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豪傑令嬢は追放されても落ちぶれない~聖女の立ち位置と王子は譲るんで自由をください~  作者: えん@雑記
二部

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59 この国が欲しい! って言ったらどうなったんでしょうね

 まだ用ががあるのかしら? 私としてはもう無い。

 サウザンが私の顔をじっと見ながら話してくる。



「君は随分とあっさりしてるな……その褒美はいらないのかい?」

「貰えるなら欲しいけど、無理してもらう物じゃないでしょ」



 

「黙って帰らせるのもな…………何か欲しい物はあるのか?」



 でたー! 欲しい物を聞いて用意してやるてきなアレね。

 これっていつも思うけど、超がつくほど頭使うのよね。

 安い物を言うと、馬鹿にしてるのか! って怒るし、高いものを頼むと礼儀知らず! って謎のルールがある。


 相手の懐がちょっと痛むぐらいの物が相場らしいけど、相手は王族だ。

 王族じゃなくても、私にはそんなのわかるかー! って叫びたい。



「冒険者クリス?」

「失礼しましたわ、考え事をしてまして」

「何でも好きに言うといい」



 だからそれが困るんだっていうの。



「でしたら、最初の予定通り剣が欲しいです。それも式典用ではなく実践用の」



 妥当な所よね。

 そこそこ丈夫な剣でいいのよ。



「実用品の剣か……」



 サウザンが言い渋る。

 おいこら! 何でもって言ったでしょうに! とは口が裂けても言わない。



「そんな顔をしないでくれ。どちらかというと自分は剣よりもこっちが得意でね」



 そういうとサウザンは空中で文字を書いて見せた。

 動作ではなく、本当に空中に文字が浮かんできたのだ。



「すご……」

「魔力を凝縮して空中に文字を書く遊びさ、もっとも自分以外が使うのを見た事ないけどね」



 さりげなく自慢を入れてくる。



「で、だ。剣となると兄か弟のほうが詳しい。兄はこの時間は訓練所にいる事が多い、この手紙を持っていってくれないかな? 自分は商談の続きがあるからね」



 そういうと、空中の文字が一枚の紙に張り付く。サウザンはその紙を一枚の便箋にいれて私に手渡してくれた。



「一人で?」

「お供のメイドさんがいるだろ?」

「そりゃアンナはいるけど、一緒には行かないの?」

「いかない!」



 語尾を強めに否定してきた。



「さっきも言ったけど、ほら、商談もあるからね」



 何か怪しいのよね。



「まぁ仕事の邪魔をしちゃ悪いから行くけど……アンナは道わかる?」

「お任せを」



 私達は変態商人と褐色メイド服奴隷と第二王子に頭を下げて部屋を後にする。

 練習場というと先ほど聖女様が向かったほうだろう。

 アンナに任せて私はその後ろをついて歩く。


 空気が段々とかわっていくのがわかる。

 気配というか、男臭いというのか……中庭を抜け訓練所のほうへ向かうと男性の雄叫びが強くなる。

 大きな厩舎があり、中に入るとさらに中庭がみえ男女三百人ぐらいの兵士が剣を持ち練習している、その姿は圧巻だ。


 私やメイド服のアンナが廊下側にいるというのに、その統制はくずれる事はない。


 私の側にラフな格好をした男性が立つ。



「何用だ」



 金髪男性の問いに、私の横にいたアンナの体がビクっとなった。

 アンナが、いつのまに隣に……と呟く。


 金髪男性の腰には剣があるので兵士の一人、立場的には上官って所かしら。

 眼は細く眉間のシワが濃い。



「こっちの女は気づいていたようだな」

「そりゃまぁ、あれだけ気配あったら気づくわよ」

「そうか……今後は気をつけるとしよう」



 金髪兵士と会話が止まる。

 特に話す事もなく、いや手紙を誰かに渡さないといけないんだけど、とりあえず兵士達の訓練を長めていると、殺気が感じた。


 殺気のほうを見ると、赤い髪の女性が鬼のような顔で私に突進してくる。



「チェストオオオオオオオオオオオオ!!」



 私もアンナも驚きだ。

 アンナにいたっては動けないでいるし。アンナの体、お尻部分を軽くポンっと押す。

 アンナは私から数歩離れた所に尻餅をついた。


 その間に赤髪の女性は剣を抜き右下に構えてジャンプ、そのジャンプ中に両手を使って一刀の構えになる。


