79 そうだ宝さがしをしよう! と私は思ったかも
本当に気を付けていってくださいね! と、コウ君が見送ってくれる。
そのコウ君の後ろにはサツキも手を振って見送ってくれた、こっちはシッシと追いやってる手の振り方だ。
ごめん、ごめんねコウ君、置いて行って……何も知らないコウ君が私達を心配する顔が見ていて辛い。ともあれ私とジョンは夕食後軽い休息をとって鉱山へと足を踏み入れた。
私はサツキとの取引のため、ジョンは皇帝や兄達にお土産を探しにだ。
暫く歩くとジョンが申し訳なさそうな声で話しかけてくる。
「……荷物持ちと戦力として借り出して悪かったな」
「え?」
「お前自身にはダンジョンに入る意味はないだろ……俺は最低でもダンジョンの危険度も知りたい」
あーそういう事ね。
確かにジョンから見ると、私は無報酬だ。
だってサツキからコウ君と二人っきりにしてくれって話もジョンは知らないもんね。
怪しい女からアイテム受け取って何してるんだって顔はしてたけど。
一人で行く。って言った所を私が手伝うわよ。って一緒にいるんだし。
「いいのよ、こっちもいいアイテム手に入ったんだし。容量は無限とはいかないけど、あの小屋ぐらいのアイテムは入るらしいし、その実験もかねて」
「……そうか、すまないな」
珍しく礼を言われた気がする。
ちょっと気になって話しかけてみた。
「そんなに、父親や兄弟と仲が悪いの?」
「…………」
反応が無い。
「うわ、無視とかひっどい」
私が文句をいうとジョンは、眉をひそめた顔を向けてくる。
「ずけずけと人の事情に踏み込んでくるな」
イラ。
「あのねー……私の事好きって話会ったわよね、今でもそうなの!?」
「…………答える義務はあるのか?」
「こいつはっ! そっちにスケルトンっぽいの見えたわよっ」
「確認してる」
ガッシャガッシャと骨を鳴らす小さい魔物をジョンは叩ききる。
アバラ部分から背中の骨まで壊されてスケルトンは地面に崩れ落ちた。
「そっちにもいるぞ」
「知ってるわよ」
私も自分の剣で同じようにスケルトンを破壊する。
続けて四対ほどでたので合計で六体の魔物を倒した。場所はリッチキングが出現したあたりだ。
「この奥か……」
「せめて、どっちかの質問ぐらいには答えてほしいかなー……」
聞こえるように呟くと、ジョンはしっかりと聞こえるようにため息を吐いてきた。
私が聞きたいのはため息ではない。
「…………父といっても皇帝だ。兄達もそれぞれ皇族、俺のように外れの人間ではない。俺とて本来は駒であるにもかかわらず自由に過ごさせてもらっている、その礼はしなければならない」
「おお、珍しく長い台詞」
ジョンは余計にむっつりになって足早になった。
「……お前こそ、貴族なくせに冒険者をやっていて家族に申し訳ない思った事ないのか?」
「全く」
「………………そうか」
冗談で言ったのに納得されてしまった。
「冗談よ。あ、ここからダンジョンよね気を付けて。
多少はあるけど、家を継ぐには兄と弟もいるからね。
私は嫁にいかなくてならないけれど世間では行き遅れよ、何かあれば王子を蹴り上げて来い。まで言われたし……今更もどってもねぇ。貴族の作法も面倒なのが多いし今のほうが楽。そんな感じかしら」
「確かにな……俺もラインハルト第三王子と呼ばれるよりはこっちのほうが好きだ」
そういう所は気が合うのよね。
大きな部屋と小さな部屋がいくつも見え、その部屋や壁が無残にも壊されているのを見て思わず声を上げた。
「スタンピードの影響だろう……アレがいれば詳しい話も聞けるが」
「魔力の暴走、本能の暴走とかでしょ。聞いたわよ」
もっとも私は学者じゃないのでミッケルの説明は適当に聞き流した。
それからもいくつもの壊れた通路を歩く。
しばらくすると空気が変わった。
ゾクっとするような、とても強い魔物がいるような感覚だ。
「一応気を付けた方がいいな」
「そうね」
ダンジョン壁もさっきまでと違う感じだ。
鉱山は岩肌、リッチキング付近は岩肌にていたが堅かった。
この辺は壁が鉄のようになっており、私やジョンの顔がうっすらと反射している。
途中に分岐が多かったけど地図通りに来たので迷いはない。
適度にスケルトンが沸いては倒してを繰り返す、魔石も小さく回収する前に消えていった。
さてと地図とにらめっこして最後のT字路にぶち当たった、そこの右行ったら剣がある部屋っぽいわね。
「右よね」
「そうだな」
右に曲がり人一人分の扉を開ける壊れた武具が足の踏み場もないほど散乱していた。
ゴミ置き場?
「宝の山だな……」
「そう?」
「ああ、壊れてないのを探そう」
私的には全部壊れてるように見えた。
剣は折れ、鎧や盾も穴が開いている。
「あっちをみてみろ。壊れてない長剣や鎧がある。ふむ……エルマ皇子にはあの大剣のほうがいいか」
確かにまだ壊れてない鎧や大剣が見えるわね。
「いつになく饒舌ね」
「気のせいだろう」
気のせいじゃないんだけどなー。
ジョンってぶっきらぼうに見えるけど義理堅いというか。さて、私も暇だし。
「どれ私も手伝おうか?」
「……頼む」
私は壊れてない剣を拾うと軽く素振りをする。
柄の部分から刃が飛んでいき壊れていない鎧に突き刺さった。
その拍子に鎧は倒れガシャガチャと他の武具をなぎ倒していく。
「「…………」」
うん。壊れていなかった鎧が壊れ、ジョンが目を付けていた大剣も二つに折れた。
「ごめん」
「………………いや、いい。簡単に壊れる武具のほうが困る」
ジョンは静かに足元にある壊れた武具を端に寄せていく。
うう、素直になじってくれたほうが気が晴れるわよ。
「手伝いたいけど邪魔になりそうだから、ちょっと見回ってくるわね」
「わかった」
部屋からでてT字まで戻る。
折角だから入った事のない部屋へと行く事にした。
なに、道になんて迷わない、迷わない。
◇◇◇ 別な女性視点の小話
「本当に大丈夫なんでしょうか?」
「心配なのかのう?」
「はい、道にでも迷ったら……やっぱり今からでも僕たちも」
「心配せんでも、地図あるからのう。ほれ……あの女が好きだったんじゃろ? あの男と潜ったんじゃ諦めのう、ほれ慰めてやろうに」
「わっ。あ、あの僕は外で寝るって、あのっ!」
ふふ、わらわのしもべは顔を赤くしておる。
あのダンジョンは間違えた道に入ると迷路になっておるが、まぁ大丈夫じゃろうのう。
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