90 クリス裏取引を察する&察しない奴一名
ちょっと懐かしい空気を感じた。
帝都でも感じたわねこの空気。
場所は大げさな言い方で言えば牢屋、柔らかくいうと詰め所に私はいる。
私の手には金属の手錠がかかっており逃げられないようになっていて、周りの部屋から怒声やすすり泣く音が聞こえる。
「個別に話を聞く、所属や身分を証明できるものを頼む」
「はいはい。冒険者のクリス、これが冒険者カード」
私は自分の冒険者カードをテーブルに置くと、向かえにいるカタリナがそのカードを水晶球でチェックしている、水晶球は青く光るとカードを返してくれた。
「本物の冒険者カードみたいですね、で……どうして突然暴行を?」
「どうしてもなにも、アイツらが可愛い可愛いマリーを蹴ったからよ」
「それなのですが、目撃情報が無いのです」
「そんなわけないでしょ。あれだけ人がいたんだから!」
私はテーブルを叩くと、カタリナの眉がピクっとなる。
「乱暴はいけません」
「あのねー最初に乱暴してきたのはあっち」
「ですが、それに暴力で対抗してはいけません」
ぐぬぬぬぬぬ。
「そりゃ私も暴力はダメとおもうわよ? でもあの場合どうするのよ。
黙って子供を蹴られて、蹴ったやつの背中を見てろって事?」
「それは……その、すぐに協議会騎士を呼んでくだされば……」
「間に合わないでしょ」
私は椅子を斜めにして足をテーブルの角にヒザを付ける。
椅子をゆらゆらとしてカタリナを見ると、少し暗い顔になり黙ってしまった。
カタンと椅子を戻して落ち込んでいるカタリナに向き合う。
「ええっと、その言いすぎたかも」
「いや、こちらこそすまない……解ってはいるんです……」
「で、こっちは直ぐ釈放されるのよね?」
「それがその……」
カタリナは席を立つと扉の前に立つ。
扉に手をかざすと扉が青白く光り、その光が部屋全体に伝わった。
「魔法障壁です、ここでの音声は記録されませんし映像を魔法で盗み見る事も出来ません」
「へぇ……で、なんで? 私を亡き者にでもするの?」
そっちがその気なら私にも考えがある。
部屋に入る時に丸腰にされたけど、手錠された手を思いっきり左右に引っ張りその鎖部分を引きちぎった。
「っ!」
「悪いけど、同じような事をマリーにしてるんだったら女性でも容赦しないわよ」
「ま、まってください! 違うのです。カタリナは貴方を助けたいのです」
「断るわ」
「えっ……」
信じられないような物を見るような目で私を見てくる。
「誰かに助けられるほどの危機でもないし、それって結局に貴女がしたい事でしょ?」
結局は、この協議会騎士カタリナって子は私を使って何かをしたいだけ。
貴族をしていた時もそういう人間は沢山寄ってきた。
昔ある貴族に、貴方のためだから馬はやめなさい。貴方のためだから剣をやめなさい。一度、本当にそう思っているのかと思ってその通りにして見た所、あの馬鹿女に礼儀を教えたのは私ですよ。と、あちこちに自慢された。
それだけならまだいい。いや良くないんだけど、事ある事に文句をつけてくる始末だ。
思わず手が出ると、そんな風に教えた覚えはない! とか。
いや、そもそも貴族の付き合いがあるからお茶会とか付き合ったけど、育ててくれたのは両親や祖父だからね。と、説明したけど聞いてもらえなかった。
それに祖父や両親は私のしたい事を学ばせてくれたし。
「結界を張ったのは先に説明した通りで、今回の事を表沙汰にしないで欲しいのです」
「
カタリナは暗い顔のまま落ち込みはじめる。
「だったらさっさと逮捕しなさいよ。そのための警備兵じゃないの?」
「それが出来たら苦労しない!」
カタリナはテーブルをドンと叩く。
すぐに、すまない。と、謝ってきた、カタリナはポーチからコインを複数枚だしてくる。
「賄賂?」
「そのようなものだ。これを受け付けにだせば釈放される、その代わり今回の事は、むしゃくしゃして殴ったという事にして黙っていて欲しいんだ」
「どういう事よ……」
「先にもいったように、フルコス様はマルコス様のご子息だ。小さい犯罪ではもみ消される」
いや、消してるのはアンタでしょうかっ! と口に出しそうになって止まった。
カタリナの目が真剣だったし、なおかつ小さい犯罪って言葉に引っかかる。
「あっそういう事?」
「私は何も言ってません」
「まぁそうよね、小さい犯罪じゃダメージ受けないわよね」
「ですから黙秘します。結界がもうそろそろ消えるので」
部屋全体の青白い光が消え、外の騒がしい音が再び聞こえて来た。
扉がノックされ外側から開くとマリーがぴょこぴょこと走ってくる。
「かわいい」
「でしょ! でしょ! あげないわよ」
「貴女の子で?」
カタリナの言葉に、私の脳がフル回転する。
私の子供ではない。でもない場合これって保護されるわよね? 離れ離れってやつ? でも私の子供っていうのには年齢が合わない。
世の中にはそりゃすっごい若い時に産む子もいるわよ。
でも私はなんだったら結婚すらしてない。
「似たような物よ、預かってるの」
「クリスおねーさーん」
むぎゅっとしがみ付いてくるので、私は抱きかかえる。
「仲が良さそうで嘘は言ってないようですね……最近行方不明者が多いのでお気を付けください」
「ご忠告どうも」
受付で貰った金貨数枚を罰金として納めて自分の名前を書く。
剣を返してもらってジョンを待つと、制服を着た男性が小走りに近づいてくるのが見えた。
「ええっと、クリスさんですか?」
「そうだけど何?」
「お連れの男性が暴れたために収監所へと決まりました。保釈金を金貨九十枚を払いますか?」
「はああああああああ?」
大声を出しながらちょっと納得する自分がいた。
そうよね、アレに空気読めっても無理よね、賄賂渡されたと思ってブチ切れてたのか? そもそも、マリーか怪我をしたのだって私同様に怒っていたし。
「ってか、それでも捕まるなよっ!」
「クリスおねーさん……ジョンおにいさん悪い事したの?」
「どうなのかしらねぇ」
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