31 クリスと説明おじさんとダンジョンと
「おいっ」
「はっ! 起きておりますっ!」
反射的に応えた私は近くにあるジョンの顔を見た。
気持ちよくて寝ていたらしい。
「…………起きたか」
「強行の旅でしたからね、クリスさんもお疲れだったんでしょう」
ミッケルを見ると、なぜかニヤニヤしている。
とりあえず、殴りたい。
「ごめんなさい。寝てたかも」
「…………ついたぞ」
私は馬から先に下りた。
ジョンの制服によだれの染みが付いたけど黙っていよう。
どうせ洗濯するわよね、してもらわないと恥ずかしいんだけど……。
「さて、地面を見てくださいクリスさん」
ミッケルの言葉に従って私は地面を見る。
地面に亀裂が入っており、その手前で柵とロープが張られている場所へとついた。
ジョンとミッケルも馬を下りると、ミッケルが近くの柵に馬を繋げて戻ってくる。
立て札があり、この先渓谷のため危険と書かれいるのを確認。
「渓谷の警告…………」
「クリスさん?」「…………フッ」
「ち、ちがうから。別にギャグを言いたいわけじゃなくてね。ジョンも笑わないでよっ!
恥ずかしいじゃない」
「まぁ……行きましょうか。他の隊員達は後で来るように伝えてあります。崖になっていますが、こちらから降りれますので」
先にジョンが進んで、次にミッケルが進みだす。
最後に私がその後を付いていく感じだ。
隠すような道でよく見ないと気づかない。
下まで降りた所でさらに亀裂があり洞窟があり闇しか見ない穴があった。
灯りもなしに二人は入るので私も入る。
薄い膜を破くような感触が私の体を包む。
明かりもないのに明るい洞窟。
「さすがダンジョン……」
「常識が通用しない。と、行った所でしょうか。クリスさん」
「答えを先に言わないで欲しいわね」
「先に行くぞ」
ジョンは私達二人を置いてどんどん先に進む。
出てくる敵はスライムに吸血ウサギや吸血こうもり、冒険者に満たない五才の子でも倒せるレベルだ。
本当に五才で挑んだら死ぬけど。
階段を下りて地下二層へと行く。
モンスターが変わりゴブリンが増え始める。宝箱がちらほらみえているけど、一個も空けないでさらに進む。
地下三層へ行く、相変わらずスライムとゴブリンで、二層と何が違うかといえば数がちょっと多くなっただけ。
地下四層にいく。
特に何も無い。
「子供だましみたいなダンジョンね。前のダンジョン? あそこではサイクロプスが数体出てきて、まだ楽しかったわよ。その封印するほどのダンジョンなわけ?」
襲ってきたゴブリンの首をはねたジョンは私を見て黙り込む。
「また無言?」
「…………いや、どういえばいいか考えていただけだ」
「え。説明してくれるの?」
私がしましょう。とミッケルが口を開く。
「でたわね、説明おじさん」
「はっはっは、まだお兄さんの年齢ですけど。
このダンジョンは確認されているだけで地下三七層。十四層までは御覧の通り雑魚ばかりですね、その下は未知数です」
「十五層から?」
「はい。ドラゴンが出ます」
思わず無言になる。
ミッケルが嬉しそうに喋り、ジョンもそうだ。と、頷いた。
「いやいやおかしくない? こうスライム。ゴブリンときたら普通はトカゲ系とか強くてスケルトン?」
「ダンジョンですので。ドラゴンの大きさは中級タイプ、そうですね、背中に五十人は乗れる大きさです。魔石の魔力抜きの場所は同じく十五層。
その下からはまた暫くスライム続きですね」
説明を受けながら七層についた。
人が着ていた衣服だけが残されているのがみえる。
「おや……」
私達は立ち止まり、衣服を調べた。
「村の司祭でしょうね。司祭だけが持てる教会のカードがあります。
ゴブリン程度にやられるような人じゃなかったんですけど……」
「自殺か?」
ジョンは小さい小瓶を何個か見つけた。
その一つを取ると無造作にミッケルに投げる。
「はいはい、中身確認しますよ」
ミッケルはふたをあけて匂いをかぐ。
次に床にたらすと、床の一部が解けてなくなった。
「謎過ぎますけど、自殺とみてほぼ間違いないでしょうね。三本ほど開いたビンがありますし、数ヶ月もすればおそらくは消えるでしょう。彼の魂が天国にいけますように」
ミッケルは手で十字を切ると軽く祈った。
「へぇミッケルって司祭なの?」
「違いますよ。見よう見まねです」
ジョンが行くぞ! というので先に進む事になった。
九層目が終わり十層目に入った。
また何かの薄い膜を破るような感覚が体を包む。
「うわ…………」
思わず言葉を失う。
地下だったはずなのに、大きな森林の中にでたからだ。
背後を見ると今降りてきた階段だけが異質な感じで置かれている。
「驚きましたか? 地上に近いほうはまだしも、地下にいくほど別世界ですらかねぇ」
「別世界……本当にそうなの?」
「断言はしませんが、そういう話もありますので。幸い階段が消えるって事はないらしく、二つ以上の階層を越えて魔物があふれた。という話も聞きませんので」
「…………過去に魔物の暴走が起こったという話もあるが?」
「ああ、確かに古い書物には記録にありますね。数百年は無いです」
「ふーん……」
私が森の中で目を凝らすと、出てくる敵はやっぱりスライムだった。
敵と階層のつくりが合ってないわよね。
こういう所は普通木に化けた魔物が定番なのに。
ものすごい広いフロアなのに、案内人がいるからサクサクと進む。
階段を下りると、またも森が続いている。
さらに木々のすきまから大きな滝も見えてきた。
「天井? の高さも無茶苦茶ね」
降りてきた階段と天井の高さがデタラメだ。
「今何層目?」
「十一層目ですね」
「ここもスライムとかゴブリン?」
「驚いてください! ここはなんと!」
「なんとっ!」
私はワクワクしながらミッケルの答えを待つ。
「魔物は何もでません」
私は転びそうになってよろける。
「先に行くぞ」
「あっちょっとまちなさいよ!」
背後からミッケルのヤレヤレって声が聞こえた気がした。




