29 曇りのち雨模様
カッポカッポと馬車は進む。
既にフウオジサンと別れて既に私達は馬車で移動中である。
別れる際にミッケルがフウオジサンに何か手紙と、金品と食料を手渡していた。
このまま一緒に行くのかな? とも思ったけど、お互いに一緒に行く理由がない。
「クリスさん先ほどの話ですが、どう思います?」
「思います? って聞かれてもねぇ」
同じ馬車に乗っているミッケルに問いかけられも、良くわからない。
「聖女様の話でしょ二重人格、もしくはボ……言い過ぎね。それも違ったら…………なんだろう?」
「フウさんのお話では、他の人も極刑を言い渡されているとか、そして何らかの罰で怪我を負った物にはこっそりと回復魔法をかけ、これまたコッソリと逃がしているみたいだ。と、言ってましたね」
貴族の中には、奴隷をいたぶり、回復させ忠誠を誓わせる。って事をするのもいる。と聞いたことあるけど…………手元から逃がしてるからなぁ。
私はお手上げのポーズを取る。
「ストレスでおかしくなったってあるんじゃない? 王女って大変らしいし」
「なるほど、だそうですジョン。帝国の皇子もストレスでおかしくなるんでしょうかね?」
「知るか」
ジョンはミッケルの言葉を切り捨てる。
ジョンは先ほどから話の輪に入らなく一人横になっている所だ。遅い思春期って奴?
ミッケルは私と同じくお手上げのポーズをとって私達に見せてきた。
「ともあれ、クリスさんには悪いですけど一応この話は上に伝えますので、ご了承ください」
「え? 別に私の許可は要らないわよ。まぁただ…………戦う事は好きだけど変な理由での戦いだけは嫌よね」
「ええ、そうですね」
何となく馬車の中の空気が重くなった。
「べ、べつに王国と戦争になるわけじゃないしっ!」
「そ、そうですよね」
「…………なったら斬るまでだ」
「あんたねぇ」
横になっているジョンが適当な事をいいながら体を起こす。
私と自然に目が合った。
「お前も、襲ってきた敵は斬るだろ?」
「…………まぁたしかに、斬ったほうが楽よね」
「はいはいはい、そこの二人。変に同調しないでください、そうならないために奮闘するのは副官の務めですので」
「クリスお嬢様は強くて素晴らしいですけど、自分から危険な場所に行かなくても……」
ミッケルの言葉に、アンナの心配な声が同時に聞こえた。
いやだって、難しい事は上に任せておけばいいのよ。
敵は斬る。
そりゃ事情はあるかもしれないけどさー…………私が過去に相手した賊だって何十人も一斉に襲ってきた。
そんな中一人ひとりの事情を聞いている間に私殺されちゃうし。
話合いは大事よ。
特に見知った相手なら言葉も通じる可能性もある、でもねぇ……うーん。
「クリスお嬢様が、やさぐれてます! その姿も綺麗です」
「別にやさぐれて無いわよっ!」
「では、気分転換にカードゲームでもしましょうか」
「断る」「やだ」「やりましょう!」
賛成二人に、反対二人だ。
私はもちろん反対票である。
「しかし、暇じゃなありません? 空模様も曇ってきましたし雨が降りそうですよ」
「ふと思ったけど、ミッケルとジョンって普段馬車でどう過ごしてるのよ」
「男二人、狭い馬車の中で何も起こらない訳が無く……はっ昨夜も小さいテントでっ! ゴクリ」
アンナの唾を飲む音だけが響く。
「……まて! そこのメイド女っ。変な事を言うなっ!」
「最近はお尻が辛く」
「まさかの受けっ!」
「ミッケル、斬るぞ」
馬車の中でわんやわんやしていると、馬車を動かしている隊員から、雨ふってきたやしたぜ! と声が掛かった。
◇◇◇
夜も遅くなり雨音も酷くなる。
そうなると野外で食事の用意も出来なく馬車の中で簡単に済ます事になった。
馬車を動かしていた隊員は、ウマを雨にあたらない場所へと移動してきます。と帰っていった。
昼間の話題を思い出す、聖女……聖女ねぇ。
私が見た聖女は、子リスのようなイメージでお人形のようだった。
あと、胸が大きかったわね。
とても悪役姫様になるような顔じゃなかったんだけどなぁ。ちょっと言葉にイラっとしたけど。
もぞもぞと、ミッケルが動き出す。
手には簡易式のテントを持っており馬車から出ようとしていた。
「え、もしかして外で寝るの?」
「ええまぁ……」
外は土砂降りである、にもかかわらずジョンも起き上がり馬車から出て行こうとした。
おもわずその服をひっぱっ……。
ジョンが狭い馬車の中でふっとび、出て行こうとする反対側から外に飛んでいった。
「「「………………」」」
飛んでいった反対側のホロが開かれると泥だらけのジョンが顔をだす。
「お前は……俺に恨みでもあるのかっ?」
「ごめんってば、いや。二人ともこんな雨の中外のテントで寝るっていうからさ。
雨でびしょぬれになるなら中で寝たら。と、言おうとね……で、出て行こうとするから引っ張っただけなんだけど……」
「……俺はすでにこの有様だけどなっ」
「よっ水も滴るいい男っ!」
私の冗談に、がっくりと肩を落としはじめた。褒めたのに……。
背後でアンナの笑いを堪えた声だけが聞こえてきた。
ミッケルのクリスさんがいれば大丈夫でしょう。と謎の言葉と共に雑魚寝になった。




