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豪傑令嬢は追放されても落ちぶれない~聖女の立ち位置と王子は譲るんで自由をください~  作者: えん@雑記
一部

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51 クリスつり橋効果に騙される。かもしれない。

 ヘイヘイ黒大蛇びびってるー!

 と、叫びながら私が挑発すると、黒大蛇の赤い目が私をとらえた、その口からは赤い舌がピロピロと伸びて威嚇してきた。

 そういえばヘビの耳ってあるのかしら?

 元は聖女様だからきっと聞こえてるわよね、シャーシャー言ってるし。



「……随分と楽しそうだな」

「楽しいわよ、図体ばっかりでかい奴を誘導するのは。ジョンも挑発すればいいのに」

「…………キャラじゃないんでな」



 ジョンは黒大蛇の皮膚を綺麗に斬っていく。

 斬っていくと言っても薄皮で、裂けた皮膚からは青い血液が流れでている。

 その液体が空気中に消えていくと傷も無くなっていく。


 黒大蛇は尻尾を大きく旋回させジョンを狙っている、当たれば大きな怪我になるだろう。



「当たればね」



 私が小さく呟くとおり、ジョンはその攻撃を上手くかわしていく。

 ゆっくりであるけど魔方陣のほうへ誘導している。

 あともう少しだ。



「ヘイヘイ! 聖女様がいないと何にも出来ないヒモ魔物ー! こっちこっち」



 私となぜか呆れ顔のジョンは綺麗に魔方陣の端へと後退した。

 そこにはミッケルがスタンバイしており手には羊皮紙を持っていた。



「それは?」

「魔法を発動させるアイテムですね。先ほど無理やりですけど呪文を書きました。

 お二人とも頼みましたよ」



 ちらりと見せてくれる羊皮紙には、物凄い細かい字がびっしりと書かれている。

 私がこれを書けって言われたら三日はかかる、飽きるから。



「「了解」した」わよ」



 魔方陣の中心に黒大蛇が乗った。

 私は黒大蛇の金属のような皮膚を駆け足で登っていく。

 後ろにはジョンが同じようについて来ている。



「十秒後!」



 私がジョンに合図すると、心の中でカウントダウンを呟く。


 九。


 黒大蛇が牙を向けてくる、牙の隙間から液を飛ばしてきた。

 毒!?

 この後に及んで聞いてない!

 よそ見をした瞬間に足が引っ張られた。ジョンが私の足をつかんで起動を代えてくれた。



 六。



 ジョンに感謝しつつ、ジョンの肩を思いっきり蹴った。

 私の体は空中にジャンプした状態だ。

 下を見ると、その蹴られたジョンは振り落とされないように黒大蛇に剣をつき立ている。黒大蛇は痛みのせいなのか暴れはじめた。



 残り二!



