77 クリスと、ちらちら肌を見せつけるサツキ様
「おお、臭い臭いのう」
「ちょっと! 突然出てきて人の事匂うとかなんなのよ!」
黒い布をまとった女性は私から視線を外してコウ君を見る。
「無視って何様よ!」
「ふむ、名を何という?」
「…………クリスさん敵です、思い出してください!」
あっ、たしかにこの女性はリッチキングを一撃で粉砕した。
迷宮から出て来たし魔物!? でも、迷宮の魔物は外には出ないって……ああ、もう混乱する。
ゆっくりと動く女性に私は剣を横に伸ばして通せん棒の代わりをする。
「ふむ、魔力感知も出来ない人間風情が、わらわの邪魔をのう」
「…………あんたが強そうなのは知ってるわよ、でも、だからと言ってすんなり通すわけないじゃない」
「どきなんし、そこの小僧が怪我してるんじゃろ? わらわが診てやるのう」
どうしたものか……怪我を治してくれるなら治してほしいけど明らかに怪しいわよね。
「あっちょっと!」
私を無視して、女性は歩く。手に青白い炎が現れると一瞬で一枚のお札に変わった。
そのお札をジョンの肩に貼り付ける。
「魔法!?」
「法術じゃの」
違いがわからない。
誰か説明してほしい。ジョン、コウ君、謎の女性の顔をみても誰も説明してくれない。
だーーーーー! なんてこんな時に説明ミッケルがいないのよ。
「…………助けてくれた事に礼を言う」
「あい、礼をうけるのじゃえ」
謎の女性はにっこりとほほ笑むと、すたすたと歩いていく。
その方向は出口であってあっけにとられて見送る所だった。
「まったまったまったまった、そこの女性!」
私が叫ぶと、謎の女性は止まりこちらを見て来た。
振り返ると、黒い布の隙間からちらちらと肌色部分が見える、ちょっとえっちっぽいわね。
コウ君をちらっとみると、まともに見てないし。
とはいえ一切顔にださないジョンは、逆に男好きなのかって思えるぐらい。
でもコイツ、私に告白してきたのよねぇ。
はっもしかしてもう飽きられた? だったらもう興味なくなった! ぐらいは言ってほしい。
「名はなんぞ?」
「……クリスよ」
「では、クリスよなぜ、わらわを呼び止めるのじゃ?」
「そのえっと……まず先に名乗りなさいよ! 私だけ名乗っておかしいじゃないの!」
私が言うと、コウ君もジョンもそれぞれ名前を言う。
「ふむ、クリスにコウ、ジョンと言ったのう、ではわらわもサツキと名乗ってしんぜようじゃの」
「そのサツキさん? どこから来たのよ、でどこに行くのよ」
「クリスよ、いちいち歩くのに、なぜ許可いるのじゃえ?」
「いやまぁ……」
正論で返されると思わなかった。
そしてサツキはクルリと反対を向いて歩こうとする。
「あの、待ってください。ダンジョンから出てきたのと、その力。冒険者であればそのお礼をしたいですし……普通うの人であれば保護します。ですが……ま、魔物であれば…………」
コウ君の語尾がだんだんと小さくなっていく。
サツキは顎に手を当てて考えると、前がはだける。
「ま、前を隠してください!」
「ほうませてるのう、ほれほれ」
からかって遊んでいるわね。
なるほど、冒険者ならまだ納得もいく。でも、見る限り冒険者には見えない……でも、魔物とわかって私達が相手できる。と、いえば無理よねこれ。
不意打ちで首を狙ってみるとか、私は剣のつかを握ると、サツキが振り向く。
「やめときなはれ、怖い顔しなくても危害はあたえないからのう、そこのお兄さんもや」
っ! サツキの目がうっすらと細くなり私とジョンを注意してくる。
んな事、やってみなきゃ解らないでしょうがっ!
「で、君はどっちがええ?」
「そ、その……人間ならいいなぁって……思います……」
「じゃ、そうしようかのう」
「本当ですかっ! 良かった! 人間なら保護します。一緒に地上に行きましょう」
「ほな、よろしゅうのう」
サツキはコウ君の手を握ると出入口に向かって歩いていく。
残されたのは肩を繋いだばっかりのジョンと私だけが残される。
「おい、本当に人間と思うか?」
「ノーコメント。仮に違って勝てると思う?」
「俺は無理だな……しかし、敵意があれば街に連れて行くのは……」
あら、思ったよりも消極的だ。
私自身としては快勝はしなくても二人で行けば腕の一本ぐらいは取る気でいたのに。
「敵意があったら、もう私達死んでるわよね」
私もジョンもお互いに無言になる。
まぁ今はあっちも暴れないみたいだし、一応は命の恩人なのよね。
そこを言って来ないのはちょっとだけ好感はもてる。
「それよりも、ちょっと来てくれる?」
「なんだ?」
私はジョンが寄ってきてくれたので周りで匂いを嗅ぐ、ジョンは若干男くさいがそんなに臭くない。
次に私は自身の上着に空気を入れるようにばふばふすると、ジョンに向き直る。
「匂うかしら? ちょっと嗅いでみてくれる? こういうのって自分じゃわからないのよね」
「っ………………知らんっ!」
「あっちょっと」
ジョンは先に歩き出してしまった。
うーん、臭いのか……香水は匂いきつくなるし嫌いなのよねぇ。
仕方がないアンナに相談しますか。
…………あーーーーーーー! ジョンがなんで変装してるのか聞きそびれた。
私は後ろを振り向いてダンジョンの出入り口を見る、入りたい。
でも、我慢してジョンやコウ君。サツキの後を追いかけて地上へと行く事にする。
すぐにジョンに追いついた。
その先にはサツキがコウ君と手を繋いで歩いている後ろ姿がみえる。
「で、ジョン……なんであんたがここにいるのよ。父親……と会っていたんじゃないの?」
「会う義理もない」
「…………もしかして反抗期?」
私が突っ込むと、ジョンは凄い小さい声でしゃべりだす。
「っ……お前な、父は皇帝だぞ。反抗なんてしてみろ牢に入るのがオチだ」
「そんな厳しそうな人じゃなかったけどなぁ」
「なっ! お前会ったのか……?」
「あ、言ってなかったっけ? ミッケルには伝えたんだけどな……不本意ながら会ったわよ。ついでにお兄さん達にも……あれ頭かがえこんでどうしたの?」
ジョンを見下ろしていると、コウ君の大きな声が聞こえて来た。
「あのー二人とも大丈夫でしょうか?」
「あー今行くー。ほら頭が痛いならさっさと帰るわよ」
「ま、まて引っ張るなっ」
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