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豪傑令嬢は追放されても落ちぶれない~聖女の立ち位置と王子は譲るんで自由をください~  作者: えん@雑記
二部

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83/131

83 帝国からも追放願い

「ダーリン、人払いは済ませて来たわっゲフッ」


 元気いっぱい……いや、口から吐血をするシーディスさんは、オジサマを見てほほ笑む。

 一方吐血ぐらいじゃ動じないオジサマ、かっこ皇帝かっことじるさんは議長となって私達を、その眼圧で抑え込む。



 帰りたい。



 場所は食堂から移動しての同じシーディス邸にある臨時会議室。

 スタンピードや鉱山爆発事件で使われた部屋だ。



「お嬢さん、そんな顔をして何か言いたそうだね」

「いえ、別に」

「クリスさん、何かあるなら言った方がいいですよ」



 気軽に言うミッケルをにらみ私は大きく息を吐きながら言う。



「では、なんでこのメンバーなんでしょうか?」



 相談事で皇帝であるオジサマはまだわかる、その相談役としてシーディス様はまだ了承内だ。

 次にアンナを見る、アンナも身内に近いからまだいい。

 問題は……なんでミッケルとジョンが同席してるのよ! 言いたい事を察したミッケルが先に喋りだす。



「まぁ身内みたいな者ですらかねぇ」

「なった覚えはない!」



 私が力強くミッケルに言うと、シーディス様が、そうなの? と、言いながら座席についた。すぐにアンナが紅茶とスポンジケーキ、あとシーディス様用に飲み薬をそっと前に置く。



「ありがとうアンナさん。身内じゃないって事は、ウチの馬鹿息子はクリスさんに振られたのね」

「……そうだな」

「振ってない!」



 …………私とジョンの声がかぶって部屋の中が静かになる。

 シーディス様は驚いて、そうなの? って聞いてくるし。



「よかったわねラインハルト。式は何時かしら……」

「ふむ……それなら直ぐに王国へ連絡をいれよう。お嬢さんは帝国が受け入れたと」



 オジサマが納得した顔で席を立って外に出ようとする。



「まったまったまったあああっ! いえあの、お待ちになってください」

「おや? 待てと言われえば待つよ、どうしたんだいお嬢さん。ああ、そうか義理の娘になるのかな」

「あっそうよねダーリン。クリスさんウチの馬鹿息子をよろしくね」

「いやいやいや、あのっ!」



 外堀がどんどん埋められていく。

 何度か深呼吸して、話す事にする。本人がいる前で言うのも気が引けるというかは今は置いておこう。



「嫌いじゃないだけで、その結婚までは……練習相手にはいい友人と思ってますけど」

「「なるほど」」



 オジサマは席に戻って、座りなおす。



「ラインハルト、良かったわね」



 何が良かったのか、シーディス様が褒めるとジョンは無言でため息をだす。



「もう、すぐにそんな態度を。誰に似たっ」

「はっはっは、昔のシーディスそっくりだよ」

「もうやだわダーリン、ダーリンの若い時のほうがそっくりよ」



 シーディス様がオジサマの胸をツンツンと突くと、オジサマはシーディス様の黒髪を触って、ほらここもそっくりだ。と喋りだす。別方向で桃色の空気が漂って来た。

 

 この空気をどうするんのよ! とジョンとミッケルを見る。

 ジョンは人生が終わった。と思わせるような空気で下を向いていて話にならない。

 仕方がないのでミッケルを見る。


 私がやるんですかー? とミッケルの眼が訴えてきていて、私はその無言の訴えを頷いて返す。ミッケルは仕方がないですね……という顔で仕切りだした。



「ごほん。陛下とシーディス様……話が進まないので」

「あらやだ、そうねミッケル」

「ここではファルでいいぞミッケル」



 シーディス様はミッケルの言葉に、さすがミッケルね。と、褒めてオジサマも小さく笑った後に真面目な顔になった。



「さて、王国へ帰りたい。と、思うのであれば全面的に協力しよう」

「自由に過ごせるなら帰ってもいいと思ってますけど……」

「でも一度は自由を諦めて婚約をしたのでしょ?」



 間に入ってきたのはシーディス様だ。



「まぁそれは貴族だったので多少の事は……でもその……」



 どう伝えていいか迷っていると、オジサマは腕を組んで天井を見た。

 顔を戻して私を見つめてくる。



(かご)の鳥は自由を得た後は籠には戻らない。…………か」

「あらダーリン哲学的ね」

「さて……シーディスから褒めて貰った事だし、話を戻そうか。

 お嬢さんは戻りたくない、しかし相手も馬鹿じゃない。

 わざわざ帝国に戻せと書状が来た所をみると、お嬢さんが冒険者になっていたり帝国調査団と友好関係なのを知っているのだろう」



 はっ! 今まで疑問に思ってなかったけどそうよね。

 黒大蛇を倒した後はギルド経由だったのに、今は帝国調査団経由で話が来ている。



「じゃぁやっぱり結婚ね! ミッケル手配して!」



 シーディス様が五歩ぐらい先の話をしだした。いや、五歩もなにも可能性の話であってっ!



「シーディス様、クリスお嬢様が困られております」

「可愛いメイドさん、冗談よ。ごめんなさいね、そんな怖い顔しないで」

「あっすごい……アンナの微妙な怒ってる顔を察しするんだなんて」



 思わず声に出てしまったらシーディス様は、年の功よ。と、ほほ笑んだ。

 シーディス様の反対側、ジョンが座る場所から小さい声、本当に小さい声で、ババアなだけだな。って、ジョンの声が聞こえた。



「ふっふっふ、そのババアから生まれたのが、お前よ馬鹿息子! げっほげほ」



 しっかりと聞こえていたシーディス様は吐血しながらジョンを指さした。

 すぐにオジサマがシーディス様を介抱しだす。



「陛下、結局案はあるんですか?」



 ミッケルの声にオジサマは、そうだな。と言って介抱しながら話し出す。



「お嬢さんが良ければ、二人一緒で国外へ旅に出ないか?」

「まさかの追放?」



 追放というのは半分冗談だ。



「似た話だな。幸いラインハルトは帝都にいると情報を流している。そのラインハルトが率いる調査団から離れ国を出たとなると……」

「紅茶のお代りです。それは帝国はクリスお嬢様を見捨てる。という事でしょうか?」



 アンナが気を付けないとわからないぐらい怒り気味で、オジサマの紅茶を取り換える。

 でも、まぁ帝国の皇帝となれば国の事を第一に考えなければならない。これはわかる。

 私みたいな他国の貴族のために王国と関係を崩す事もない。


 そう、私は帝国から出て行った方が帝国は安全なのだ。納得の理由よね。



「アンナ怒ってはだめよ。わかりました、丁度一度帝都に帰ろうと思っていたので……帝都ではなくアンナと共に別の国に行く事にします」

「わかりました、わたくしアンナも墓までついていきます」

「おや、それは困る。クロイスのお嬢さん」

「…………アンナという名前があります」



 オジサマとアンナが顔を見合わせている。アンナは普通の人だったらわからないけど不機嫌な顔だし、オジサマはその視線をまっすぐに受け止めてほほ笑む。



「旅に出た方がいいといった二人は、ラインハルトとクリスお嬢さんの二人だよ」

「「は?」」



 珍しく会議で喋ったジョンと声がかぶった。


お読みくださりありがとうございます!

更新まにあった!

※次回予定日24~25日になります

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど煮え切らない二人を婚前旅行に送り出して合体(まあ御下品)させようって腹ですね!
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