82 北の新王とクリス。ついでに南の皇子をからかいすぎる
爆発事件から数日。今日もシーディス様の家で朝食を頂く。
食事は大きな鍋で作られており時間の空いた人達が交代で食べに行くシステムだ。
今日は私とミッケルがテーブルについてアンナが給仕の代わりをしてくれる。
ちなみにあれから、サツキやコウ君とは1回しか会っていない。いや街にいるのは知ってるんだけど……それぞれ忙しいみたいで。サツキは冒険者になるために登録して、コウ君がそれを手伝っているとかなんとか。
私が考え事をしているとミッケルの上機嫌な声が聞こえてきた。
「いやはや、すみませんねアンナさん」
「いえいえ、クリスお嬢様のついでですけど」
「いいんです。こう美人な女性に料理を運んでもらえるだけでより美味しく頂けます」
アンナの口元がちょっと横に広がる、嬉しそうだ。
「そのシーディス様は? 最近みてないけど」
「ファル皇帝が来てからは部屋が多いですね、呼んできましょうか?」
「…………冗談はやめてよね。仲がよければいいわよ……恨まれるのは困るし」
「ですね」
私は食事を食べるとミッケルに向き直る。
食後のお茶です。と、高そうなお茶とスポンジケーキを食べながら話す事にする。
「ご馳走様でした。っと。所で明日には町出ようと思うんだけど」
「えっ? なんでですか?」
「いやだってねぇ……」
私はアンナをみるとアンナも頷き、私の代わりにミッケルに説明してくれる。
「ギルドの依頼……いいえ、皇帝直々の依頼も終わりましたので、街が復興しだした今残る理由は無いと思われます」
「いやまぁそうなんですけど……ジョンの事はいいんですか?」
これは私に聞いてきたので、私が答えるほうがいいわよね。
「いいもなにも、何をどうせいと……」
「どうせい……そうですね。いっその事、同棲でもしたらどうです? 行き遅れ同士」
私は黙って今使っていたフォークをミッケルに投げた。
フォークはミッケルを頭をかすめて背後の壁に刺さる。
「…………もしかして、行き遅れなの気にしてるんです?」
「気にしてないけど、イラっとはくるわよ」
「大丈夫です。クリスお嬢様の介護はわたくしアンナがしますので」
いやいや。
「アンナのほうが年齢上なんだし……介護するとしたら順番が逆でしょ」
「はっ! クリスお嬢様がわたくしアンナのオムツの世話をしてくれるのですかっ感激です」
アンナが感極まっていると食堂の扉が開いて、ジョンが入ってくる。
「……廊下までシモの世話をするって聞こえていたぞ……そういう趣味なのか?」
「違うわよっ! 老後の話よ老後! それよりご飯?」
ジョンはミッケルの背後に行くと壁にささったフォークをさり気なく引き抜く。
横に並べてある鍋からスープをよそってパンをつかむとテーブルに着いた。
「ミッケル、ダンジョンだった場所はどうだ?」
「結果的に三つのダンジョンが絡み合ってましたね、一層、二層のボスはまだみてませんがランクBクラスでしょう。鉱山がなくなった今街の収入源にするしかないと思います」
「そうか……そっちは任せる」
へぇちゃんと隊長してるのね。
一応ジョンにも伝えた方がいいわね。
「ジョン、一応明日には街でようと思うんだけど」
「…………そうか、気をつけてな」
「うん……」
んーーーーーーそっけなさ過ぎない!?
思いきって聞いてみる。
「ジョンって、私の事すきなのよね?」
「ああ、そうだな」
「ぶっふぉ」
私が咳き込んだので、そっとアンナがハンカチをくれた。
ドストレートにそうだ。と、帰ってくるとは思わなかったからだ。
「そもそも、俺がそうであってもお前がそうでもないのだろう。心配されても困るだろう」
「なんで……?」
私の問いにジョンは黙ってスープを飲み始める。
こいつ無視する気なのかっ、肩をトントンと小さく叩かれた。
振り向くとアンナがお耳をお借りします。と、小さく言ってくるとその理由を教えてくれる。
ふむふむ。
ほう。
へええ、まじで。
「なるほど、ジョンは私がふったと思って拗ねてるのね!」
「ぶふぉ…………クリスさん。そうはっきり言うのは酷かと」
ミッケルが咳き込み、にやにやする。
その間もジョンは黙って食事をして反応は薄い。、耳がついてないのかコイツは。
ジョンが立ち上がると、空になった食器を洗い場へ置いて黙って部屋を出て行った。
「ええっと……」
「やりすぎましたかね。かなり怒っていたかと」
「やっぱり?」
「これぐらいで怒るとはクリスお嬢様に失礼です」
ミッケルがわざとらしく咳をして私を見ている。
「で、本音はどうなんですか? ラインハルトは私がいうのもなんですけど結構な良物件ですよ」
「……嫌いじゃないわよ。でも結婚となるとねぇ」
「おや、ここは嫌いだから結婚は無し。と言うと思ってましたけど」
ミッケルの返しにちょっとイラっとなる。
別に私だって元貴族だしー嫌いだから結婚はしないってのはない。
最初の王家の婚約だって別にそういうものかと承諾だってしてたし。
好きな人と結婚出来ないから貴族辞めたわけでもないし、本来は打ち首かもしれない話だったのだ。運よく命が助かったんだし自由を満喫したい、貴族コーネリア家のクリスではなく、冒険者クリスとして、そう……。
「――こう血が沸くような冒険したいのよ。はっいつの間にか声に」
「十分してますよね。北の王国からの転移、サイクロプスが出るようなダンジョン、犯罪を犯し牢獄、古龍との闘い、ダンジョン崩落事件に王宮潜入、そして今回のアイザックのスタンピード……これ以上なにを」
「ひっとつも冒険した気分ないんですけど。私が読んだ本では古龍と戦ってドラゴンスレイヤーになったり、魔界にいってトーナメントで優勝したり、魔界の王子と手を組んで天界に攻め込んだり……」
はっ! 夢を語っていたらミッケルがドン引きしてる。
アンナのほうを向くと、お供します! と、こっちはノリノリだ。
「まぁそういう感じよ」
「どういう感じかは知りませんが……何となくわかりました。調査団のほうではクリスさんを拘束する権利はないですからねぇ」
私が席を立とうとすると再び食堂の扉が開く。
イケメンオジサマが私の顔を見てほっとした顔を見せた。
「皇帝っ! ……様」
「ファルで結構だよ、お嬢さん。しかしよかった、まだこの街にいてくれた」
「ええっと、私に用事ですか?」
「ああ。北のグラッツ王国のフルーレ王が死去した。一応耳にいれておこうと思ってね。
新王であるアーカル王は現在独身だ。一部では君の身柄を探しているらしいからね」
「なんでまた……」
オジサマはふむ。と、言ってからこれは可能性の話だ。と、前置きしてくれる。
「お嬢さんを王女にしたてて権力を取りたい者、お嬢さんを亡き者にして権力を取りたい者。さてどうするべきかな」
いやいや、どうするべきかな? って聞かれても。
お読みくださりありがとうございます!
ジョン=ラインハルトはむっつりです




