93 粛清されるべきデース
街の中を適当に散歩する。
さっきの騒動も忘れマリーはくるくると回っては色んなお店を見ている。
お店通りでもいうのか、左右に様々な店が並び賑わいを見せていた。
私もちょっと商品を手に取ってみた、マリーの服も買ってあげないといけないわね。
ちょっとフリルがついた可愛い服を見るとお値段が金貨二枚。
帽子と日傘もほしいわね、ハンカチも新しいのあげたいし、合わせて金貨七枚って所か。
「マリー欲しい物があったらいいなさいね」
「ひゃい」
私が子供服のエリアにいって物色するとマリーはまだ同じ場所にいた。
古い本が売っておりどれでも銀貨一枚。と、いう安いのか高いのか微妙なコーナーで立ち読みをしていた。
近くにいた店主は、煙草をふかしてやる気無さそうにぼーっとしている。
「欲しいのあった?」
「ひゃっ、な、ないです」
ここまで解りやすい嘘も珍しいわね。
「クリスおねーさん悲しいわ。マリーはもう家族と同じよ、遠慮はなし!」
「かぞくですか……」
何か懐かしいわね。昔アンナにも同じ事を言ったような気もする。
まぁ家族よ! っていって直ぐに打ち解けるとかはないけどね。それでも、ずーっと塞いでいたアンナが徐々に打ち解けてくれたっけ。
マリーもそうなればいいな、と思った提案だ。
ええっと何の本が欲しいのかしら。
「魔力とマナ。その下にあるのが神聖魔法と禁魔法、魔族と神族……随分難しい物よむわね」
「ひゃい! 本がぴかーって光っていて、もじがあたまの中に入るんです!」
私はマリーから本を奪うとわきに抱える。
「安い物よ他にも欲しい本あったら言ってね」
「あ、あのお金ないですっ!」
「これから稼げばいいし、心配しないの」
私もついでに古本のタイトルを眺める。
絵で見る男同士のまぐわい。嫁にいびられる継母、義理の息子と禁断の愛。
五秒で使える謎の草辞典。などなど……。
欲しい…………いやでも、子供が見てる前で手に取るわけには。
本と本の間に挟めば問題ないわよね? すばやく間に挟むとすぐに会計に向かう。
「これちょうだい!」
「へい…………ええっと、一冊目が魔力とマナ。二冊目が絵でわかる男――」
「全部で七冊! お釣りはいらないわ!」
私は金貨を一枚だすと店主を黙らせる。
マリーを見ると本をまだ眺めている最中だ。
こんな本買ってるのを見られるは恥ずかしい……ってか本のタイトルを読むな!
「…………毎度」
空気を読んだ店主は金貨を閉まって煙草をふかし始める。
私は直ぐに本を収納ボックスへと閉まった。セーフ!
「クリスおねーさん、もう欲しいのはないです」
「そ、そう?」
突然声をかけられて心臓が飛び出るかと思ったわ。
私が会計をすませると古本を売っている場所にもちらほらと人が増えて来た。
私はマリーの手を握って次の店に行こうとすると、青白い神官服を着た女性が近くに寄ってきた。
「教会にはもっとエグイ本あるデース」
「は? 全然興味ないですしっ! な、何のことでしょうかぁ」
「ノンノン、欲望に忠実なのはスバラシイデース。クリス」
私はマリーを自分の背後へとそっと移動させて、神官服を着た女性を改めてみる。
肌は褐色でフードの隙間からみえる髪は濃い紫色だ。
身長は女性の平均って所で私より低い、武器になるような剣は見えないが、魔法が飛んで来たらまずいわね。
「オー怖い顔デース」
「名前……名乗ってないわよね」
「もちろんデース」
どうするかなー。
「一応要件は?」
「噂通りな女デース。後ろの子を迎えに来たデース」
マリーは私の手をぎゅっとにぎる。
「親だったら喜んで帰すけど……違うわよね?」
「似たようなモノデース」
うん、怪しさ百パーセントよね。
「断る」
私が断言すると、お客思った人たちが武器をを持って囲んで来た。
古本屋の店主に店前で暴れる事になるわね。と思って視線を向けると、古本屋の店主も武器を持って立ち上がる、お前もかっ!
一応可能性を考えて古本屋の店主に質問を投げかける。
「もしかして助太刀してくれるとか?」
「…………」
古本屋の店主は私に突然斬りかかる。
やっぱり味方ではないわよねぇ。
上半身を使って最初の一撃をかわす、そのままブリッジをする感覚で足で古本屋の店主の顎を蹴った。
くるっと一回転して、足元にいるマリーをひょい。っと、左手で抱き上げ古本屋の店主がもっていた剣を右手に持つ。
「いきなり襲ってきたって事は死んでも文句はないわよね?」
「違いマース。戦いに来たんじゃないデース」
「周りはそうでもないみたいよ?」
デスデス女性が言うと、周りの人間はデスデス女性にも斬りかかっていく。
「風の精霊。助けるデース!」
デスデス女性が手をかざすと古本と一緒に数人の男が吹っ飛ぶ。
その間にも私に斬りかかってくる奴を私は返り討ちにしていく、マリーの前だし斬らない方がいいわよね。
私の横にデスデス女性が、やれやれデース。と、並んできた。
「仲間割れ?」
「ノーノー仲間じゃないデース。あっちは敵デース、助けて欲しいデース」
「…………私にとってはどっちも敵なんだけど」
「保護しますから助けて下さいデース」
保護されるのは貴女でしょうに。と突っ込もうとしたら周りの人間達がそうさせてくれない。足元に何かを投げられると、濃い煙が一瞬で辺りを包む。
「煙幕!?」
「任せてくださーいデスデス」
デスデス女性を中心に風が舞う。
一瞬でその煙が吹き飛ばされる。
「ってか、ちょっと私も飛ばされそうなんですけど!」
「クリスおねーさんっ! とばされそうです!」
「ハーイ。アタシ以外を吹き飛ばす精霊デース」
デースじゃないわよ!
古本が風に舞ってお店前にある衣服も飛んでいく。
私達を襲ってきた人たちが一人、また一人と風に飛ばされていく。
一人は屋根に突き刺さり、一人は見えなくなった。
最後に残ったおじさんは鬼の形相というのか、地面に四つ這いになって私達を見て何か叫んでいるけど風の音がすごくて何も聞こえない。
あっ、その四つ這いのおじさんも飛んでいく。
風が徐々おさまり静けさがもどった。
「ふう、助かりましたデース」
「いや、私いらないわよねっ!?」
遠くから笛の音が聞こえ始めた。
「逃げるのデース!」
「なんで?」
「街を破壊した罪を着せられて捕まるのデス、悪いようにはしないので付いてくるデース」
「へ、あっちょっと」
デスデス女性は私の手を、精霊お願いしますデース。と、言うと屋根の上へと飛んでいく。
「どうするマリー? 行きたくないなら……」
「ひゃいっ…………いきます、クリスおねーさんがつかまっちゃいます!」
私の事を思って……なんて健気。よし、私はマリーを背負ってデスデス女性の後を追った。
お読みくださりありがとうございます!




