46 回り回って腰振る聖女様
息の荒い聖女様は、かろうじてお久しぶりです。と話しかけてきた。
ガクガクと震えているので体調を心配する、直ぐにおでこに手をあてると熱は無く、死人のように冷たい体温が返ってきた。
「冷えすぎじゃないの! クライン、火は?」
「ボス、道具がねえ」
「アツイ熱い暑い熱いあつい熱い熱――――」
聖女様は突然叫ぶと服を脱ごうとしだした。
それをクラインは抱きつくようにして必死に止める。
「な、なにっ」
「ボス、俺にもわからねえ。俺が落とし穴に落ちたらこの子がいて怪我を治してくれたんだ。その後にこんな調子でどうしたらいいのか、ほっとくわけにもいかねえし…………おっぱいは大きいし、聖女様ってなんだ?」
「あんたなんか、この子の言葉一つで首が飛ぶ偉い人よ」
「まじかっ……今のうちに恩を売れば」
聖女様を見るとガクガクと小刻みに震え歯を鳴らしている。
私を見ると突然飛び掛ってきた。
「ボスっ!」
「ちょ、どこ触ってるのよっ! 女の子同士は趣味じゃないっクライン黙ってみてないで止めなさいっ!」
私の全身を強く触る聖女をクラインが必死に引き剥がす。
蹴飛ばせば早いんだけど、聖女であり女の子相手にそれはちょっと。
引き剥がされた聖女をみると、ポーチを持っていてポーチがほんのりと光っている。
「あっ大事な魔石! 返しなさいよっ!」
私から取ったファーフナーの魔石を大事そうに抱え込むと芋虫のように丸くなる。
「ボス、魔石って?」
「子分は要らないって突っ込むのも面倒になってきたから、そのまま進めるけど……ハンナお婆ちゃんからクラインに、そこの聖女が持ってる魔石を渡して欲しいって依頼受けていたのよ」
「ボス、俺は感動してる。俺にそうまでしてくれるとは……」
ハンナお婆ちゃんの頼み以外なら絶対に受けない。
「クラインが冒険者になって家を出るのでも、もう帰ってこないつもりでも、それを売ったり使ったりで役に立ててくれっていう、ハンナお婆ちゃんの気持ちのこもった魔石よ」
「ばあちゃん……すまねえ……以前は、叩けば金がでるばあちゃんかと思って、何度も叩いたのに。家に金がねえと言いながら、こんなヘソクリがあるなら、もっと叩いておけばっグフッ! いてええええ」
はっ! 無意識にクラインを蹴り飛ばしていた。
やっぱクズはクズだったか。
吹っ飛んだクラインに向かって、先ほどまで芋虫のようになっていた聖女様がクネクネと動き出す。
近くによると聖女様の体が発光しだした。
「ボスに蹴られた痛みが消えていく……」
「回復魔法?」
聖女様は虚ろな目のまま、また体を丸める。
「ええっと、どうしたものかな…………移動しましょうか」
「わかったぜボス!」
聖女様を抱き上げると赤ん坊のように私にしがみついてくる。
これじゃ剣は振れないなぁ……。
「魔物来たら、クラインをおとりにするから」
「そ、そんなボス……折角会えたのに!」
「探してはいたけど、そんなに会いたくもなかったというか。あ、そうだ何かハンナお婆ちゃんに見せればわかるような、クラインしか持ってない私物頂戴」
「はぁ……」
クラインはポケットから銀硬貨を一枚くれた。
流通している銀貨には見えなくて何かの記念硬貨だろう。
「数百年前の硬貨らしくて、換金しようとしたら何所も断られた。価値はないかもしれないけど、婆ちゃんの金庫から盗った奴だし証明になるかな」
「ん、ありがと。これでクラインが魔物に食われても冒険者になったって伝えとくから、安心して食われてね」
「ボ、ボス」
雪月花の花畑を足でかき分けながら進む。
これ一本一本が金貨数十枚となると、とんでもない事をしているような。
「ボス、雪月花の花が枯れちまうんだけどなんでですかね?」
クラインのポケットから枯れた雪月花の花がふらふらと動いている。
「………………雪月花の花は直ぐに処理しないと枯れてしまいます…………処理しますか?」
「ッ!」
耳元で突然喋りだしたので驚いてしまった。
「聖女様? その大丈夫?」
「…………聖女ではありません…………なぜ助けたのですか」
「なぜって、そりゃほっとけないでしょ。それにクラインの怪我も治したんでしょ?」
「…………記憶に無いのです」
「ってかどうやってここに、王子は? 一緒にいるんでしょ?」
私の耳元で頭をふると黙り込んだ。
「この先に壁があります。そこの壁を右に行ってください」
言われた通りに進むと本当に壁があった。
聖女様は今度は寒い寒いと言い出して私に抱きつく。
クラインと顔を見合わせて歩くと、床一面に半壊した魔法陣が書かれた場所へとついた。
「ここは?」
「セーラを……置いていってください、ゲホッゲホ」
置いていけといわれても、こっちは帰り道もわからないのに。
聖女様が咳をすると青い液体が口からもれる。
「血……?」
「ひい、口から青い血が化け物ゴフッ!」
クラインは強制的に黙らせた。
「暴力はいけませんっゲフッ」
聖女様はクラインに回復魔法をかける。痛みが無くなったのかクラインは四つんばいで私達から少し離れていった。
私は無い知恵を必死に働かせて考える。
そして、一つの答えを聖女様に聞いてみた。
「…………もしかして、後ろの魔方陣って城にあったやつと似てるし、そこに転移した?」
「は……い……あの魔石をお返しします。ここから去って」
私がポーチを受け取ると、聖女様の体がガクガク動く。
手足と首が不規則に動いてそこらの魔物より怖い、ってか夢にでそう。
「ひいいいい、ボ、ボス。こいつは」
私は返してもらった魔石を聖女様に手渡すと、聖女様はやや疲れた顔で私達を見ている。
魔石を回収した。
聖女様が、またガクガクと動き出す。
今度はむりやりよつんばいに、獣のようだ。
そっと魔石を手渡した、聖女様が疲れた顔で私達を見ている。
ふむ。
魔石を素早く回収した。
聖女様のケイレンが酷くなってきた、顔の表情が歪みよだれをたらしている。
よつんばいなので大きな胸の谷間が見え、こぼれそう。
背後から、もう少しでほにゃららが見えそうだ! と声が聞こえるのはクラインの声。
さっきまで逃げようとしていたのにたくましい、後で蹴り倒そう。
魔石をそっと地面に置くと、聖女様が昆虫のように跳ね上がり、魔石を守るように地面にうつぶせになる。
青い血を吐きながら私を見る顔は、とても疲れてそうだ。
私はそっと魔石を回収しようとする。
聖女様は素早く私の手をつかんでいて、荒い息のまま喋りだす。
「あの…………遊んでませんか……?」
「………………うん」




