32 マルファベラスフォンフラムハルトコンシュールサーディス
一四層も過ぎていよいよ一五層へと入る事になった。
ミッケルの言葉が本当ならドラゴン。
小型のドラゴンを飼育し制空団を持つ国もある。と勉強したことがある。
でも今回は中型。って五十人も乗れて中型ってどんだけよ。
階段を下りると湖のほとりに出た。
木造の山小屋があり、煙突からは煙がぽこぽこと出ている。
あまりに長閑な風景で私は言葉を失う。
空……といっても天井をみると高さがわからないぐらいに高い。
ただ当然の事ながら太陽の光もないし、だからといって月の光も無い。
でも、昼間のように天井から光がさしている。
「いきますよ」
「あっまってよ」
二人は当然のように小屋にいくと、小屋をノックする。
「は~い」
女性の声が聞こえると扉が開いてムチムチおねーさんが出てきた。
長い黒髪で紫の瞳。
大きな胸を強調したドレスで上の部分と谷間が丸見え、腰からしたはスリットの入った服を着ている。
そのスリットの隙間から白く長い足がちらちらと見えた。
「すごいわね……」
「あら、新顔さんね。マルファベラスフォンフラムハルトコンシュールサーディスですわ。よろしくお願いしますね」
「…………もう一度おねがい」
「は~い。マルファベラスフォンフラムハルトコンシュールサーディスですわ」
「ええっと、マルファ…………サーディスさん」
「およよよ、名前覚えてくれないんですね。この女性さんは……」
覚えきれるかー! 貴族でもここまで長い人は居ないわよ!
「まぁまぁまぁ、サーディス様お戯れを」
「およよよ、ミッケルちゃんがそういうのなら我慢しましょう。
で、どうしました? ラ――」
「まぁまぁまぁまぁ!」
ミッケルがおよよんな女性を押し倒すように小屋に入る。
直ぐに、女性のえーーーーーーー。かわいいーーーーー! やっだーーーー! という言葉が聞こえて静かになった。
「何?」
ジョンに顔を向けると、ジョンはため息をつく。
「また言いそびれたな……」
「何が?」
「……気にするな。名前なんて個人を特定するだけにすぎん」
「意味わからない事言い出して熱でもある?」
扉がもう一度開くと、およよんな女性が私を上から下まで舐めるように見てきた。
「何?」
「なんでもないですよ~、あっ名前はそうですねぇ。長いようでしたらサーディスと読んでもらっていいですよ~、クリスさん」
「む、自己紹介してないんですけど」
「ミッケルさんに教えてもらいましたの~、ジョンさんもそれでいいわよね~」
「…………好きに呼べ」
狭いですけど、どうぞ~。と、言われて部屋に入る。
どこぞのギルドマスターのエルフと違って部屋は綺麗で壁には本棚や食器棚。
二部屋あるらしく、奥には寝室も少し見える。
「直ぐにお茶を用意しますわね~」
サーディスさんは棚から筒を取り出すと手早くお茶を入れてくれた。
テーブルに四つカップが並べられて、見た事もない食べ物も一緒にだされる。
「お煎餅っていうのよ。クッキーと違いしょっぱいお菓子。米粉を練って特製の蜜を塗って焼くの。このお茶も紅茶と違い苦い薬湯に近いんだけど、とてもよく合うわ~」
「はぁ……」
どうぞ食べてと言われたので、一口かじる。
しょっぱっ!
苦いと言われた薬湯を飲む、言われたとおり苦いけど口の中のお煎餅が柔らかくなって美味しい。
一枚目が無くなった。
チラッチラと見ているとサーディスさんが、お煎餅の入った入れ物を私の前にそっとずらしてくれる。
「いいの?」
「どうぞどうぞ~」
「では、遠慮なく」
バリバリバリボリボリ。
私が三枚目を食べ終わった所で、たずねてみる。
「所でドラゴンってどこ?」
「まぁ私です~。二人とも説明してないの~?」
「いやまぁ、驚かせようと思って」
「…………特に説明は要らない」
ほわ?
「どういう事?」
「ですから、私が~ドラゴンさんなのです~たべちゃうぞー」
おっぱいをぷるんぷるんさせながら強調する。
頭に手を当てて考える。うん、酒場ならモテモテだろう。
知ってるわよ、男性ってこういう女性が好きなんでしょ、ちらっとみるとミッケルはサーディスさんのおっぱいに目線が行ってるし、ジョンだって…………あれ行ってない静かに薬茶を飲んでいる。
「…………本題だ。クロリスの石が盗まれたのはいつだ。約束を守るといっただろ」
ジョンが静かに言うと、サーディスさんも眉を潜めた。
「どういう意味かしら~」
「…………言葉通りだ、絶対安心だからと言っていただろ」
「まぁまぁまぁまぁ、サーディス様もお気を静めて。ジョ、ジョンもうっかりとですね」
小屋の中の空気が一瞬で殺気に変わった。
私はとっさに椅子から離れる、横に居たジョンも同じ体制だ。
「人間風情が私を嘘つき呼ばわりかしら~?」
サーディスさんの影がゆらゆらと動くと、ベシン! と鈍い音が聞こえた。
ハ虫類特有の尻尾がサーディスさんのスリット部分から現れ家具を壊してく。
「えっ?」
「クリスさん、外に逃げますよっ!」
「いや、あれ、でもっ」
「サーディス様は本当のドラゴンです、長い年月で人の姿になる力がっ」
「…………これだから年増は嫌なんだ」
「「あっ」」
私とミッケルの言葉がかぶった。
ちょっと、その言葉は……女性に言っちゃダメでしょうに。
ドラゴンらしいサーディスさんを見ると、さっきより周りのオーラらしきのが大きくなっている。
「ふっふっふっふっふ…………遊んであげる~。私を嘘つき呼ばわりした人間には罰を与えないとね~」