 黒大蛇の頭を踏み、そのまま落下する。

 狙うは聖女様が腕で守るように持っているファーフナーの魔石。



 ゼロ。



 狙いをさだめた私は星斬りを使いまっすぐに魔石を斬った。

 下から上がってきたジョンも胸の下にあるクロイスの石を貫き、その剣を素早く抜いていく。


 黒大蛇が大きく口を開け叫ぶ。

 足元の魔方陣が突然に光った。ミッケルが魔法を発動させたらしい。

 本能なのか罠に掛かった黒大蛇が魔方陣から出ようとすると、見えない壁に阻まれて動けないでいる。



 魔方陣のある地面に着地すると、その横にジョンも着地する。



「……その剣」

「ん? あっ……」



 私の手にした星斬りは刀身の部分が折れていた。

 はっはっは。と、ミッケルが魔方陣の上にいる私達の場所へよって来る。



「魔石の力に耐え切れなかったのでしょう」

「どーするのよ! 借り物よ、借り物!」

「デートでもすればいいんじゃないんですか? おや、ジョン嫌な顔してますね。もしかしてクリスさんが他の男とデートをするのが嫌とか」

「…………殺すぞ」

「え、そ、そうなの!? それってアレ私に惚れたとか」

「………………」



 ん?。

 私が惚れたとかって言ったのは、もちろん冗談だ。

 ジョンが無言になったので変な空気が流れてくる。



「じょ、冗談よね? そりゃ好かれるのは嫌いじゃないけど。ジョンなら女性より取り見取りなんでしょ? 私みたいな冒険者に、そのねぇ……」



 何が【ねぇ】なのか、自分で言っていてもよくわからない。

 ってか、ジョンが無口なのが余計に輪をかけている。



「おい!」

「は、はい!」



 ジョンが呼ぶので、思わず声が裏返った。



「ちがう、お前じゃない」



 そういうジョンはミッケルを見つめている。



「え。えええええ、アンナの言うとおりジョンって男が」

「違うっ! ……馬鹿がお前は大蛇と周りを見ろ」



 あっ。急いで黒大蛇をみる、黒大蛇の輪郭がぼやけていき壊れた魔石を埋め込まれた一人の少女が天井付近から振ってくる。

 そりゃもうストーンと。



 魔石だけに。



 隣に走っているジョンと眼が会うとジョンは変な眉を潜めて私をみていた。

 いけないいけない、笑ってはだめよね。

 私とジョンは全力でそれを受け止めにいき、聖女様をキャッチした。


 大きな胸の下に隠れるようにしてあった魔石は亀裂が入っており、赤と青の血が混ざって流れている。



「ぜえはぜえは……いやーお二人とも早いですねー」

「お前が遅いだけだ」

「あなたがた二人の基準でしたら……いえ文句を言っている暇はないですね。ちょっと失礼」



 ミッケルは聖女様の魔石のあった場所をみる。

 直ぐにぺらぺらの紙? を張っていく。



「それは?」

「魔力をしみ込ませた湿布ですね、直接回復魔法かけたらどうなるかわかりませんので事前に用意しておきました。まぁ後はこの子(・・・)は大丈夫でしょう。よっこらしょっと」

「じゃぁ帰りましょうか」



 ミッケルが聖女様を背負い私が魔方陣から一歩で用途すると見えない壁に鼻をぶつけた。



「いったあああああ。壁! 見えない壁がまだある!? この壁って黒大蛇を逃がさないようにしていた壁よね?」

「おや、やっぱり気づきましたか」



 ミッケルが喋り終わると、近くの天井が崩落した。



「え?」「おい、ミッケル……」



 ミッケルは聖女様を魔方陣の上に寝かすと魔方陣の上に座り込む。

 なぜ座る。ってか逃げないと危ないのでは?



「いやーやっぱりダンジョンの崩落が始まりましたか」

「やっぱりって? いやそれよりも出れないんですけど」

「ええ、二つの魔石に共鳴して魔力が爆発的にでました、その結果魔方陣に吸収される魔力を大幅に超え、予定よりも強力な結界が出来上がりまして――」



 ミッケルの説明が続く中、あちらこちらでダンジョンの崩壊が始まっている。



「御託はいい。結界は破れないのか?」

「ええ、破れません」

「どおおおおおおおすんのよおおおおお! 聖女様助けたって生き埋めになったらだめでしょ!」

「一応仮死状態の毒薬があるんでこれを皆で飲めば助かるかもですね。その場合お二人なら新しい迷宮ボスに生まれ変わる可能性も……いやー私は来世はなんでしょうね、知恵のある参謀辺りになりたいですけど……」

「そんな説明求めてない!」



 私は結界を蹴る、殴る、折れた剣で斬る。

 ジョンも持っている剣で斬るも壊せた様子は無い。



 ミッケルは何かの薬を聖女様に飲ませている所だ。

 あれが仮死状態の薬なのね。



「さて、……ジョン……最後にクリスさんにいう事はないですか? どうせ雪月花の迷宮にいたら死ぬんです。最後ぐらい素直になりましょう」



 ミッケルは色々諦めた顔をしている。

 話を振られたジョンは相変わらず、不機嫌な顔だ。

 そりゃそうよ、だって死ぬんだから。



「え、なにが。ちょっと本気で死ぬの」

「ええ。崩落が始まってますし、地下四二階に埋まるだけですし。ジョンっそれとも私の口から言いましょうか?」

「…………ふう…………クリス・コーネリア」

「な、なにっ」

「その……なんだ……いい剣を持ってるな」



 誰かかこけた音が聞こえた。

 顔を向けるとミッケルだ。



「この後に及んで何なのよ! 剣は折れてますー! 言いたい事あるなら早くしてもらえますか? それとも男性の癖に女々しい性格なのかしら」



 私も混乱していて、普通の喋りと貴族なまりが混ざる。

 ひい!

 私達がいる直ぐ側でも天井から岩が降ってきた。

 ギリギリ当たらない物、すぐに巻き込まれるだろう。

 こ、この岩のしたに潜ればグチャグチャにはならないかも?



「クリス」

「何よっ!」

「その、想像より綺麗だな、会えてよかった」

「…………どうも…………なに、プロポーズ?」



 突然のジョンの言葉で周りの音が気にならなくなってきた。

 こういう状態の事を、つり橋効果って言うんですよクリスお嬢様。と、あんなの声が聞こえたきがした。

 否定をしてこない真面目な顔のジョンと私の視線がかみ合った。


 ほらジョンが変な事いうから天井も……。

第一部が本当は今日終わる予定が、まったく終わらなかったです

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― 新着の感想 ―
[一言] 土壇場のプロポーズ? お死合わせに!(縁起でもない!) まあきっと何とか生き残るでしょ、たぶん。 なぜならば第一部が終わる予定だったということは第二部があるからだ!(メメタァ!)
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