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豪傑令嬢は追放されても落ちぶれない~聖女の立ち位置と王子は譲るんで自由をください~  作者: えん@雑記
三部

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87 野宿の後の朝と天使ちゃん

 マリーと名付けた可愛い女の子を引き連れて二日目の朝である。

 起きて朝の支度を終え見張りをしていたジョンにお礼を言って料理を始めた。


 昨晩は質素な料理だったので今朝は豪快する事に決定ってね。

 焼きたてのパンに搾りたての果汁飲料、新鮮な肉を豪華な鉄板を出してその上で焼く。



「一つ聞いていいが?」

「何? 焼き加減の事?」

「そのアイテムボックスだ……確か昨日……ゴミも入れていたよな?」

「そりゃそうよ、食べ残しとか放置していたら匂いにつられて魔物が来たら困るっていってたじゃない」



 あとジョンに言う事でも無いから言ってないけど、魔物との戦闘で返り血のついた衣服も突っ込んだ。それの事かな、あっ……そういう事か。

 冷凍箱に返り血のついた衣服とゴミと一緒に食べ物が入ってるのと一緒って言いたいのね。

 朝から、ちょっと嫌な気分にさせる天才か、コイツはっ!



「嫌なら食べなくていいわよ」

「気になっただけだ、遠征ではもっと酷い場合もある」

「はいはい。じゃぁマリーを起こすわよ」



 私がマリーの寝ている方をみると、マリーは体を曲げてすやすやと吐息のまま寝ている。

 天使かっ!



「朝ですよー」



 私はマリーの脇腹をくすぐりならが起こす。

 案の定マリーは驚いて小さく笑いだす。



「マ、ママやめてくすぐったいっ、あは。あっ……ご、ごめんなさい、クリスおねーさん。クリスおねー……あははは、やめてっ笑っちゃう、くるしい」



 これはこれで変な趣味に目覚めそうだ。

 ちらっとジョンを見ると興味ないのか横を向いている。



「さて、マリーあっちで顔を洗って目を覚ましてきなさいねー」



 マリーに水を入れた桶を渡した。

 これもアイテムボックスに入れて来た奴だ。

 ちょーがつくほど便利だ。


 マリーが少し離れると、肉の火加減を見てるジョンと目が合う。



「何?」

「いや、手際がいいんだな。と、思ってな」

「これでも弟がいてね、よく世話をしてたのよ。もっとも途中からアンナに世話係取られちゃったけど」

「…………最初に会ったときより表情が増えたな」

「私?」



 ジョンはそうだ。と、いって下を向く。

 なるほど、気づいてなかったかも。でもまぁジョンも表情増えたわよねー。黙っておこ。

 マリーが戻って来たので、朝食だ。


 私はともかくとして、ジョンも食べないで待ってる辺り気にはしてるのかしら?


「で、何か思い出したか?」



 マリーは黙って首を振った。

 あのねぇ、こんな小さい女の子に朝から何聞いてるのよ! と、アイコンタクトを送った。

 すぐに、このまま連れていくつもりか? とアイコンタクトが返ってくる。


 そりゃそうよ、かわいそうじゃない。とアイコンタクトを送ると、面倒は見切れないぞ。と、返事が来る。



「あの、マリーそのまちに行けばなんとかなります」

「なんとかって?」

「ええっと……はたらきます! はたらいてご飯をたべます!」

「まぁそれはいいけど、なんで急に」



 マリーは何か言いたくなさそうな顔をしているので、いいなさい。と、ちょっと強めに言ってみた。



「あの、マリーがいると、クリスおねーさんと、ジョンおにーさんがめいわくそうだから……」

「んまあああああああああああ」

「ぎゅえ」



 マリーを抱きしめる。

 マリーの口から変な声出てたけど力いっぱい抱きしめた。



「健気! 可愛いいいい」

「くる、くるしいです、お、おっ」

「苦しがってるぞ……」



 ジョンの声で、マリーの体を離すと、本気でゲホゲホ言っているのがわかる。

 力入れすぎたかな。



「…………そんな小さい体で働くとなると冒険者も無理だろうな、奴隷か」

「はぁ!? こんな可愛い子を奴隷とかっ!」



 奴隷制度問題は各国で違うが大きく同じなのは主人に仕える事、主人から給金を貰い自身を買い取る事で自由を得られること。

 言葉では簡単だけど、主人の命令に背いたから給金は無し、とか不遇な命令をさせられたり、その他にも待遇は悪く、実際に開放される人間が少ない。



「どれい、がんばります!」



 マリーは元気に答えるけど、マリーの体をがっしりと掴む。



「絶対そんな事させないわよ。いざとなれば……そうよ、実家でメイドになれば」

「……その実家を捨てたんだろ?」

「うっ」



 次から次にアラを探してっ!



「めいわくにならない様にはたらきます!」



 健気。両親も死んだというのに……。



「ってか、その……両親の事も覚えてない?」

「ママは優しかったと思います……パパもたぶん……」

「とりあえず街に着いたら考えようか、ほらジョン。お皿だすから取り分けて」



 ジョンにお皿を三枚出すと、焼き立ての肉を黙って切り分けていく。

 私とジョンのは一口サイズに切っていく、マリーのお皿にはさらに切れ込みを入れて細かく切っている。


 ふふん。なんだかんだで優しいじゃないの。

 口下手って損よねぇ。

 ジョンが私の視線に気づいたのか、こっちを見て来た。



「なんだ?」

「何でもないわよ?」



 ◇◇◇


 日も暮れ始めた頃、迷宮都市ラビリンスに着いた。

 途中で何度も人にすれ違ったし、商人っぽい人に馬車に乗らないか? と誘いを受けたけど、ジョンが、もうすぐとの事だったので今回は断った。



「って何がもうすぐなのよ!」

「……走れば直ぐだったんだがな」

「ねぇマリーも疲れたでしょ?」

「あ、あの……だいじょうぶでした」



 ならいいんだけど、遅いのでギルドに行くのは明日にする事にする。



「クリスおねーさん。ギルドって所に今日いかないんですか?」

「混むからね、さっさと宿とって美味しい物食べてゆっくりよ」

「あの、おかねかせいできますっ! ふぎゅ」



 走り出そうとするマリーのえりくびをジョンが掴む、ひょいっと持ち上げて私に投げ飛ばしてきたので、よっと声と共に、キャッチして抱っこした。


 ツンデレってやつ?。

お読みくださりありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 可愛いのう、こんないい子が記憶喪失なんてなぁ。 クリス完全にやられちゃってる、こんな妹が欲しかったのかな。 ジョンのもうすぐは田舎の爺婆のもうすぐだな(フルマラソンの距離)
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