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豪傑令嬢は追放されても落ちぶれない~聖女の立ち位置と王子は譲るんで自由をください~  作者: えん@雑記
三部

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98/131

98 襲撃されたクリスとさらわれた子

 作戦は今夜らしく、アルベルトもジョンも部屋から出て行った。

 日も傾き窓からみえる景色が夜になり、カーテンが途中で食事を運んでくれたメイドさんによって閉められる。

 残ったのは未だ力が半分ほどしか出ない私と、ここ数時間一切瞬きしないで監視してくるクロエと一緒。いや不気味すぎる。

 


「いい加減、怖いんですけど」

「おー何も怖くないデース」

「怖いわよ」



 仕方がなく横を向いて本を読むんだけど、背中に視線がつきささるささる。

 魔法の照明のおかけで夜でも部屋の中は明るい。

 その照明が暗くなる。



「何っ!」



 ガラスが割れる音、女性や男性の悲鳴が聞こえ屋敷全体が煩くなっている。

 私は暗闇の中自分の剣を探しベッドから這い出た、足がよろけて壁に手をつくとクロエが私を黙ってみている。



「怖いわよ……」



 耳元でクロエのしっかりした声で、

「知ってますかデス? 人工聖女……作ったのはサンドリア教会の暗部デスヨー」

 と喋ってきた。



「はっ?」



 私はシーツを引っ張るとクロエにかぶせ距離をとる。

 ベッドを挟んで対峙した。



「この騒ぎでマリーチャンは連れ去れてマースデース。判明されてない場所で人体実験タノシイデースネー」

「よくわからないけど……敵ってわけね」

「私が受けた命令は・・(監視)する事デース」

「意味の解らない事言ってるんじゃない!」



 私が剣をふってクロエをかぶせたシーツを突く。

 弾力のある感触で剣がはじかれる。

 シーツがめくれると両手を合わせるようにしたクロエが微笑んでいた。

 手のひらサイズの宝石に似た何かかクロエの周りに沢山浮いていた。



「精霊の盾デース。小さな精霊の力を借りて剣を防ぐデース」

「しゃらくさいっ! ですわよ!」



 斬れない物なんて無い!

 気合と共に連撃を加える。



「ダンスデース。ワルツは得意デース。アハハハハハ」



 足元がふらつく、剣をふるも小さい盾にふさがれる。



「退きなさい!」



 こんなデスデス女をさっさと排除してマリーの部屋に行かないといけない。

 にも関わらず、扉の前から離れようとしない。



「あんたみたいな雑魚に構ってられないですわよ!」

「ほらほら、マリーちゃんがコロコロされますデース」

「貴女なんて、本調子だったら一発なんだからっ!」



 ベッドを挟んで再び距離を取る。

 クロエの周りに小さい盾が無数に表れ、一定の速度でぐるぐると回っていて、絶対通さないと意志があふれてる。



「どうして、マリーちゃんを助けたいのデース? 不幸な人間は沢山いるデース。

 全部を助けるつもりデース?」

「関わったからよ……」

「ではかかわった人間を全部助けるのですか? できるわけも無いのに」

「…………でしょうね」



 そんなの言われなくてもわかっている。

 いちいち感の触る女性だ。



「落ち着けクリス・コーネリア。戯言に耳を貸すな。私はなぜ剣を選んだのよ。後悔をしないため」



 別に私だって最初から剣を握って生まれたわけじゃない。

 祖父や兄が面白がって教えてくれたのが最初だ。普通の貴族ならそこで終わる。

 小さい子が泣いている、私と背も変わらない子が倒れている。

 でもその子はいなく、私は生きている。



「何を言っているのデース?」



 無駄な会話はしない。

 私の剣が軽いというのなら速さで勝負だ。


 一気に間合いを詰めた。

 私の剣で小さい盾を一個目を吹き飛ばす。



「おーやるデース。でも風の盾は千はあるデスヨー」

「だったら全部はじくわよ!」



 ◇◇◇



「どうよ全部はじいたわよ」

「流石デース」

「もう一度言うわ。退きなさい」

「残念ですけど、時間切れデース、音聞こえませんよね?」



 ちっ。


 クロエは扉の前から一歩横に離れた。


 殺気もないクロエに構ってられない、私を殺そうと思えば殺せたはずなのに一歩引くのならもう無視だ。


 私は扉を力強く開けて廊下にでる、静かになった廊下をあるき他の部屋を開けていく。

 メイドや武器を持った人たちが寝ている。



「寝てる? どうして……」

「精霊と睡眠薬の合わせ技デース」



 クロエが後ろから付いてくる。

 なんなんだコイツは。



「監視の命令デース」

「監視ってあんた私の邪魔したわよね?」

「おー精霊の力でクリスさんの部屋くるはずの睡眠風を避けてあげたのに悲しいデース」



 …………アンタの事情なんて知らないわよ。

 いくつかの部屋を回るとマリーが居たらしい部屋がわかった。

 大量のポーションのビンが置いてあり、小さい子供が寝ていたようなベッドがあるからだ。



 扉を乱暴に絞めると、屋敷からでる。



「どこに行く気デース?」

「探すに決まってるっ!」

「監視が命令デース」

「ってかついて来ないでよ。命令、命令ってクロエあんた命令がないと動けない人形なわけっ?」




 屋敷をでて馬がいる場所を目指す。

 起きてる馬を探しながらクロエと一緒に動く。

 手前につないである馬はどれもこれも足を崩して寝ていた。



「危険区域封鎖迷宮、地下六十層。そこが本命です」

「は?」



 最初はクロエとわからなくて、誰か違う人が話しかけて来たのかと思った。

 でも振り向くと、いつものデスデスでなく普通に私に話しかけて来たのがわかった。

 どういう事、いや今は――――。



「行き方は?」

「この奥に一頭眠らされてない馬がいます。それに乗りここから西にある下水へ。手前から七つ目の十字路を左に曲がった先にある部屋にポータルがあります。

 そこから入って三十八個あるポータル部屋につきますので、その中の八番目、二十七番目、三十八番目が通じてますね」



 私はその答えに何も言わずに、納屋の奥へとすすむ。

 クロエの言う通り、奥の納屋に一頭だけ寝ていない馬がいた。ご丁寧にクラまでついている。

 すぐに飛び乗ると、腕を組んで私を見ては優しい笑顔をみせるクロエと目が合う。



「礼は言わないわよ。監視はもういいの?」

「気にしないで下さいデース。クリスさんは見失ったのデース…………と説明しておきますし」



 私は馬の手綱を握って小さい納屋から月明かりの空にでる。

 ぐるりと回って道に出る前にちらっと後ろを向いた。


 背後でクロエの小さい声で、

「女神アルティナの加護を、女神アルティナは聖女を見捨てません」

 と聞こえて来た。


 

 女神アルティナねぇ色々と聞きたい事はあるけど、私は馬を走らせた。

 マリー……絶対助けるからね。


お読みくださりありがとうございます!


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[一言] 敵か?味方か?謎のクロエ! 「おー信じてもらえないのは悲しいデース」 そういうとこだぞ!
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