64 この世に万能な回復薬は無いと知るクリスお嬢様
お読みくださりありがとうございます!
短い……不完全燃焼なような回
城を出た後に冒険者ギルドについた。
アンナは馬車の様子を聞いてきます。と、言うので私一人である。
なぜギルドかと言うと、ラインハルトの母親に渡す薬をケラが作っていると聞いたからだ。
「にしても、込んでるわね」
私が呟くと、近くに居た冒険者が私の顔をみて返事をしてくれる。
どうして冒険者なのが判ったかと言うと、腰に剣を差しているからだ。
「中級ダンジョンが崩壊したって事でな、特別クエストが旨くてな。
周辺被害の確認、魔物があふれ出てないかの確認、生き埋めになって無いかの捜索。
まぁこれは形だけだな、ダンジョンが再生期間に入れば残った冒険者はそのまま食われるだろう。それにともって飯屋の出張所とか宝箱からでた買取出張所の手伝いとか、とにかく稼ぎ時」
そういえばアンナもそういっていたっけ。
「って事で職員や冒険者もそっちの割りのいい依頼に流れるからな。まともな依頼は無いだろう」
「ありがと」
「いいって事よ」
ウサギ耳が可愛い、ミィちゃんの顔が見えたのでミィちゃんがいるカウンターへと並ぶ。 私の順番が来たので途中で買った手土産を渡した。
「やっほ、ミィこれお土産、他の人と食べて」
ウサギ耳がぴょこぴょこ動いて顔が嬉しそうになっている。
「ありがとうございます! クリスさん。 本日はどのような?」
「あっこれ紹介状」
お城で貰った紹介状をカウンターに出す。
封書の裏には帝国の印とオジさん……皇帝のサインが入ってる。
「す、すぐに上に伝えてきます!」
「別に、そんなに慌てなくていいのに」
◇◇◇
ちょっとだけ汚くなったギルドマスター室に入った。
眼の下にクマが出来たハーフエルフで幼女にしかみえないギルドマスターケラが、私の顔を見て泣きそうな顔をする。
「厄病神が来たなのー……」
「だれが厄病神よ!」
「ダンジョンの崩落で仕事が終わらないなのー……」
「…………なにかごめん」
それに関しては本当にごめん。
「でも、よく考えて」
「なの?」
「私関係ないわよね? アルベルトに誘われて行っただけだし、なんだったら黒大蛇になった聖女様も助けたんだし」
「報告書は読んだなのー……でもクリスちゃんが、ファーフナー魔石を持っていかなければせいじょ様は担いで帰れたなのー」
私はポンっと手を叩く。
そういえば、聖女様が黒大蛇に変身したのは、私が持っていたファーフナー魔石のせいだったわね。
「魔石をどこかに預ければよかったなのー…………ギルドにも貸金庫はあるなの」
「その考えは無かったわ……いや、でも。ハンナさんの馬鹿孫を探すついでも会ったし……ねぇ」
何がねぇなのかは私にもわかってない。
「よし、この話はお終い! それより手紙預かってるんだけど」
ケラは私から手紙を受け取ると手を光らせる、そのとたんに封がスパッっと切れた。
風の魔法だろう、便利そうだなー……この辺はさすがハーフエルフって所かしら。
なのなのー。と、言いながら読み終わると私の顔を見てくる。
「アイザックって南の街にいる。ええっと……シーディスさん? に薬届けてくれって書いてるわよね」
アンナに教えて貰った依頼内容を伝える。
「なのー、ファル皇帝からの特別依頼なのー」
ぴょこぴょことケラは歩くと棚から一本のビンを持って来た。
たぶん薬だろう。
あれ? ちょっと気になった事をケラに聞いてみる。
「ねぇ……病気って高級ポーションやエリクサーとかで治らないの? シーディス様ってその、ぶっちゃけると皇帝の側室でしょ? お金は無いとは思えないんだけど」
「なのー? クリスちゃんお馬鹿さんなのー。エリクサーやポーションは回復能力を上げる薬なのー」
イラ。
ううん、子供に怒ってもしょうがないわよねー。
「いや、だから回復するんじゃないの?」
「病気のウイルスも元気になるのー」
「…………よくわからないんだけど、ようは悪化するって事?」
「なの! 呪いにはポーションが効かないのと同じなのー」
そう言われると私も風邪の時は薬を飲んだわね。
「まぁいいや、薬頂戴」
「絶対わかってないなのー……先ほど調合し終わった奴なの!」
ケラは私に手のひらサイズの小瓶を手渡してくれた。
真っ赤な血のような液体が入っている。
「絶対落としたらだめなのー!」
「わかってるわよ、子供じゃないんだし、ちゃんとバックに」
バックに入れようととして小瓶がすべる。
今貰った薬が廊下に落ちるとガラス瓶がパリンと割れた。
「「…………」」
「も、もう一個作ってあるなの……今度は絶対に割れないでほしいなのー」
「善処しますわ」
「…………なんで突然に敬語つかうなのー! クリスちゃんこっちみるなの!」
「急いでいるみたいだし、もういくわね!」
私は急いで扉をしめて階段を下りた。
背後からなのなのー。と、聞こえるけど流石に扉は開けてまで追っかけてこなかった。よかった……。
一階に降りると何人か私の顔を見て道を開けてくれる、なぜに……にしても、今度は南方かぁ。ゆっくりスローライフでもしたいと思っていたけど中々忙しいわね。
急がしそうなミィに小さく手を振ってギルドを後にした。




