76 咬ませ犬の敵だったわね……かわいそう
片腕を抑えて苦しむジョンを見ているとジョンが怒鳴ってきた。
「うるさい、叫ばなくても聞こえる……! 敵だっ!」
ジョンが私に向かって怒鳴ってきた。
え? 気づけば叫んでいたらしい、やる事が多すぎて頭がついていっていない。
でも体は動くらしく、落ちたジョンの腕を拾い上げ、ふっとんだジョンへとぶん投げた。
一応支給されたポーションがあるから、すぐにならつくはず……つくわよね?。
光線が私に向かって飛んできた。
「クリスさん! 避けてっ!」
コウ君の叫びが聞こえ前を向く。
私の背後にはコウ君とジョンがいて、避けれるのであれば避けてるわよ! とっさに剣を地面に突き立てて少しでも光の線が当たらないようにした。
光の線は剣に反射すると横の壁を壊していく。
「なん、なのよっ!!」
光の光線が途切れるとともに、私は剣を地面から引き抜いて岩陰へと隠れた。
反対方向の岩陰にはコウ君と腕を治療中のジョンが見える。
「ジョンっ! なんで、あんたがここにいるのよ!」
「……返す言葉もない」
「少しは返せっ!」
私が思わず怒鳴るように言うと、反対側からコウ君の大声も帰ってくる。
「クリスさん、あのムメイさんとお知り合いだったんですか?」
「知り合いもなにも……帝国調査団の偉いやつよソイツ!」
一応は身分を隠してあげた。
「えええええ! もしかして覆面調査って奴ですか? ど、どうしようリーダーとして失格だったのでしょうか……」
「いや、それは無いと思うわよ……とにかく! 絶対に腕つけてあげてっ! 下手したら打ち首になるわよ」
「なってたまるか!」
何よその言い方。
こっちが気を使って言ってあげてるのに、文句を言われるとは許せん。
近くにあった石をジョンに向けて投げた。
「いっ」
「それは悪かったですわね!」
「……石をなげてよこすな」
「あの、二人とも……魔物の前です!」
ん? コウ君に言われて気を絞める。
岩影から顔を出してみると、ボロボロの黒い布をまとった骨が見える。
頭部分も骸骨で特徴といえば禿げた骨の上に王冠が乗っていた。
「何あれ……スケルトンにしてはでかいけど」
「特徴的な王冠、リッチキングでしょうか……?」
リッチキング、祖父から教えてもらった事があるわね。
スケルトン族の上位魔物で確か……『出会ったら逃げろ』だったきがする。
「それは置いておいて、あの王冠って本物かしら」
「本物と思いますよ」
「え、じゃぁ……消える前に取ったら高く売れる?」
私の疑問に反対側にいる二人が、私を見ているのに気付いた。
「困ってるなら調査団から貸付をするか?」
「あの、僕も少ないですけどこの依頼の半分をクリスさんに……」
「別に困ってないわよ!」
本当にそこまで困っていない。
貯えも多少はあるし、最近も宿泊代も食事代もシーディス様の屋敷で寝泊まりしているのでゼロだ。
「クリスさん! ムメイさんの腕はなんとかつきました。これ、ポーションじゃないです。ハイポーション……いやもっと上かも、でもこのままでは危ないです。直ぐにヒーラーなどに見せないと」
さすがはコウ君だ。仕事が早い。
「さっすが、じゃぁ後は逃げるだけって奴ね」
「はいっ!」
「そうだな……戦うには戦力が足りない」
私は自分の剣を見て、その刀身に映る自分の顔を見る。
美人とは言えないけど、なかなかいい顔よね……じゃなくて! 戦力としては私が十としたら、コウ君は四、ジョンにいたっては片腕の怪我人だしゼロと考えていいわよね。
と、なると。
逃げるのにはアイツを止める囮がいるわけだ。
「ここはわた……」
「僕が囮になります!」
コウ君が岩陰から飛び出すと剣を構える。
「さぁこい化け物! 僕が相手だ!」
「はっ? 何してるのよ!」
「二人とも逃げてください! 僕が、僕が時間を稼ぎます」
コウ君が震える声を出しながら剣を構えた。
リッチキングはカカカカカカっと骨を鳴らしているのが耳に聞こえてくる。
「いやいやいや、このあたりに水場もないじゃないの」
「で、ですけど。怪我人と女性をほおっておくには……リーダーである僕のいう事を聞いてください。あっ……クリスさんっ!」
意を決した声で私に振り向くので思わず身構える。
「なによっ!」
「地上で合流できたらその、デ、デートしてくれませんか?」
「はいっ?」
「げ、言質とりましたからね!」
なるほどね……デートぐらいは許してあげましょう。
「わかった、絶対生き残るわよ」
私は剣を取ってコウ君の横に立つ。
「な、何をしているんですかっ!」
「ジョン。一人で上にいって、そしてミッケルに知らせてきてよ」
「俺も戦う」
「戦力ゼロでしょ。いるだけ邪魔」
ジョンの悔しそうな声が聞こえてくる。
ざまぁ……まぁあれよ。最低でもジョンぐらいは生き残って貰わないとね。
「あれ…………攻撃してきませんね」
ん? コウ君の声で前を見る。
リッチキングは骨を鳴らすだけで、一定の距離から動いていない。
「そうね、こっち見てる? ってか目の部分が青白い炎で何所見てるかわからないんですけど」
「もしかして……」
コウ君が近くにあった石をリッチキングに投げると、石が一瞬で光線に焼かれた。
でもそれ以上は何もしてこない。
私も試しに近くの石を蹴ってみる。
石は空中に飛び、リッチキングの間合いに入ると光線で焼かれた。
「出てこない?」
「出られないってが正解かもしれんな」
ジョンがゆっくりと立ち上がると、コウ君も少し緊張を解くのがわかった。
「あの迷宮ボスってダンジョンの外に出れないと聞いた事あります……」
私達三人は顔を見合わせる。
突然にリッチキングがカカカカカカカカっと骨を鳴らし始めた。
手足が不規則に動き、光線があちこちに飛ぶ。
「ちょ、なにっ」
「わからんっ!」
リッチキングの頭が止まった。
次の瞬間、リッチキングの頭が鈍い音とともに崩れ落ちる。
頭のあった部分には握られた手がありリッチキングの体も支えを失ったように崩れ落ちた。
残ったのは、肩までしかない黒髪頭の半裸の女性。
その女性は欠伸をしながら私達を見る。
「なんじゃおぬし等? 人間かの?」
リッチキングの着ていた布をローブのように羽織った女性は私たちの前まで寄ってきた
私たちの前で立ち止まると、鼻をふんふんふんふん嗅ぐ。
コウ君なんて目のやり場に困ってるじゃない。
ジョンをちらっとみる、何所見てるのかしら? ジョンの顔からはテレも何も感じられないし。ってかなんなのよこの人?。
肩までの黒髪の女性は私の顔を見てほほ笑む、私も曖昧にほほ笑んだ。
「うわ、くっさいのう」
「はあああああああ?」
お読みくださりありがとうございます!
誤字報告など大変ありがたいです感謝 (最近名前でよくやってしまう