 逆光を背にして上手いわね。


 でもまぁ…………。


 私は一歩も動かないでいると、長剣は私の横の廊下に刺さった。

 刺さった剣を握り締めた女性。

 背は低く髪は黒髪でジョンと似てるわね、瞳の色も黒。日に焼けた肌が健康的でヨシ、動物にたとえると小さいリスみたい。



「なぜ動かん! わかったぞ! アタシの剣にびびって!」

「いや、殺気が消えたし。ってか何用?」

「そ、そうだ! アタシ(・・・)のエルマ隊長から離れろ!」

「で、言ってるけど?」



 私はエルマ隊長と思われる男性に向かって話しかける。

 ため息をつくと、


「俺は、お前のではない……」


 と、ため息をつく。何となくだけどジョンに似てるかも。



「ち、違うんです! アタシのいい間違いです。それは言葉の間違いというか」



 赤面したナツがモジモジしている、うん。わかりやすい。

 私がにまにまナツをを見ているとアンナが突然、エルマ…………エルマ・フランベル! と叫んだ。




「ん? 知ってるの?」

「帝国の第一皇子では…………し、失礼いたしました。クリスお嬢様、手紙を」



 アンナが私に言ってくるので、私も急いで手紙を探す。

 探す。


 探す。


 こう、確かにポケットに……。



「うん、落とした」

「クリスお嬢様…………」



 アンナが思いっきりうな垂れる。

 しょうがないじゃない、落とす事は誰にでもあるのよ。誰も悪くない。



「ええっと、サウザン第二皇子から手紙を預かって……いや、預かっていたんだけど落としましたわ。実用的な剣が欲しいって言ったら、兄に手紙を手渡せって」

「…………そうか」

「ナツさーーーーんーーーーーー」




 可愛い声が聞こえてくる。

 声のほうを向くと、ぽよんぽよんと弾ませた聖女様が、私達のほうへ走って来た。



「あら、聖女様」

「クリスさん! なんでこちらに?」

「そっちこそ……」

「わたしはナツさんの治療で……ナツさんが隊長に危機が迫ってる予感がするって走り出しまして、お、追いかけてきたんです」

「そ、そうだ! 離れろ! クソ女!」



 ナツは私に向かって、野良犬を弾くように手をシッシと振ってくる。



「サウザンに……セーラ……それとクリスと言ったな」

「自己紹介がまだだった……ええっと」

「いらん」



 エルマがぶっきらぼうに答える。



「サウザンとラインハルトに話が通してあるなら俺からは何もいう事は無い、父の所にいって宝物庫を開けさせる」

「ふぁっ!」



 思わず変な声が出た。



「ほ、宝物庫って……」

「俺の所に来たという事は、それなりの剣を渡せという事だろう? 数回斬ったぐらいで折れるような剣を渡すわけにはいかないんでな」

「た、隊長! こんなクソ女のいう事を聞くんですかっ! よわっちいかもしれないのにっ。アタシでさえ、そんな立派な剣もらった事ないんですっ! そ、そうだ、決闘しましょう! 隊長とこのクソ女が戦って、隊長が勝ったら褒美はなし。これで解決です」



 イラ度がもう急激に上がってきた。



「何一つ解決してないんですけどー! ってか、私は褒美をくれるって言うから、わざわざ来てるのに、要らない剣押し付けられたり、好きに言えっていうから考えて言ったら決闘しろ。とか、文句出るなら最初からいらないって言ってますけどっ!」

「ナツ、個人的な感情を出すな。クリス・コーネリア」

「何よ」

「連隊長エルマ。第一皇子エルマ・フランベルとしても謝罪をしよう」



 エルマが私に頭を下げてくる。

 いや、だからね。この人達は何で直ぐに謝るのか……私の怒り度が急激に下がっていく、逆に反逆罪に問われるような気がして逆の意味でドキドキしてくる。



「そ、その皇族がポンポン頭を下げなくても……そ、そんなに怒ってませんし」

「そうか……では、試合をしよう」

「ふぁっ!?」


お読みくださりありがとうございます!


次回は7/7~7/9日を予定しています(おそらくは7日

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― 新着の感想 ―
[一言] ラ、げふんげふん、んんっ。ジョン→脳筋。 ナツ→脳筋。 エルマ皇子→脳筋! 脳筋率高いなこの国w
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