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豪傑令嬢は追放されても落ちぶれない~聖女の立ち位置と王子は譲るんで自由をください~  作者: えん@雑記
二部

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81 軍規をやぶった馬鹿一名

 私は小屋の扉を蹴破った。

 あっけにとられる半裸のサツキと、壁際でがっちりガードしてるコウ君が私達を見て、目を点にしてる。



「ク、クリスさん! よかった…………扉が内側から開かなくてですね! そのあの、サツキさんが……そういうのは恋人になってからと思ってますし」

「やだわー予定より早く帰ってきたのう」



 文句をいうサツキを見て何とか息を整える。



「そんなっ ぜえはぁ……事はいいから……はぁはぁ……逃げるわよ! 地下ダンジョンがドンよ! ドン!」



 私の肩を背後から誰かか掴む。

 振り返ると、こちらも息を荒くしているジョンだ。



「コイツが地下のダンジョンの自爆装置を押した……危険かもしれん、逃げるぞ」



 ジョンの言葉に何度も私は頷いて見せる。



「べ、別に私のせいじゃないしっ。そもそもジョンが私を抱きしめなければ」

「……誤解を招く事を言うな」



 衣服を整えたサツキが天井を見てからポンっと手を叩いてこっちを見て来た。



「もしかして、大きなガラスケースの部屋行きましたの?」

「行ったわよっ! だから何、早く逃げるわよ」

「まて、部屋を知ってると……爆発の規模とかわかるのか?」



 ジョンがサツキに聞くと、サツキは大よそですのう。と、両手を広げた。



「山一つ分ぐらいは消しとぶんじゃないですかのう」

「は? え……?」



 終わった。

 いくら私が強くても山一つの爆発に巻き込まれたら終わりだ。

 ペタンと尻餅をついてジョンのズボンを二回ほど引っ張る。


 ジョンが見下ろす形で私の顔を見て来た。



「その、色々と迷惑かけたわね……とりあえず好きじゃないけど、嫌いじゃないわ。そうよ……どうせ私には返す物が無いんだしキスしてあげるわよ」

「…………今いう事か?」

「今言わないで何時いうのよ! もう数分? 数十分でドカンよドカン! どうしろっていうのよ!」



 私は立ち上がりジョンの胸ぐらをつかんで前後左右にゆする、ジョンの頭ががっくんがっくんしていく。



「よ、よせっ。今からでも冷静に逃げる事を……」

「んな事できらああっ!」



 出来るもんならやってみなさいよ!



「クリスさんっ恐らくですけど本音のほうが口から出てます」

「おー怖いですのう。まぁまちなんしのう。ホレ」



 コウ君の突っ込みと、サツキの声が聞こえた。


 振り返るとサツキが腰の革袋に手を入れはじめる、何百枚ものお札が部屋中に舞い上がった。そのお札達は窓ガラスや出入り口、天井や床下にどんどん張り付いていく。



「な、なに?」

「わらわは死にたくないしのう。呪符による結界じゃの」

「え、助かる……?」

「さぁ……」



 サツキが言葉を言い終わる前札が一斉に私達を襲う。

 体や手足、顔などり張り付き始める。



「ちょ、息がっ」

「むふむふーむむむー!」

「なに、窒息はしないはずじゃのう」



 苦しそうなコウ君の声が落ち着いてきた。

 口に張り付いた呪符を取ろうとしてやめた。確かに喋れないけど深呼吸すれば普通に空気は吸える。

 眼だけで周りを確認すると、ジョンはすでに全部呪符に囲まれて床に転がっている。次にコウ君も同じように転がった。



「と、いうわけじゃのう暫くすれば札も取れるようにしたのうに」



 信じるわよ。と目で視線を送るとサツキはほほ笑むだけだ。

 私の視界も暗くなる。

 次の瞬間、私の体が浮いたような気がした。



 ◇◇◇



 私は家に入る。

 紅茶とケーキを用意してくれるアンナに礼を言って椅子に座った。

 美味しそうなケーキを食べて旦那の帰りを待つ。

 今日は下の子が旦那に剣の修行をつけてもらっているはず、私のほうが強いのに……あれ? 私結婚してたっけ……?




