42 クリスお嬢様は情に弱いですね
普通の人なら目の玉が飛び出るぐらいの金額の食事をおごって貰った。
ミラクルジャンの三人は、食べるのを食べたらさっさと帰った、ってかあの三人って鼻が利くというか、飲める場所と奢ってくれる人が居れば何所にでも現れるわね……。
「くそ、厄病グループがっ!」
「あの三人のこと?」
「そう。あいつらが関わると稼いだ金がゼロになるってギルド内でも噂があるんだ。そのくせ、どんな冒険でも普通に帰って来る」
「まぁそのグループを誘ったのは私達なんだけどぉ」
「…………うぐ。す、すまない」
さて、ご飯も頂いたし解散しますか。
「じゃ、そういう事で、いきましょかアンナ」
「はい」
「えっ!?」
私が歩き出そうとすると、そのズボンを引っ張られる。
見ると、ちょろベ……もといアルベルトが必死に腰の部分の生地を掴んでいる。
「そ、その二人とも、夜景が見れる場所があるんだ。よかったらっ!」
「行かないわよ」
「クリスお嬢様が行かないのであればわたくしアンナも行きません」
「ってか離しなさいよっ! ズボンが破れるでしょうかっ」
アルベルトの目が光った気がした。
より強く引っ張ってくる。
「アンナ、アルベルトを排除して!」
「まてアンナさんっ! 協力すればクリスさんのハレンチな姿がみれるかもしれないぞ!」
アンナは直ぐにアルベルトの背後に回ると、アルベルトの手を排除…………してないわねこれ! 引っ張る強さが増えた。
「はーなーせー!」
「一回だけ、一回だけでいいから僕とパーティーを!」
ビリっと嫌な音がすると、腰の部分からズボンが破れた。
行き場の無い力でアルベルトとアンナが吹っ飛んだ。
「いててて…………」「お、お嬢様。可愛い下着で……」
「二人とも死にたいようね」
私は残った布を腰に捲きながら接近する。
一人は青ざめて、一人は鼻血を出している。
アルベルトに回し蹴りを放って、アンナには軽くチョップをした。
「アンナ」
「は、はいっ!」
「アルベルトの上着はいできて」
直ぐにはいでまいります。とアンナは走って行った。
私はアンナの持ってきたアルベルトの上着を腰にまく、これでもまだセクシーすぎる。
「ふ、服を買わせてくれ…………」
よたよたと上半身裸のアルベルトがよって来る。
ってか右手が光ってるし回復魔法?
「魔法?」
「と、当然。C級の僕だ、これぐらい出来て当然、自慢じゃないよ……グフ……」
その割には口から血が出てる。
蹴りに力入れすぎたかな? 手加減はしたんだけどなぁ……。
◇◇◇
冒険者ご用達のお店で新しいズボンを買う。と、いうか買ってもらった。
「本当にそんな安物でいいのかい?」
「あのねーあんなヒラヒラがついた服来て冒険できるわけないでしょうか」
と、いうものの最初に連れて行かれた店は高級の店で、何重にも生地を重ねたスカートや、魔法の力で防御力はあるけどスケスケの上着などが売っていた。
私が欲しいのは動きやすい服装である。
「一部の女性冒険者はしてるよ」
「それも凄い世界ね……」
「そうだろう? だからクリスさんも着るべきと思うんだ」
「スケスケなのを?」
力強く頷くアルベルトを見ていたら自然にため息が出た。
折角羽を休めそうと思ったのに凄い疲れてきた。こう考えるとジョンやミッケルは偉大だったわね。そんなに疲れなかったし。
「どうでもいいけど、服も買ってもらったらいよいよ別れるわよ。それにほらパーティーってもC級のアルベルトにF級の私がついていってもしょうがないじゃない」
「それもそうなんだけど、一回だけでいいんだ。パーティーを組まないと入れないダンジョンがあり昇段も出来ないんだっ!」
私としては雪が積もる前に王国に行きたい。
アンナだってその気持ちと思うし。
「クリスお嬢様、一先ず話を聞いてみましょうか?」
「いいの? その、下手したら春まで入れないわよ」
ジャン達の話じゃないけどグラッツ王国の冬は厳しい。
「はい、ですから内戦所じゃないと思いますし。こちらにはれーだーがあります。十年もまったんですし少しぐらい遅れても」
うん下手に内戦で兵を動かすとどっちも死ぬもんね。
グラッツ王国が数百年以上存在する理由だ、冬が厳しく攻め込む旨みがないから。
それにグラッツ王国が他国に攻め込んだとして冬になり退路を立たれたらやっぱり終わる。だから攻め込む事もあまりしない。
「しょうがない、アンナの顔を立てて話だけは聞くわよ。でもハンナお婆ちゃんの家に行ってからで良いわよね」
「ほ、本当か? 助かる。パーティーを組んでくれ!」
「やだ! はい終わり」
ハンナお婆ちゃんの家に行く前に喋るし……でもまぁ話は聞いてあげた。嘘は何一つ無い。
さて帰ろうと思った所にアンナの、クリスお嬢様……それはちょっと。と、苦言が入った。
仕方が無い……。
「他に組む人いなかったの? 冒険者なら沢山いるでしょ」
アルベルトは腕を組んで下を向く。
「男とは組みたくない!」
「清々しいほど、はっきりと言ったわね…………じゃぁ女性は? もてるんじゃないの? C級なら」
「それがまぁ……その【紅の白狼】って聞いた事あるだろ?」
「全然!」
アルベルトは【紅の白狼】を説明してくれた。
女性五人からなるB級~D級の冒険者で、リーダーのアリサ。ヴェロニカ。マリ。フィンフィン。サナエ。
そこにアルベルトも一緒に組んでいたらしい。
「へぇ。そのリーダーと付き合ってるのがばれて追放されたとか?」
「いや、その五股がばれてパーティーから追い出された。他の女性にも声をかけたんだけど、その【紅の白狼】の手前うんとは言ってくれず」
「…………へぇ」
思わず呆れた声が出る。
それは【紅の白狼】ではなくてアルベルト自身に問題があるのでは?
アルベルトはさらに話し出す。
「関係は良好だったんだ! ただ暫く顔を見たくない。と全員から言われて……」
そりゃそうだろうに。
「それでも! 僕がB級になったら変わると思うんだ!」
「あっそう……」
「だから、パーティーを組んでくれ。なに危険な事は一切無い!」
いや、アルベルト本人が危険なんじゃ? 主に女性に。
「掛かった費用を請求するわけじゃないけど、僕が今日払った額は金貨一四九枚」
「あん? 奢らせてくれって言ったのに金額言う? 普通!」
「ひっ、ちが、そういうつもりで言ったわけじゃなくて……」
どういうつもりも無いでしょうに。
金額を伝えれば気の弱い女性はかたむくかもしれないけど、こっちも散々誘われての奴なのに。
「その、あの三人分も僕が奢っているんだし……」
「…………」
う。今度は泣き落とし、そりゃまぁ…………あの三人のも結局奢ったみたいだし。つれて来たのは私達だし、うーん……。




