47 閑話・奴隷女が聖女であった話(別視点差分的な話
私は日記を読み返した。
最初のページは後から書き直したのを思い出す。
私の名前はセーラ、孤児で奴隷。
私を飼っていた主人様から何か石を見せられたのは覚えている。
闇商人から買ったアイテムらしく、持ってるだけで魔法が使える。と言っていた。
でもご主人様は使えなくて私達奴隷へ今日も暴力を振るってきた。
アイテムを捨てて来いと命令された。
魔法が使えるのなら私の人生も違っただろうか?
そう思って目を開けると血の海にいた。
気づいたら全員死んでいた。
ご主人様はもちろん、同じ身分の奴隷や、ご主人様の召使い。
他にも多数の魔物の死体が私を中心に散らばっていた。
放心状態な所、沢山の獣の足音が聞こえた。
私は辺りを見回すと、白馬に乗った王子様が私を助けに来た。
アーカルと名乗り、照れながら王子をしていると自己紹介をされた……昔みた絵本みたい。
「私の記憶はここで途切れている……」
日記のページを開く。
次に記憶にあるのは、アーカル様と狩りに出かけた時だ。
アーカル様が怪我をし、私がその傷を治した。
アーカル様は無詠唱で回復魔法を……と、驚いていたけど私も驚いた。
私セーラにそんな力があるのは初めてしった。
女神アルティナ様に祈っていたからだろうか?
数ページ飛ばす。
「思えばこれが悪夢の始まり」
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気づけば裸の王子様が私の横で寝ていた。
ここはどこだろう?
気づけば小さく笑っていた。
ページを飛ばす。
私の足りない頭で現状を書く事にした。
今日から日記をつけよう。アーカル様に言えば日記帳をくれると思う。
覚えている所から書こう。
次のページへをめくった。
婚約パーティーに呼ばれた。と、思う。
思うというのは記憶が曖昧だからだ。何か長身の女性を見かけたきがする。
この私がアーカル様と婚約など恐れ多い……奴隷の身であったのにどうすれば。
ページが開く音だけが部屋に響く。
私が婚約者になり、王国の人たちがギスギスし始めた。
私が婚約者で色々と嫌な人がいるらしい、嫌な人はどうしましょう。
うん、アーカル様に言って殺してしまおう。
鷹の団という隊長も私やアーカル様にたてついて来た。
そうね、この人も死刑にしましょう。
違う! こんな日記にはいやだ。
まだ、まだ間に合うはず……転移の門だ、私は考える……あそこから逃げれば。
日記を読んでめまいがする。
半分以上知らない事だからだ。
「……転移の魔方陣の起動は何となく覚えている……」
夢か現実がわからない所で何度も起動させた。
座標をどこかダンジョンの地下にすれば。
日記には座標の変え方と数値が乱暴に書かれていた。あとは魔力だけ。
「アーカル様も私がいなくなれば目が覚めてくれるはず……」
部屋の扉が突然開いた。
振り返ると、半裸のアーカル様が立っている。
「愛しいセーラ。真っ暗な部屋でどうした……またいじめられたのか? 今度は誰を追放……いや、殺せばいい?」
「ッ…………大丈夫ですわ、アーカル様。少し寝ていたみたいで」
「ふ、なら安心だ。さぁこっちにおいで」
日記をしまい私はアーカル様についていった。
◇◇◇
アーカル様の寝室からコッソリと抜け出した。
転移の門。
そう呼ばれる所に私は一人で立っている。
私の中にある誰かの知識。
魔方陣の起動装置の一部を書き換えた。
これで遠くにあるダンジョンの地下へといける。
魔方陣の中央に立ち、指先をナイフで切った。
とても人と思えないような青い血が魔方陣に染み込んでいく。
「あはははは。これじゃ…………化け物ですね」
転移室の出入り口が騒がしくなった。
「セーラ! どこへ行く。お前がいなくなったら――――」
アーカル様の姿が二重三重になり最後まで声は聞こえなかった。
気づけばダンジョンの中にいた。
周りには青白い花が咲き綺麗な場所だ。
床には朽ち落ちた魔方陣が見えた。
その端に、もぞもぞと動く何かが見える。
「ま、まものっ! ……………………ふふふ、はははははは。魔物? 私が人間じゃないのに何を恐れる。魔力よ、魔力が欲しい。枯れる枯れちゃうの」
頭を左右に振った。
思考が変だ。
最後は一人で死ぬべきだ。
あの人を助けなければ…………。
私はゆっくりと怪我をした人に近寄った。
人相が悪い人の怪我を治したら話しかけてくる。
「綺麗な女だな、ありがとう。俺の名はクラインっていうんだ。その中々セクシーな服だな」
「これは……その寝室から来たので」
クラインという男性は私を見てはニヤニヤをしている。
私が身構えていると、突然抱き寄せてきた。
「おっと、抵抗はするなよ」
「っっ!」
私は襲われると思って体を小さくすると、私を抱いている力は優しくなる。
「大丈夫だ、大丈夫。きっと助かるから。こう見えても俺、憧れの女性がいるんだ。その人ために雪月花ってクソたけえ花が生えてるというダンジョンに潜ったが、いやー七日はさ迷って」
「そうなんですか…………?」
「そうそう」
クラインという男は私に色々と話しかけてくる。
面白い男だ。
私という存在が怖くないのだろうか?
私はオナカガヘッタ……食べてしまおう。マリョクガナイ。
ヒトウマイ。
私は男を突き飛ばした。
「いてえええええって」
「逃げて…………たぶんあっちに階段っぽいの見えるから……」
最後の力を振り絞り男を逃がさなくては……遠くから何かか落ちた音が聞こえたきがした。
入れようと思って入れるタイミングを逃して入れたお話
ちょっとだけ聖女様の事情がわかればいいなぁ




