前に立つ。
手からカードを落とす男性と、私を見て武器を構える若い男性。
剣を鞘事抜いて相手を倒す、近くにあった紐でぐるぐる巻きにして口に喋れないように布で縛った。
二人の腕や肩を軽く剣で切って血を流させる。
「ふぁすけれ」「ほほあないで」
おそらく、助けてくれ、殺さないで。くれなのだろう。
私は無視して棚を探す。
黒いローブがありこれが、常闇のローブのだろう。
「質問に答えて、そしたら私は彼方を殺す事は無いわよ。これが常闇のローブ?」
「ふんふん」「ほうえす」
私はローブをぐるっと羽織る。
近くに姿見の鏡があるので確認すると、確かに顔の部分が黒い靄がかかっているようで外からは見えない感じになっていた。
魔法でもかかった服のようね。
これは便利だ、これで上の階でも怪しまれずに動ける。
「さて……と。少し眠ってもらうわよ」
私は転がっている二人に当身をあてた。
人間の急所を狙う事によって気絶する技だ。
「うごおおおおおおお!」「うぐういあいいあいあいあい」
…………私は苦しんでいる二人に当身をあてた。
人間には気絶する場所があるらしく、そこを骨が折れない程度で剣で叩く。
「うごうごぐお」「ゆふひえ」
……気絶しなくても暫く動けなさそうだしいいか。
武の達人でもないんだし、習った通りにはいかないのわよね。この辺は祖父が上手かったのよねぇ、悪人を一発で気絶させてたりしてたし。
「まっ運が良かったら生き残れるからね」
私は剣を抜いて横に一回転する。
再び剣を鞘にもどすと、青い光をだすランプは壊れ、中に入っていた青い液体は地面に消えて蒸発していった。
「これでこの辺は魔物も沸くし地下の奴らも元気になるんでしょ? 当然、このランプは一か所だけじゃないと思うけど」
「ふぁやくほああおふぁあ」「いひゃしにはや」
「何言ってるか知らないけど、私はこれ以上何もしないから」
もう一度当身を試して階段を上がる。
結果はいうまでもない、途中でフードをかぶって顔を隠した。
長い廊下があり、普通の貴族がすむ家にもみえる。でも窓ガラスから移る景色は青いランプが一定間隔で置かれており、その周りも岩肌などが見えている。
さらにその付近ではスケルトンや、触手の生えた魔物などがうろうろしてはこっちの様子をみているような感じが見えた。
魔物は私に気づくとこちらに来ようとしているが、青い光が放つランプから先には入ってこない。
「やっぱり、話通り迷宮の中なのね」
巨大な玄関ホールにつくと私同じ常闇のローブを着た人間が五人ほど固まっている。
廊下から来る私をみては気にする事もなく、その集団は動かない。
いや、この集団を素通りして二階や三階は見に行けないわよね……どうしよう。
「散々でしたわね……アジトの二つをつぶすためになるとは……」
小さい声であるがしっかりと聞き取れる声で私は振り向く。
別の部屋からサンドリア教会のアンネリーゼが現れた。
彼女はフードを外して私を含めたローブ姿の人間をみる。
アンゼリーゼの隣にも同じ常闇のローブを着た人間が二人立っていて、アンネリーゼが手を叩くと一斉に膝をついたので、私もあわてて膝をついた。
「いちにーさんっと六体ですが、十体送った死霊兵ですが四体やられたという事は、中々大変だったのですね。でも戻ってきたという事は成功したのでしょう、あの小生意気なブスの冒険者も死んだという事です。クロエも命令通り動いてくれたようですね、ちょっと精霊の力が使えるからと死霊兵にせず拾ったかいがありました。あなた達、あの聖女もどきはさらってきましたわよね?」
一体? 一人が前にでて頷くと、アンネリーゼは上機嫌な笑みを浮かべる。
「ふっふっふ、これで私も本国に帰れる……ふっふっふ……」
上機嫌なアンネリーゼはフードを外したままに階段を上ろうとしてる。
どうする、今なら背後から一気にいけそうだけど……問題は周りの奴よね。死霊兵って言ってたし前回の指輪みたいな奴かしら。
騒ぎを起こしたら逃げられる可能性もあるし……アンネリーゼが逃げるとマリーの場所がわからない、それだけは避けたい。
周りのフード姿の六人は一切動かないし、やっぱ人間じゃないわよね。
「あっそうですわ!」
アンネーリゼが突然振り向いたので心臓が飛び出るかと思った。
「命令を忘れてましたね……私の護衛に二体、そうね……そこと、そこ。後はいつも通り屋敷の警備に。はぁ死霊兵の補充もしないといけないし忙しくて参りますわね。さて聖女様には頑張って稼いで貰いましょう。ふっふっふ今度は邪魔されません事ですわよ」
驚きのあまり声が出そうになった。
だって指名されたし、私ともう一体を以外がそれぞれ離れていく、私は命令された通り左後ろにばれない様に付いていった。
丁度いい、このままマリーの所まで案内してもらおう。
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