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豪傑令嬢は追放されても落ちぶれない~聖女の立ち位置と王子は譲るんで自由をください~  作者: えん@雑記
二部

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57 聖女様とクリス。のちに褒美が貰えると聞いて

 私が黙って立っていると、アンナが突然に膝をついた。

 聖女様は別で普通に立っている。



「ああ、顔を上げてくれたまえ。公の場じゃないからね。ハッハッハッハ……」



 サウザン・フランベルと名乗った覗き男は乾いた笑いを出す。

 アンナが礼儀よくしているという事は偉いのかな?

 アンナが小さい声で、帝国第二皇子のサウザン。フランベル様です。と、教えてくれた。



「なんですと! 皇子!?」



 私もすぐに膝をつく。

 頭の上からサウザン第二皇子の困った声が聞こえてきた。



「いや、普通でいいよ。君と自分の仲じゃないか……堅苦しいのは嫌いなんだよね……」

「で、あれば、普通に発言しますけどよろしいでしょうか?」

「いいよ、ってかじゃないと話が進まないからね」



 私は頭を上げて立ち上がる。膝の部分を手で払うと改めてサウザンと横の兵士を見た。

 横の兵士にいたっては、覗きの時に追いかけてきた兵士である。

 私をみては何か言いたそうな顔をして、何も言わない。

 うう、やっぱり顔をばっちりと見られていたか。


 

「ええっと…………初めまして(・・・・・・)F級冒険者のクリスといいます」

「そうだな。うん、自分も初めましてだ。こちらの情報では北のグラッツ王国で守護貴族であるコーネリア家の娘。クリス・コーネリアと聞いているけど、間違いだったかな?」

「間違いでしょうね」



 即答する。

 全部あってはいるけど…………大きな間違いがあるからだ。



「この場にいるのは、冒険者としてのクリスですので。それに追放されてますし」

「なるほど、では自分も代理を頼まれたサウザンという事でいいかな、もちろん呼び捨てでかまわない。弟が世話になっているね」

「弟って?」

「いやだからラインハルトの事だよ…………あああっ! そっか、そういえばミッケル君が言っていたな……ごめんごめん」



 何か一人で納得しているサウザンが胡散臭い。

 アンナを横目に見ると、アンナは私の視線に気がついて微笑み返して来る。

 また一人だけ仲間はずれにされた気分だ。


 そのうちグレルわよ。



「そのラインハルトって人にはあったこと無いけど、その私の婚約者を勝手に名乗ってたネクラの弟の事よね。あと兄弟仲は悪いって噂聞いたけど……」

「いやはや、勝手に名乗っていたわけじゃないんだけどなぁ。ラインハルトに興味あるかい?」

「これだけ帝国調査団に協力してるのに、挨拶も出来ない王子よね。一度会って見たいわ」



 私が言うとサウザンが嬉しそうな顔をしてくる。



「勘違いしてるかもだけど、私が会いたいって言ったのは一度殴りたいって意味よ。流石に公の場じゃむりだけど、裏でならいいわよね?」



 笑顔が引きつり始めた。



「…………ハッハッハ、本当は今日会える(・・・・・)予定だったんだよ。弟の代わりに謝ろう」 

「別にいいですけど……」

「シーディス様がご病気でね。おっと……ラインハルトの母君だ」

「あー…………」


 あーあのミラクルジャンの三人が酒の席で言っていた国王の愛人って人よね! とは流石の私でも口に出す前に仕舞いこんだ。

 いや危なかった。


 サウザンが私の言葉を口に出す。



「あー?」

「いえ、随分と心お優しい方で」

「…………突然の貴族なまりとか怪しいけど、そう受け取っておこう。ラインハルトも任務があるからここに残るって子供みたいな事言っていたんだけどね、自分と王が適当な命令書を作って無理やり行かせた。だから、ラインハルトを許してやってくれ」



 サウザンは第二皇子なはずなのに、私に頭を下げてきた。

 いくら公務じゃないからといって、余りの事にちょっと呆然する。いやいや、いつまでも頭下げささすわけには行かない。



「大丈夫、大丈夫ですから! あの、皇子なんですよね? 頭上げてください」

「っと、許してもらえて助かるよ。代わりに帝国調査団から剣をプレゼントしようかと思ってね」

「本当!?」



 それは助かる。

 安物の剣ならそれこそ銀貨五枚ぐらいで買えるけど、戦闘中に折れたりしたらたまった物じゃない。

 その点、前に使っていたのは丈夫だったなぁ……あれぐらい丈夫なのが欲しい。



「ぜひその商売を任せてくれと、言った商人を今日は呼んである」

「えっまさかっ!?」



 私が驚くと、サウザンは小さい声をだして、大丈夫こっちの顔は見られて無い。と、一言付け加えてくれた。



「クリスお嬢様、先ほどからサウザン様と小さい声で喋ってますが、また何か……?」

「な、なんにもないわよ」



 アンナにいい訳をしていると、サウザンがセーラに向き直る。



「さてセーラ済まないが、訓練所でナツが呼んでる」



 サウザンが聖女様に話すと、聖女様は、はい! と、元気な声をだす。



「訓練所? 変な訓練じゃないでしょうね。ウチの聖女様を変な訓練に……」

「しないしない、ナツは連隊副長だし【ウチの】ってセーラはいま城で管理してるんだし、君達のってわけじゃ」

「うぐ、正論め。ようは聖女様を変な事にまきこまないでよって意味よ」



 話を聞いていた聖女様が小さく手を上げた。



「何?」

「あの、もう私。聖女ではないんですけど、いえ、一度たりとも聖女と思った事は本心ではなくてですね。クリスさんはなぜ聖女様と呼ぶんでしょうか……」

「あー…………さて、サウザン様。その商人の所へご案内お願いしますわ」

「露骨に話題変えたねぁ君、まぁセーラも良いじゃないか、それだけ親愛をこめてるって事さ」

「そうなんでしょうか……」



 どうも、最初に聖女様って覚えてから聖女様って呼ぶ癖がついたのよね。

 他の人はちゃんと名前で呼んでるけど私としては聖女様って呼んだほうがしっくり来る。


 それに、よく考えれば私にとっては、やっぱり聖女様である。

 だって聖女様がいなかったら、私はアーカル王子と結婚していて、今頃は王太子妃っていうのかしら。

 超がつくほどつまらない勉強をさせられて、いや、女に学力はいらないって言われそうね。反発する私は剣術も辞めさせられて、塔の中に幽閉されていたかもしれない。

 そして周りから世継ぎはまだか? って迫られて、出来なかったら地下牢に閉じ込められるんだわ……。



「まぁ。と、いうわけで聖女様は聖女様よ」

「まったく意味がわかりませんっ!」

「でしょうね」



 私は聖女様の頭を軽くポンポンする。

 納得言ってない顔なんだけど、気にしないし私が結論を変えないとわかるとため息をついた。



「さて、じゃぁいこうか」



 サウザンが先頭に立ち私達を案内しはじめた。

お読みくださりありがとうございます!


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― 新着の感想 ―
[一言] >> なぜ聖女様と呼ぶんでしょうか……」 クリス「だってタイトルに書いてあるし(メタァ)はっ、立位置を譲るってことは私ってば聖女だったのでは!?」 読者「ぷげらwww」 クリス「あんたが!泣…
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