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豪傑令嬢は追放されても落ちぶれない~聖女の立ち位置と王子は譲るんで自由をください~  作者: えん@雑記
二部

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71 鉱山街アイザックの攻防 一日目

 急いで屋敷を出た。

 祭りでもやっているの? というぐらいに人があふれている。

 逃げる人、迎え撃つのに武器を持って走る人。

 遠くからは大きな爆音なども聞こえ、気持ちが高揚して体が震える。



「と、いうわけで逃げるのには間に合わないから」



 ジョンやミッケルに挨拶して素早く走り出した。

 私は剣を握りなおして魔物が要る方へと走る。

 すでに街の中に何体が入ってきており、横をすれ違いながら斬る。

 横目で倒れた大人に子供がしがみ付いているのを見ると心が痛む。

 街を守る兵士が大きな扉を閉めようとしているが魔物が多くて難航しているのが見えた。



「クリス・コーネリア。参る!」



 自らに気合を入れて門から入ってこようとする一つ目の魔物の首を斬る。

 まだ動く巨体に蹴りを入れて間合いを取った。

 私が斬った魔物に火球が飛んできた。

 ほかの冒険者ね。この騒ぎでも冷静に対処できるのは流石としかいいようがない。



「じゃぁ私も。次っ!」



 さらに後ろに下がって、次の魔物を斬る。

 幸い多すぎてターゲットには困らなさそう。

 剣を切り返して七匹目の首を跳ねる。

 すごいわねこの剣。全然切れ味が落ちない、むしろ切れ味がよくなっている気がする。



「ここはあの人が引き受けますー! 他の人は別地区へお願いしますー!」



 ミッケルが大声で何度も同じ言葉を言うと、私の周りから冒険者が減っていく。

 いやちょっと、一人で相手しろって事? 十匹目の腕を切った所で、私めがけて何かを吐いてきた。

 横から腕を引っ張られて、その液体から離れる。思わず引っ張ってきたやつを見るとジョンだ。



「……俺も手伝おう」

「ちょ、あんたこんな前線にいて死んだらどうするのよ…………その皇子なんでしょ?」



 小さい声で話すと、不機嫌そうな顔がますます不機嫌になっていく。

 お兄さんそっくりよね。

 ジョンもそのうち眉間にしわが出来るのかしら。



「ここでは突撃隊長だ。お前こそ無謀か? 死ぬ気か?」

「ふーん……無謀ねぇ。私は死ぬ気はないわよ、祖父から何か何でも生き残れって教え受けたんだけど?」



 仮にそれで死んでも仕方がないと思ってはいる。

 ジョンに言うと口うるさそうだから言わないけど。



「そうか」



 私とジョンは自然に背中を守るようにして戦う。

 魔物の数が減ってきた、残った兵士が重い音を立てて鉱山への道に続く門が閉められた。

 これで一安心できそうかしら。

 この付近で動いている魔物はあと十数体。全部を斬り終えて息を吐くと日が落ち始めてきた。



 ◇◇◇



 シーディス様の屋敷へと戻る。

 屋敷のあちこちが壊れており、調査隊が治していた。

 見知った調査隊を捕まえて事情を聞く。



「このありさまは?」

「さっきの魔物っすね。一心不乱に何かから逃げるように走って建物や人をって所で……姉御から逃げたんじゃないっすかね」

「あのねー……」



 冗談が言えるなら士気は高そうだ。

 ここまで来るのに壊された家や人を見た。

 絶望より冗談をいえている人間のほうが強い。



「クリスお嬢様! よくご無事で」



 アンナの声が聞こえたので見知った調査隊を開放してアンナに向き直る。

 疲労の顔がうかがえ、メイド服にも返り血や変なシミがついているのが見えた。

 怪我は……ないようね。



「お、アンナもお疲れ様。現状はわかる?」

「はい、西門、南門ともに封鎖。東門も封鎖されてます。魔物の第一波は撃退しましたが街はかなりの被害があるようです。

 現在冒険者で回復魔法を使える人間の多くは一般人を治すために動いています。

 食料やアイテム、武具に関してはシーディス様とギルドマスターが命令をだし無償で配られています」




 いい判断と、素人ながらに思う。

 この期に及んで、金儲けに走る商人は何されるかわからないだろうし、商人だって命令されたほうが最後は責任押し付けやすいもんね。



「こんな事であれば、わたくしアンナも回復魔法を訓練すればよかったです」

「え、魔法覚えれるの!?」

「確実とはいえませんが、ケラ様に相談した所、そこそこの魔力もちらしく、訓練すればなのー。と、いう事です。代々クロイスの石を保有していたからでしょうね」



 それは凄い。

 回復魔法の一つでも覚えれば、将来安泰だもんね。

 私のメイドなんてしなくても楽に食べていけるだろうし、あれ……?。



「クリスお嬢様どうなされました?」

「いや、アンナって正式では無いとはいえ、私のメイドやってくれてるわよね?」

「はい」

「お給金払ったこと無い……わよ……ね?」

「…………元から貰うつもりはありません」



 そうもいかないでしょうに。



「払うわ!」

「いいえ、別にいりません」

「払うってっ!」

「好きでやっているんですし……」



 私とアンナの顔が近くなる。

 なんて頑固な……誰に似たのかしら。


  


「はいはいはいはい、何の言い争いをしてるんですが、二人とも」

「あらミッケル」

「お二人らしいというか、とりあえず魔物は何かか逃げるように街道にって説明つけ足しておきましょう。助かりました、この付近の冒険者の力はクリスさんのほうが上ですらかね」



 言い方がまどろっこしいけど、要は私より弱いって事ね。



「逃げるようにって、それってどういう事?」

「そもそもスタンピードの発生ですね。純粋に普通のダンジョンの下に迷宮ダンジョンが生成された場合など、迷宮のほうにボスがいた場合、既存のダンジョンの魔物が暴走する場合もと書物に記録がありますし」

「ようは縄張り争い?」



 なるほどねー。種族は違えと戦争ってやつかしら。



「ええ、原因を追究しないと。この街、いいえこの付近の土地は死の土地になりますからね。問題は……」

「まだあるの?」

「連絡手段です、他の町の事も気になりますし、この状況で帝都までサウザン第二皇子やエルマ皇子に連絡ですかね。第一部隊が到着すれば鉱山も抑えれると思うのですが……ここまで来るのに部隊を分割するでしょうし。とはいえ何もしないよりはと、リアを伝令に出しました」

「げ、あの子を? 大丈夫? 言いたくないけど……」

「エマはあれであれ伝令部……一人しかいませんけど役職付きですからね。結構優秀なんですよ。勘も聞きますし」



 私達が話していると、第二派が来たぞー! と誰かか叫んだ。



「返り血を洗う暇もないか。ジョンは?」



 ジョンを探すとすでに後ろ姿が見えた。



「クリスお嬢様、ご無事で」

「クリスさん、死なないでくださいよ。ライが悲しみますし」

「二人とももね」


 わざとラインハルト呼びをしたミッケルは無視する。

 私も走り出した。

お読みくださりありがとうございます!


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