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豪傑令嬢は追放されても落ちぶれない~聖女の立ち位置と王子は譲るんで自由をください~  作者: えん@雑記
三部

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88 一晩たっての再出発その1

 私の声にラビリンスの冒険者ギルドの受付男性が震える。

 宿で一泊した私達は朝一でここに来たのだ。

 周りの冒険者もなんだなんだと、様子を伺っているのが視線で感じた。



「そういわれましても、紹介状にあるイゼール邸は既に売られており、屋敷の継承者も行方不明ですので」



 ちらっとジョンを見る。

 今回の、ほとぼり冷めるまで他国でゆっくり休養しましょう作戦……ミッケルが立てて、アンナが作戦名を付けたやつ。

 表向きは迷宮都市にいる帝国の知り合いの所にいって、そこの子供に剣術指南でもする。というのがギルドを通しての依頼だ。



「ですから、屋敷は数日前に競売にかけれてますし……ああ、その依頼とこちらの情報に食い違いがありますねぇ……ギルドから保証金が出ますのでその手続きをお願いします。

 …………あの。後ろが使えているんですけど……まだ何か?」

「ぐ……な、ないわよ!」



 私は思わずカウンターを叩き壊そうかと思ったけどやめた。

 えらい。



「俺はある」



 ジョンが横から入って来た。腰ポーチから冒険者カードを数枚だし、数日前の事を淡々伝え始めた。

 私の時と違ってギルド職員が驚き、悲しそうな顔をしてジョンと話しだした。

 話が長くなりそうなので、私はおろおろしているマリーを連れて、ギルド内の休憩スペースへと腰を下す。


 隣にマリーがちょこんと座ると、周りの冒険者も可愛いわね。など聞こえてくる。

 ふっふんーいいだろう。


 可愛いは正義よね。

 でも、なぜか私達の周りには誰も座らなく時間だけが過ぎていく。



「待たせたな」



 ジョンが三人分(・・・)の飲み物を持って戻ってきた。

 変な所で優しいわね。



「おかえり」「お、おかえりなさいませ」

「…………俺はお前の主人でもない、普通に喋れ」

「ひゃ、ひゃいっ」



 マリーに文句をいうジョンはマリーを挟んで座る。



「…………カウカン・イゼール。話の通り行方不明だそうな――――」

「ふむふむ、というと?」



 ジョンが聞いてきた話によると、カウカン・イゼールという老人は女好きで数年前にとうとう奥さんと子供に離縁され一人暮らしだったとか。

 さらにその遊びが好きすぎて借金まみれの所、数日前に帝国のお偉いさんから依頼が来て、その前金持って新しい恋人と逃げたって教えてくれた。

 なんでそこまで解ったかというと、逃げた恋人ってのはギルド職員だったとか。



「とんでもない奴ね」

「…………まったくだな」

「で、まだ話はあるんでしょ?」

「ああ」



 ジョンは一度マリーを見てため息をだす。



「もう一つ数日前の馬車の護衛。ランクはB、依頼内容は聖堂都市までの護衛、老夫婦の巡礼と言った所だ」

「じゃぁマリーはその老夫婦の孫って事……」



 ジョンは黙って首を振る。



「その老夫婦には子すらいない」

「じゃぁマリーも冒険者?」

「それも無いだろう……冒険者は全部で六名。俺は六名のギルドカードを回収してる」



 だよね。


 

「ふええ、あ、あのごめんなさいっ」

「無理に謝るな」

「ひゃい」

「イジメないの」



 謎が残った。



「……なんにせよ、暫くは一緒のほうがいいだろう……なんだ?」


 

 ジョンは私を見ていて、多分私は驚いた顔で驚いてジョンを見ていた。



「なんでもないわよ」

「変な声だすな……」



 ちょっと声が高くなっただけじゃないのよ! いやだって、マリーが離れてる時とかに孤児院に預けるのが一番だろう。って言っていた奴よ。

 一緒にいた方がいい。とか言ったらそりゃ驚くじゃないの。



「いっしょに入れるんですかっ!?」

「そうね、いや……うーん、うんっ言った方がいいわよね、マリー」

「ひゃ、ひゃい」

「マリーの意見を尊重するわね、頭いいみたいだし。

 二つの道が今あるの。一つは孤児院に入る、この場合もちろん支度金もだすし、下調べもする。

 もう一つは暫く私達と一緒にいて今後一人で暮らせるように仕事を覚える。

 こんな感じかな、どちらを選ぶ?」



 マリーは私をまっすぐに見るので、私もその視線に合わせる。



「…………以外だな。お前なら……」

「黙って」



 横から口をだすジョンを黙らせる。

 マリーの考えを知りたいから、私だってこんな可愛い天使みたいな子と離れたくないわよ! でも、私が一生面倒みるつもりでも、本人は嫌かもしれない。



「い、いっしょにいたいです…………しば……」

「あーーーもう、かわいい」

「ふぎゅっ!」



 マリーを抱きしめる。

 そうよね、そうに決まってるわよね。



「…………いい判断だ。そのほうが金銭的に食っていけるからな」

「そこ、黙りなさい! 金銭的より私と一緒にいれる方がいいに決まってるからでしょ!」



 苦しそうなマリーを一度抱きしめた状態から離す。

 少し咳をした後に私とジョンを交互に見た。



「あの、ジョンお、お兄さんもやさしいから、いっしょにいたいです」



 私は黙ってジョンを向くと、ジョンは突然横を向いて、果汁飲料を飲み始めた。



「…………とにかく、そう決まったのなら、今後の事を考えろ」

「こっち任せ? まぁいいけどさ……帝国に戻るのは無いわよね。とりあえず手紙は書くけど返事が返ってくるのはええっと……」



 今手紙出したとしてアンナやミッケルは帝都に帰っているだろうから……逆算すると……。私が考えいるとジョンがコップを置いて、


「…………約十五日前後だろうな」



 と、教えてくれた。



「うわ。そんなに……宿を決めるから始めないとダメね」

「だな……」

「ジョンおにいさん、マリーがんばってはたらきます!」

「…………がんばれよ」



 まぁ照れちゃって。


お読みくださりありがとうございます!



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― 新着の感想 ―
[一言] はてさて、身元不明正体不明のマリーたんはいったい何者なのか? 可愛ければ許されるのか、許す(即答)
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