「クリスさんっクリスさーん、ごほん。ちょっとボケて美人ですけど、その性格ゆえ行き遅れで、ライとさっさとくっつけばいいのに、それすら不透明で、からかうのに丁度いいクリスさーん。説明すきだからってわたしは、まだお兄さんですからねーその辺解ってますかー? 起きてくださいー」



 ん? 視界が突然明るくなる。

 目の前に胡散臭い顔の説明おじさんが見えた。



「お、やっと意識が、せめて助けに来たのですからその顔は……」

「今変事いってなかった?」

「いいえ。それよりも無事ですか? 助けにきました」

「…………ありがと」



 私が感情を込めないで言うと体が揺さぶられた。誰かに抱きつかれたらしいのはわかる、ふわっと甘い匂いがするのは……。



「クリスお嬢様! よくぞご無事で。ええわたくしアンナは信じてましたよ」

「あれ、アンナじゃない。どうしてここに……?」

「どうしたもこうしたも、二人が行方不明になって三日ですよ三日……」



 私はペリペリと、体中に張り付いたお札を取って周りを確認する。

 何十人もの人たち、調査隊の制服を着てるから調査隊が見え、大きな坂ががみえた。

 坂はぐるっと私の周りを囲んでおり、大きなどんぶりの底に私がいるような感じ。



「びっくりしましたよ、鉱山が光ったと思えば巨大な火柱。

 直後に来る爆風で街は大パニック……にはならなかったですけど。

 アンナさんが蒼白のまま崩れ落ちたり、暫くして街に現れたコウ君と謎の女性サツキさんが二人ほど埋まってるから探してのう。と言いますし……」



 寝起きの頭で整理する。

 試しにミッケルの頬を引っ張る。



「いったっ。何するんですかっ!」

「いや本当に夢じゃないよねって思って」

「自分ので試してください自分ので」

「何かさっきミッケルに不条理な悪口言われた気がするのよね……」

「さて、後は馬鹿突撃隊長を探さなくては……」



 ミッケルが立ち上がったので、私も立ち上がりながら聞く。



「馬鹿ってジョンまだ見つかってないの?」

「あの爆発でしたからねぇ、幸いそのミイラ型といいますが、呪符といわれる奴で安全なのはわかりましたし、丁寧にあちこちを掘ってる所です」

「じゃっ手伝おうか」

「普段なら頼むんですけど、一度街に帰ってください病み上がりなんでしょうし。後邪魔ですし」



 うぐ……はっきりと邪魔と言われたら仕方がない、帰るわよ……。

 アンナが馬車を手配しております。と、私の手を取って歩いてくれる、いや手繋がなくても歩けるわよ? でもまぁちょっと嬉しいからそのまま歩く。


 馬車に乗って街まで帰ってシーディス様の屋敷に入った。

 アンナにとりあえず一晩眠ったほうがいいです。と押し切られてベッドへと入った。


 疲れていたのだろう、ぐっすりと眠って翌朝になる。

 そして、玄関ホールで貼り付けにされたミイラ男の顔を見て思わず眼が点になる。

 だって十字の木材に顔だけだしたジョンがぐるぐると縛り付けられてるのよ、誰だってそうなるわよ。


 問題のジョンは私の顔を見てため息をだすし、助けても何もない。



「何やってるの……ジョン」

「これか?…………命令違反をした罰らしい」



 確かに足元に『命令違反をした馬鹿一名』って看板が立ってる。

 私の姿を見たのだろう元気いい声が聞こえてきた。



「クリスさーん。ご飯よー」

「シーディス様!」

「はいはい、元気いっぱいのシーディスよ。馬鹿はここに放置で朝食にいくわよー」



 私はジョンに心の中でごめん。とだけ謝って朝食を食べに向かうのであった。



お読みくださりありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] 4.サツキの呪符でミイラにされて助かる。でしたー! わかるかこんなん。 はたしてコウは食べられてしまったのだろうか……まあべつにいいか! >> 「エルンさーん。ご飯よー」 おや、前作の主人…
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